ISS(International Space Station)のミッション開始から完成(フェーズ2011)までを1/450パズルで再現
今年(2021年)1月に入手したISSの60ピースパズル。
使用パズル
青島文化教材社「4Dパズル 国際宇宙ステーション&スペースシャトル」1/450
http://www.aoshima-bk.co.jp/product/4905083104682/
製造:中国 4DMaster社
https://4dmaster.com/product_detail-pid-42-id-105
1998年時の計画完了形態(想定)をモデル化
(計画が変更されたのちに完成した2011年形態とは一部異なります)
さっそく開封。
左上:スタンドとシャトル、右:太陽電池パドルとラジエータ類、左下:ISSのモジュール類。
ISS(アイエスエス)の成り立ちを知ると共に、このパズルキットのクオリティを紹介しようと言う試みです。
計画完了までを一気にご覧いただけるように、今後の撮影分は、この記事の下に書き足して行こうと思います。
では、まずISS軌道上の建造開始から完成までを追います。
参考サイト
ISS関連フライトの全履歴
https://iss.jaxa.jp/iss/flight/
ISS Assembly(動画)
https://www.youtube.com/watch?v=yRqUPjl3tTQ
●ISSの組立ミッション(抜粋)
動画を見ながらお読みいただくと、よりわかりやすいと思います。
1982年計画発足
1998年11月20日 アメリカ/ロシア:ザーリャ(日の出)を軌道に投入(1A/R)
1998年12月04日 アメリカ:ユニティ(統一)がザーリャ前方に結合(2A)
2000年07月12日 ロシア:ズヴェズダ(星)がザーリャ後方に結合(1R)
2000年10月11日 アメリカ:PMA-3・Z1トラスをユニティに結合(3A)
2000年11月30日 アメリカ:P6トラスをZ1トラスに仮設結合(4A)太陽電池パドル展開(PHASE:2000 夜のグライダー)
2001年02月07日 アメリカ:デスティニー(運命)をユニティに結合(5A)
2001年04月19日 アメリカ:カナダアーム2をデスティニーに仮設結合(6A)
2001年07月12日 アメリカ:クエスト(エアロック)をユニティに結合(7A)
2001年09月14日 ロシア:ピアース(ドッキングコンパートメント)をズヴェズダに結合(4R)
2002年04月08日 アメリカ:S0トラスをデスティニーに結合(8A)
2002年06月05日 アメリカ:シャトルにてS0トラスにMBSを結合(UF-2)カナダアーム2をS0に移設
2002年10月07日 アメリカ:S1トラスをS0に結合(9A)S1のSは右舷(Starboard)
2002年11月23日 アメリカ:P1トラスをS0に結合(11A)P1のPは左舷(Port)
2003年02月01日 アメリカ:シャトル事故により計画の見直し
2005年07月26日 アメリカ:船外保管プラットフォーム(ESP-3)をクエストに結合(LF-1)
2006年09月09日 アメリカ:P3/P4トラスP5トラスをP1に結合(12A)太陽電池パドル展開
2007年06月08日 アメリカ:S3/S4トラスS5トラスをS1に結合(13A)パドル展開後、P6トラスの太陽電池パドル収縮
※4枚のパドルが展開したこの時点の形状を、ドラゴンが1/400プラモデルで再現(PHASE:2007)
2007年10月23日 アメリカ:ハーモニー(調和)をデスティニーに結合(10A)P5トラスにP6トラス移設後パドル展開
2008年02月07日 欧州:コロンバス(欧州実験棟)をハーモニーに結合(1E)
2008年03月11日 日/米:きぼう(日本実験棟)をハーモニーに結合(1J/A)
2009年03月15日 アメリカ:S5トラスにS6トラス結合(15A)太陽電池パドルを展開
※予定した8枚のパドルが全て展開(PHASE:2009)
2009年07月15日 日/米:きぼう船外実験プラットフォームをきぼうに結合(2J/A)
2009年11月10日 ロシア:ポイスク(探索の意)をズヴェスダに結合(5R)
2010年02月08日 アメリカ:トランクウィリティー(静寂)をユニティに結合(20A)
2010年05月14日 アメリカ:ラスヴェット(夜明け・ロシア語ではラスヴェート)をザーリャに結合(ULF4)
2011年02月24日 アメリカ:倉庫スペース(PMM)をユニティに結合(ULF5)
2011年05月24日 アメリカ:アルファ磁気スペクトロメータ(AMS-02)をS3トラスに結合(ULF6)
