藤井秀悟 | ほぼ日刊ベースボール

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野球選手の熱い過去や意外な背景を主な切り口に、野球への熱い想いを綴ります。

藤井秀悟
 



各地区秋季大会も終わって、いよいよ来年のセンバツが楽しみになってきた。

春は投手力とはよく言ったもので、好投手の活躍が例年目に付く。そんな中、筆者にとって忘れられない選手がいる。




それはヤクルト・藤井秀悟。今でこそ球のキレで勝負するタイプの投手だが、当時は「伊予の怪腕」と呼ばれ、MAX144kmのストレートが武器の豪腕投手だった。震災後の95年春の甲子園、大会前から大会ナンバー1投手と騒がれたまだ見ぬ好投手に胸が躍った覚えがある。


大会が始まり、今治西の初戦は富山商。そこに現れた藤井には心底驚いた。投手体型とは程遠い、ずんぐりした体型、ローカットのストッキングゆえにさらに強調される太すぎるふくらはぎ、力感はあるが、想像とは違う姿に驚いた。




そしてプレイボール。全身をフルに使って投げる力投型のフォームから繰り出されるストレートは、球速はそれほどでもない印象で、ちょっと拍子抜けした。それでも完封勝利、2回戦も4-2で広島工を破り、続く神港学園戦、確か8回まで抑え勝利目前のところで藤井の左腕に異変が起こった。ブチッという音とともに筋断裂を起こしたのである。投げることがままならなくなった藤井はそのまま降板、この怪我が元で藤井の高校野球は幕を閉じた。




しかし本調子から遠いながらも3試合連続で二桁奪三振、強気に攻めるその姿勢は投手として非常に魅力的な選手だった。その身体から大学までの選手かと思ったが、怪我も克服し、キレで勝負する投手としてプロの世界で活躍していることはうれしい限りである。