2011年07月11日 アメリカ:ラファエロ(MPLM)をハーモニーに結合(ULF7)シャトル退役(PHASE:2011)
2011年7月21日午後6時57分 スペースシャトル・アトランティス号の着陸をもって計画は完了と発表。
※物資補給フライト、細かいミッションは割愛
熟知されている方には、端折った説明をお詫びします。
これを読んで興味を持たれた方は、ネットや書籍などで、より見識を深めていただければと思います。
この順に従って、パズルで描ける可能な限りの形状変化を再現して行きます。
●知っておきたいISS用語
・SAW(Solar Array Wing):太陽電池パドル
・ラジエータ(Radiator):宇宙での温度差や、内部の温度上昇を抑える目的で、冷媒(液体アンモニア)を循環させ、熱放射により宇宙空間へ排熱するための放熱板
・ノード(Node):結び目・結合モジュールの別称(基本機能モジュールと実験モジュールなどをつなぐmodule<交換可能な構成要素>で、倉庫や個室<寝室>を設置)
ノード1:ユニティ ノード2:ハーモニー ノード3:トランクウィリティー
・ペイロード(Payload):積荷全般(主にオービターのペイロードベイ<貨物室>の積載物)
・オービター(Orbiter):探査機の総称(スペースシャトルの場合、地球と宇宙空間をを往還する宇宙船本体部分を言う)
実稼働したスペースシャトル・オービター:エンタープライズ(大気圏内試験のみ)、コロンビア、チャレンジャー、ディスカバリー、アトランティス、エンデバー(運用開始順)
割と多用されるワードなので、ここでも使用する可能性があります。
●2021年4月12日 再現開始
1998年11月20日 アメリカ/ロシア:ザーリャ(日の出)を軌道に投入(1A/R)
カメラはiPhone12を使用
このクオリティなので、短期集中で完成させようと思います。
このパズル、ちょっとしたトラップがあります。
それは、すでに組まれているパーツを一度分解して、別のパーツを挟むと言う箇所がいくつかある点です。
無理に組み付けようとするとパーツを破損させてしまうので、パーツをよく見て、パズルを解く必要があります。
●2021年4月14日 再現2日目
1998年12月04日 アメリカ:ユニティ(統一)がザーリャ前方に結合(2A)
残念なことに、ユニティ・デスティニー・ハーモニー・コロンバス・きぼう+船外パレットまでが一体成型されているので、フレーム切りで描くしかありません。
2000年07月12日 ロシア:ズヴェズダ(星)がザーリャ後方に結合(1R)
ズヴェズダのソーラーパネルは回転させることができます。
1998年時の計画案を再現しているため、オービター(スペースシャトルの軌道船部分)1機(Enterprise)と、ソユーズ2機(内1機はMRMと一体)は付属しますが、プログレス、ATV、HTV等は付属しません。
ISSの構成が主体なので、接続する船は描かないでおきます。
また、パーツを切るなどのキット本来の形状と異なる改造は行わないものとします。
2000年10月11日 アメリカ:PMA3・Z1トラスをユニティに結合(3A)パーツなし
2000年11月30日 アメリカ:P6トラスをZ1トラスに仮設結合(4A)太陽電池パドル展開(PHASE:2000 夜のグライダー)
2001年02月07日 アメリカ:デスティニー(運命)をユニティに結合(5A)
立体パズルと言っても、組み換えができるわけではなく、一つの完成形を目指すパズルなので、途中経過を描くのは難しいです。
デスティニーにESPが一体成型されていますが、実際の結合は2005年07月26日(LF-1)で、場所はデスティニーではなく、今後取り付けるクエスト(エアロック)の前方です。
不正確な形状ですが、ほぼ2000年のP6パドル展開と、2001年のデスティニー結合まで。
モジュールが連結されて行く以外の見どころとしては、SAW(パドル)の展開があると思いますので、印象的なパドル形状が完成した段階をひと区切りとします。
次回:PHASE:2007のバドル4枚の展開まで。
最終回:PHASE:2009のパドル8枚が展開して完成する(PHASE:2011)まで。
●2021年4月18日 再現3日目
2001年04月19日 アメリカ:カナダアーム2をデスティニーに仮設結合(6A)
このカナダアーム2はこれまでにないユニークな機構を持っています。
https://iss.jaxa.jp/glossary/jp/ko/ssrms.html
等間隔に配置されたGrappleを掴んで、ISSの外装をシャクトリムシのように移動し、必要な場所で作業できるんですね。
2001年07月12日 アメリカ:クエスト(エアロック)をユニティに結合(7A)
2005年07月26日 アメリカ:船外保管プラットフォーム(ESP-3)をクエストに結合(LF-1)
時系列は前後しますが、デスティニーの横に伸びたパレット、実際には左の丸いクエストに接続されます。
デスティニーに一体成型されているのと、次に接続するトラスで見えなくなるため、前倒ししました。
2001年09月14日 ロシア:ピアース(ドッキングコンパートメント)をズヴェズダに結合(4R)パーツなし
2002年04月08日 アメリカ:S0トラスをデスティニーに結合(8A)
2002年06月05日 アメリカ:シャトルにてS0トラスにMBSを結合(UF-2)カナダアーム2をS0に移設
2002年10月07日 アメリカ:S1トラスをS0に結合(9A)S1のSは右舷(Starboard)
2002年11月23日 アメリカ:P1トラスをS0に結合(11A)P1のPは左舷(Port)
トラスが左右に伸びて行きます。
S2・P2トラスは、ラジエータとパドルの間に入る推進機能を持ったトラスの予定でしたが、ロシアのモジュールに推進能力があるためキャンセルされ、実装されていません。
2006年09月09日 アメリカ:P3/P4トラスP5トラスをP1に結合(12A)太陽電池パドル展開
2007年06月08日 アメリカ:S3/S4トラスS5トラスをS1に結合(13A)パドル展開後、P6トラスの太陽電池パドル収縮
※この時点の形状をドラゴンが1/400プラモデルで再現(PHASE:2007)
後方から撮影しているのは、まだないはずのコロンバスやきぼうが一体成型されていて見えてしまうからです。
実際のPHASE:2007と比較すると、
1、ユニティ上にP6トラスがない(トラスが非分割のためパドル側に使用)
2、3連ラジエータが展開している(この時点では真ん中一つの展開ですが、一体成型のため)
ちなみに、ラジエータはみぎ舷がすくう角度、ひだり舷が舐める角度で展開します。
3、公開されている2007年時のパドルは垂直向き。(トラスが回転するので描写に不自然はないのですが、トラス軸が6角接続で、60°ずつしか回せず、垂直を向かないので水平で描写)
などの差異があります。
あと、このキットには、致命的な誤造形がありました。
1998年時点での完成予想図も実際のISSも、ひだり舷のパドルは、前方が下、後方が上になっていて、左右線対称ではなく、点対称に作られています。
要するに、左右のパドル取付部のトラスは、並べた時に同じ形状になるのが正しいのです。
このキットのひだり舷パドルは、前方が上、後方が下になっています。
パズルなので、敢えてパーツを変えて左右を線対称にしたのかも知れませんが、これは誤りです。
もし正すのであれば、キットをもう一つ買って、みぎ舷のパーツをひだり舷にも使うことで、一応問題はクリアできます。(そこまで費用をかける話でもないので直しません)
今後、修正版が作られることを祈ります。
残念なキットではありますが、パドルが4枚展開するとスケール感は出て来ますね。
次回はいよいよ、パドルが8枚展開する最終回です。
●2021年4月21日 再現最終日
2007年10月23日 アメリカ:ハーモニー(調和)をデスティニーに結合(10A)P5トラスにP6トラス移設後パドル展開
この時点でハーモニーは、ユニティのひだり舷に仮設結合ですが、一体成型で動かせないため、4枚のパドル展開のみとしました。
前述の通り、ひだり舷はそのままだと誤りなので、この画像だけは、みぎ舷のパーツに付け替えて正しい形状を再現してあります。
2008年02月07日 欧州:コロンバス(欧州実験棟)をハーモニーに結合(1E)
2008年03月11日 日/米:きぼう(日本実験棟)をハーモニーに結合(1J/A)
ようやく前面が描けました。
左からきぼう、ハーモニー、コロンバスです。
2009年03月15日 アメリカ:S5トラスにS6トラス結合(15A)太陽電池パドルを展開
※予定した8枚のパドルが全て展開(PHASE:2009)
組立フライトもここからは仕上げです。
2009年07月15日 日/米:きぼう船外実験プラットフォームをきぼうに結合(2J/A)
これで前面部分が完成。
2009年11月10日 ロシア:ポイスク(探索の意)をズヴェスダに結合(5R)パーツなし
2010年02月08日 アメリカ:トランクウィリティー(静寂)をユニティに結合(20A)パーツなし
2010年05月14日 アメリカ:ラスヴェット(夜明け・ロシア語ではラスヴェート)をザーリャに結合(ULF4)
唯一パーツのあるラスヴェット(MRM)
ソユーズと一体成型なので、遮光で見えにくくしてあります。
なぜソユーズが一体になっているのか調べたら、ISSは緊急脱出用にソユーズが1機、常にドッキングされた状態になっているんですね。
そうは言っても、ソユーズはソユーズ。ISSの構造物ではありません。
以下パーツなし
2011年02月24日 アメリカ:倉庫スペース(PMM)をユニティに結合(ULF5)
2011年05月24日 アメリカ:アルファ磁気スペクトロメータ(AMS-02)をS3トラスに結合(ULF6)
2011年07月11日 アメリカ:ラファエロ(MPLM)をハーモニーに結合(ULF7)シャトル退役(PHASE:2011)
2011年7月21日午後6時57分 スペースシャトル・アトランティス号の着陸をもって計画は完了と発表。
このキットで、可能な限り近付けた実際の完成形状です。
2015年12月22日 2016年にて運用終了予定を、2024年までの運用延長と発表。
ここから追記
2021年7月29日 ロシア:実験モジュール ナウカ(科学)をズヴェズダに結合(3R)
2022年2月4日 NASA:2030年までISSに運用を延長し、2031年に軌道を離脱させ、太平洋上に落下させると発表。
2022年7月26日 ロスコスモス:ロシアが2024年以降(日程未定)ISSから撤退すると表明。
2023年3月9日 NASA:現在ロシアが受け持つISSの軌道制御をアメリカで担うべく、スペースタグ(離脱機)の開発を表明。これにより、2031年にISSを太平洋に落とすための軌道離脱まで、ロシア離脱後はアメリカがISSの軌道を制御する。
追記ここまで
総評:パドルの一件はかなり減点ですね。
それと、改造ベースで考えるには、樹脂が柔らかすぎて、セメントや塗料で溶けてしまう可能性が大きいです。
一見精巧に造形してありますが、パドルが反っていたり、取付穴が垂直でなかったりと、かっちり作るにはかなり甘いキットと言えそうです。
スタンドはシンプルで、前後を差し替えて二通りディスプレーできる点がいいですね。
多少は好みの形状に寄せてパドルやラジエータの回転ができることと、船のドッキング形状をディスプレーできる点は、このキットのメリットだと思います。
●ISSの周回姿勢
現在のISS(12A以降)は、LVLH(Local Vertical/Local Horizontal)姿勢で周回しています。
これは地球指向姿勢と言って、地球を回る時、糸を付けて物を回すのと同じように、常に地球側におなかを見せる姿勢です。
進行方向に対しては、常にハーモニー側が前になるよう制御されます。
姿勢制御は、主にZ1トラス内のCMG(Control Moment Gyro)4機で行い、必要に応じでスラスター(ブースター)を併用します。
●ISSの正確なサイズ(ISSはヤード・ポンド法で設計)
全幅:355ft8in(108.4072m)
トラス長91m 接手軸まで2.9m×2 パドル幅11.6m(左右半分ずつ張り出すので1ユニット分)
全長:243ft(74.0664m)
トラス幅3m(6角部分は対面幅3.5m) パドル長35.5m×2)
全高:66ft(20.1168m)
トラス幅+下に伸びるラジエータ+3連ラジエータの上に張り出す分の合計
打ち上げ総重量:930,000lb[ポンド] 421,840.9041kg(2020年現在)
回収、交換分もあるため、実際のISS構造物はもう少し軽くなります。
ざっくり言えば、ISSのパドルで描かれた長方形の大きさは、108m×74mで、ラジエータが縦に展開した高さの合計は20mとなり、構造物総重量はおよそ420tです。
一般に言われている、ISSの完成全長73mあるいは72.8mが「PMA-2からZvezdaまで」と言うのは誤りで、ISSの全長は、パドルを広げた長さである74mが、妥当な近似値と思われます。
ISSの中央部、縦に並んだ与圧モジュールの各全長を足してみます。
IDA-2 1.1m PMA-2 2.6m ハーモニー6.1m デスティニー8.5m ユニティ5.5m PMA-1 2.6m ザーリャ12.5m ズヴェズダ13.1m
メートル換算時の誤差があるので概ねですが、合計は52.0mです。
4DMaster(販売:青島文化教材社) 1/450パズル ISS
全幅265mm 全長185mm この形状での全高50mm(スタンド含まず)
1/450と謳っていますが、実測値から換算するに1/400スケールと思われます。
全幅265mm×400=106m 全長185mm×400=74m 全高 50mm×400=20m
なお、実装されなかったサイエンスパワープラットフォームを加えたキットの高さは95mmです。
※付属する船はサイズに含んでいません。
参考になれば幸いです。
4Dパズル 1/450 ISSを使った再現
背景はフリー画像をモニターに映し、キットはテグス(3号)で吊って、編集で消してあります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
以上で、ISS 1/450パズルでの再現を終わります。
今年(2021年)1月に入手したISSの60ピースパズル。
使用パズル
青島文化教材社「4Dパズル 国際宇宙ステーション&スペースシャトル」1/450
http://www.aoshima-bk.co.jp/product/4905083104682/
製造:中国 4DMaster社
https://4dmaster.com/product_detail-pid-42-id-105
1998年時の計画完了形態(想定)をモデル化
(計画が変更されたのちに完成した2011年形態とは一部異なります)
さっそく開封。
左上:スタンドとシャトル、右:太陽電池パドルとラジエータ類、左下:ISSのモジュール類。
ISS(アイエスエス)の成り立ちを知ると共に、このパズルキットのクオリティを紹介しようと言う試みです。
計画完了までを一気にご覧いただけるように、今後の撮影分は、この記事の下に書き足して行こうと思います。
では、まずISS軌道上の建造開始から完成までを追います。
参考サイト
ISS関連フライトの全履歴
https://iss.jaxa.jp/iss/flight/
ISS Assembly(動画)
https://www.youtube.com/watch?v=yRqUPjl3tTQ
●ISSの組立ミッション(抜粋)
動画を見ながらお読みいただくと、よりわかりやすいと思います。
1982年計画発足
1998年11月20日 アメリカ/ロシア:ザーリャ(日の出)を軌道に投入(1A/R)
1998年12月04日 アメリカ:ユニティ(統一)がザーリャ前方に結合(2A)
2000年07月12日 ロシア:ズヴェズダ(星)がザーリャ後方に結合(1R)
2000年10月11日 アメリカ:PMA-3・Z1トラスをユニティに結合(3A)
2000年11月30日 アメリカ:P6トラスをZ1トラスに仮設結合(4A)太陽電池パドル展開(PHASE:2000 夜のグライダー)
2001年02月07日 アメリカ:デスティニー(運命)をユニティに結合(5A)
2001年04月19日 アメリカ:カナダアーム2をデスティニーに仮設結合(6A)
2001年07月12日 アメリカ:クエスト(エアロック)をユニティに結合(7A)
2001年09月14日 ロシア:ピアース(ドッキングコンパートメント)をズヴェズダに結合(4R)
2002年04月08日 アメリカ:S0トラスをデスティニーに結合(8A)
2002年06月05日 アメリカ:シャトルにてS0トラスにMBSを結合(UF-2)カナダアーム2をS0に移設
2002年10月07日 アメリカ:S1トラスをS0に結合(9A)S1のSは右舷(Starboard)
2002年11月23日 アメリカ:P1トラスをS0に結合(11A)P1のPは左舷(Port)
2003年02月01日 アメリカ:シャトル事故により計画の見直し
2005年07月26日 アメリカ:船外保管プラットフォーム(ESP-3)をクエストに結合(LF-1)
2006年09月09日 アメリカ:P3/P4トラスP5トラスをP1に結合(12A)太陽電池パドル展開
2007年06月08日 アメリカ:S3/S4トラスS5トラスをS1に結合(13A)パドル展開後、P6トラスの太陽電池パドル収縮
※4枚のパドルが展開したこの時点の形状を、ドラゴンが1/400プラモデルで再現(PHASE:2007)
2007年10月23日 アメリカ:ハーモニー(調和)をデスティニーに結合(10A)P5トラスにP6トラス移設後パドル展開
2008年02月07日 欧州:コロンバス(欧州実験棟)をハーモニーに結合(1E)
2008年03月11日 日/米:きぼう(日本実験棟)をハーモニーに結合(1J/A)
2009年03月15日 アメリカ:S5トラスにS6トラス結合(15A)太陽電池パドルを展開
※予定した8枚のパドルが全て展開(PHASE:2009)
2009年07月15日 日/米:きぼう船外実験プラットフォームをきぼうに結合(2J/A)
2009年11月10日 ロシア:ポイスク(探索の意)をズヴェスダに結合(5R)
2010年02月08日 アメリカ:トランクウィリティー(静寂)をユニティに結合(20A)
2010年05月14日 アメリカ:ラスヴェット(夜明け・ロシア語ではラスヴェート)をザーリャに結合(ULF4)
2011年02月24日 アメリカ:倉庫スペース(PMM)をユニティに結合(ULF5)
2011年05月24日 アメリカ:アルファ磁気スペクトロメータ(AMS-02)をS3トラスに結合(ULF6)
2011年07月11日 アメリカ:ラファエロ(MPLM)をハーモニーに結合(ULF7)シャトル退役(PHASE:2011)
2011年7月21日午後6時57分 スペースシャトル・アトランティス号の着陸をもって計画は完了と発表。
※物資補給フライト、細かいミッションは割愛
熟知されている方には、端折った説明をお詫びします。
これを読んで興味を持たれた方は、ネットや書籍などで、より見識を深めていただければと思います。
この順に従って、パズルで描ける可能な限りの形状変化を再現して行きます。
●知っておきたいISS用語
・SAW(Solar Array Wing):太陽電池パドル
・ラジエータ(Radiator):宇宙での温度差や、内部の温度上昇を抑える目的で、冷媒(液体アンモニア)を循環させ、熱放射により宇宙空間へ排熱するための放熱板
・ノード(Node):結び目・結合モジュールの別称(基本機能モジュールと実験モジュールなどをつなぐmodule<交換可能な構成要素>で、倉庫や個室<寝室>を設置)
ノード1:ユニティ ノード2:ハーモニー ノード3:トランクウィリティー
・ペイロード(Payload):積荷全般(主にオービターのペイロードベイ<貨物室>の積載物)
・オービター(Orbiter):探査機の総称(スペースシャトルの場合、地球と宇宙空間をを往還する宇宙船本体部分を言う)
実稼働したスペースシャトル・オービター:エンタープライズ(大気圏内試験のみ)、コロンビア、チャレンジャー、ディスカバリー、アトランティス、エンデバー(運用開始順)
割と多用されるワードなので、ここでも使用する可能性があります。
●2021年4月12日 再現開始
1998年11月20日 アメリカ/ロシア:ザーリャ(日の出)を軌道に投入(1A/R)
カメラはiPhone12を使用
このクオリティなので、短期集中で完成させようと思います。
このパズル、ちょっとしたトラップがあります。
それは、すでに組まれているパーツを一度分解して、別のパーツを挟むと言う箇所がいくつかある点です。
無理に組み付けようとするとパーツを破損させてしまうので、パーツをよく見て、パズルを解く必要があります。
●2021年4月14日 再現2日目
1998年12月04日 アメリカ:ユニティ(統一)がザーリャ前方に結合(2A)
残念なことに、ユニティ・デスティニー・ハーモニー・コロンバス・きぼう+船外パレットまでが一体成型されているので、フレーム切りで描くしかありません。
2000年07月12日 ロシア:ズヴェズダ(星)がザーリャ後方に結合(1R)
ズヴェズダのソーラーパネルは回転させることができます。
1998年時の計画案を再現しているため、オービター(スペースシャトルの軌道船部分)1機(Enterprise)と、ソユーズ2機(内1機はMRMと一体)は付属しますが、プログレス、ATV、HTV等は付属しません。
ISSの構成が主体なので、接続する船は描かないでおきます。
また、パーツを切るなどのキット本来の形状と異なる改造は行わないものとします。
2000年10月11日 アメリカ:PMA3・Z1トラスをユニティに結合(3A)パーツなし
2000年11月30日 アメリカ:P6トラスをZ1トラスに仮設結合(4A)太陽電池パドル展開(PHASE:2000 夜のグライダー)
2001年02月07日 アメリカ:デスティニー(運命)をユニティに結合(5A)
立体パズルと言っても、組み換えができるわけではなく、一つの完成形を目指すパズルなので、途中経過を描くのは難しいです。
デスティニーにESPが一体成型されていますが、実際の結合は2005年07月26日(LF-1)で、場所はデスティニーではなく、今後取り付けるクエスト(エアロック)の前方です。
不正確な形状ですが、ほぼ2000年のP6パドル展開と、2001年のデスティニー結合まで。
モジュールが連結されて行く以外の見どころとしては、SAW(パドル)の展開があると思いますので、印象的なパドル形状が完成した段階をひと区切りとします。
次回:PHASE:2007のバドル4枚の展開まで。
最終回:PHASE:2009のパドル8枚が展開して完成する(PHASE:2011)まで。
●2021年4月18日 再現3日目
2001年04月19日 アメリカ:カナダアーム2をデスティニーに仮設結合(6A)
このカナダアーム2はこれまでにないユニークな機構を持っています。
https://iss.jaxa.jp/glossary/jp/ko/ssrms.html
等間隔に配置されたGrappleを掴んで、ISSの外装をシャクトリムシのように移動し、必要な場所で作業できるんですね。
2001年07月12日 アメリカ:クエスト(エアロック)をユニティに結合(7A)
2005年07月26日 アメリカ:船外保管プラットフォーム(ESP-3)をクエストに結合(LF-1)
時系列は前後しますが、デスティニーの横に伸びたパレット、実際には左の丸いクエストに接続されます。
デスティニーに一体成型されているのと、次に接続するトラスで見えなくなるため、前倒ししました。
2001年09月14日 ロシア:ピアース(ドッキングコンパートメント)をズヴェズダに結合(4R)パーツなし
2002年04月08日 アメリカ:S0トラスをデスティニーに結合(8A)
2002年06月05日 アメリカ:シャトルにてS0トラスにMBSを結合(UF-2)カナダアーム2をS0に移設
2002年10月07日 アメリカ:S1トラスをS0に結合(9A)S1のSは右舷(Starboard)
2002年11月23日 アメリカ:P1トラスをS0に結合(11A)P1のPは左舷(Port)
トラスが左右に伸びて行きます。
S2・P2トラスは、ラジエータとパドルの間に入る推進機能を持ったトラスの予定でしたが、ロシアのモジュールに推進能力があるためキャンセルされ、実装されていません。
2006年09月09日 アメリカ:P3/P4トラスP5トラスをP1に結合(12A)太陽電池パドル展開
2007年06月08日 アメリカ:S3/S4トラスS5トラスをS1に結合(13A)パドル展開後、P6トラスの太陽電池パドル収縮
※この時点の形状をドラゴンが1/400プラモデルで再現(PHASE:2007)
後方から撮影しているのは、まだないはずのコロンバスやきぼうが一体成型されていて見えてしまうからです。
実際のPHASE:2007と比較すると、
1、ユニティ上にP6トラスがない(トラスが非分割のためパドル側に使用)
2、3連ラジエータが展開している(この時点では真ん中一つの展開ですが、一体成型のため)
ちなみに、ラジエータはみぎ舷がすくう角度、ひだり舷が舐める角度で展開します。
3、公開されている2007年時のパドルは垂直向き。(トラスが回転するので描写に不自然はないのですが、トラス軸が6角接続で、60°ずつしか回せず、垂直を向かないので水平で描写)
などの差異があります。
あと、このキットには、致命的な誤造形がありました。
1998年時点での完成予想図も実際のISSも、ひだり舷のパドルは、前方が下、後方が上になっていて、左右線対称ではなく、点対称に作られています。
要するに、左右のパドル取付部のトラスは、並べた時に同じ形状になるのが正しいのです。
このキットのひだり舷パドルは、前方が上、後方が下になっています。
パズルなので、敢えてパーツを変えて左右を線対称にしたのかも知れませんが、これは誤りです。
もし正すのであれば、キットをもう一つ買って、みぎ舷のパーツをひだり舷にも使うことで、一応問題はクリアできます。(そこまで費用をかける話でもないので直しません)
今後、修正版が作られることを祈ります。
残念なキットではありますが、パドルが4枚展開するとスケール感は出て来ますね。
次回はいよいよ、パドルが8枚展開する最終回です。
●2021年4月21日 再現最終日
2007年10月23日 アメリカ:ハーモニー(調和)をデスティニーに結合(10A)P5トラスにP6トラス移設後パドル展開
この時点でハーモニーは、ユニティのひだり舷に仮設結合ですが、一体成型で動かせないため、4枚のパドル展開のみとしました。
前述の通り、ひだり舷はそのままだと誤りなので、この画像だけは、みぎ舷のパーツに付け替えて正しい形状を再現してあります。
2008年02月07日 欧州:コロンバス(欧州実験棟)をハーモニーに結合(1E)
2008年03月11日 日/米:きぼう(日本実験棟)をハーモニーに結合(1J/A)
ようやく前面が描けました。
左からきぼう、ハーモニー、コロンバスです。
2009年03月15日 アメリカ:S5トラスにS6トラス結合(15A)太陽電池パドルを展開
※予定した8枚のパドルが全て展開(PHASE:2009)
組立フライトもここからは仕上げです。
2009年07月15日 日/米:きぼう船外実験プラットフォームをきぼうに結合(2J/A)
これで前面部分が完成。
2009年11月10日 ロシア:ポイスク(探索の意)をズヴェスダに結合(5R)パーツなし
2010年02月08日 アメリカ:トランクウィリティー(静寂)をユニティに結合(20A)パーツなし
2010年05月14日 アメリカ:ラスヴェット(夜明け・ロシア語ではラスヴェート)をザーリャに結合(ULF4)
唯一パーツのあるラスヴェット(MRM)
ソユーズと一体成型なので、遮光で見えにくくしてあります。
なぜソユーズが一体になっているのか調べたら、ISSは緊急脱出用にソユーズが1機、常にドッキングされた状態になっているんですね。
そうは言っても、ソユーズはソユーズ。ISSの構造物ではありません。
以下パーツなし
2011年02月24日 アメリカ:倉庫スペース(PMM)をユニティに結合(ULF5)
2011年05月24日 アメリカ:アルファ磁気スペクトロメータ(AMS-02)をS3トラスに結合(ULF6)
2011年07月11日 アメリカ:ラファエロ(MPLM)をハーモニーに結合(ULF7)シャトル退役(PHASE:2011)
2011年7月21日午後6時57分 スペースシャトル・アトランティス号の着陸をもって計画は完了と発表。
このキットで、可能な限り近付けた実際の完成形状です。
2015年12月22日 2016年にて運用終了予定を、2024年までの運用延長と発表。
ここから追記
2021年7月29日 ロシア:実験モジュール ナウカ(科学)をズヴェズダに結合(3R)
2022年2月4日 NASA:2030年までISSに運用を延長し、2031年に軌道を離脱させ、太平洋上に落下させると発表。
2022年7月26日 ロスコスモス:ロシアが2024年以降(日程未定)ISSから撤退すると表明。
2023年3月9日 NASA:現在ロシアが受け持つISSの軌道制御をアメリカで担うべく、スペースタグ(離脱機)の開発を表明。これにより、2031年にISSを太平洋に落とすための軌道離脱まで、ロシア離脱後はアメリカがISSの軌道を制御する。
追記ここまで
総評:パドルの一件はかなり減点ですね。
それと、改造ベースで考えるには、樹脂が柔らかすぎて、セメントや塗料で溶けてしまう可能性が大きいです。
一見精巧に造形してありますが、パドルが反っていたり、取付穴が垂直でなかったりと、かっちり作るにはかなり甘いキットと言えそうです。
スタンドはシンプルで、前後を差し替えて二通りディスプレーできる点がいいですね。
多少は好みの形状に寄せてパドルやラジエータの回転ができることと、船のドッキング形状をディスプレーできる点は、このキットのメリットだと思います。
●ISSの周回姿勢
現在のISS(12A以降)は、LVLH(Local Vertical/Local Horizontal)姿勢で周回しています。
これは地球指向姿勢と言って、地球を回る時、糸を付けて物を回すのと同じように、常に地球側におなかを見せる姿勢です。
進行方向に対しては、常にハーモニー側が前になるよう制御されます。
姿勢制御は、主にZ1トラス内のCMG(Control Moment Gyro)4機で行い、必要に応じでスラスター(ブースター)を併用します。
●ISSの正確なサイズ(ISSはヤード・ポンド法で設計)
全幅:355ft8in(108.4072m)
トラス長91m 接手軸まで2.9m×2 パドル幅11.6m(左右半分ずつ張り出すので1ユニット分)
全長:243ft(74.0664m)
トラス幅3m(6角部分は対面幅3.5m) パドル長35.5m×2)
全高:66ft(20.1168m)
トラス幅+下に伸びるラジエータ+3連ラジエータの上に張り出す分の合計
打ち上げ総重量:930,000lb[ポンド] 421,840.9041kg(2020年現在)
回収、交換分もあるため、実際のISS構造物はもう少し軽くなります。
ざっくり言えば、ISSのパドルで描かれた長方形の大きさは、108m×74mで、ラジエータが縦に展開した高さの合計は20mとなり、構造物総重量はおよそ420tです。
一般に言われている、ISSの完成全長73mあるいは72.8mが「PMA-2からZvezdaまで」と言うのは誤りで、ISSの全長は、パドルを広げた長さである74mが、妥当な近似値と思われます。
ISSの中央部、縦に並んだ与圧モジュールの各全長を足してみます。
IDA-2 1.1m PMA-2 2.6m ハーモニー6.1m デスティニー8.5m ユニティ5.5m PMA-1 2.6m ザーリャ12.5m ズヴェズダ13.1m
メートル換算時の誤差があるので概ねですが、合計は52.0mです。
4DMaster(販売:青島文化教材社) 1/450パズル ISS
全幅265mm 全長185mm この形状での全高50mm(スタンド含まず)
1/450と謳っていますが、実測値から換算するに1/400スケールと思われます。
全幅265mm×400=106m 全長185mm×400=74m 全高 50mm×400=20m
なお、実装されなかったサイエンスパワープラットフォームを加えたキットの高さは95mmです。
※付属する船はサイズに含んでいません。
参考になれば幸いです。
4Dパズル 1/450 ISSを使った再現
背景はフリー画像をモニターに映し、キットはテグス(3号)で吊って、編集で消してあります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
以上で、ISS 1/450パズルでの再現を終わります。