あぁ、バタークリームのケーキが食べたい!


って突然思って、夫にねだった。



味覚も面白いもので、記憶に繋がっているものが多い。


たとえ頭が忘れていても、身体に残る記憶がある。



私が小学校一年生で越した場所で出会った、その頃すでにお爺さんだったお医者さんは、


私が初めてはっきりと意識して尊敬を感じた大人だった。


医者にも、もう期待などなくしていたのだったけれど、白髪で細くて静かで、余分なことなど言ったりやったりしないお爺ちゃん先生だったけれど、



私の周りで初めて母親に、「子供を殺したいのか?!!」って怒鳴ってくれた大人だった。



後にも先にも一人もいない。



その先生は、クリスマスになると子供会の会合を開いて、サンタの扮装をして、子供一人一人に、可愛い紙袋に入れたバタークリームのクリスマスケーキを配って、紙芝居を読んでくれた。
静かに見守ってくれている感じが伝わる、そんな人だった。



私は子供すぎて、お礼や尊敬の言葉を伝えられなかったけれど、


幾つになっても、風邪や腹痛やの軽い病気には、先生の所に通った。



子供を産んでも、子供が1歳になるあたりからは、先生の所に連れて行った。



90を超えても、身体の管理をして、しっかりと仕事をなさっていた。



けれど、ある日、病院を閉めると、数ヶ月で亡くなられた。



私は、常識など分からないので、その亡くなられた日に、どうしても先生に会いたくて行ってしまったが、ご家族は心よく先生に会わせて下さり、



何も言えないけれど、見つめるだけしか出来なかったけれど、私は先生にお別れをさせて頂けた。



先生、本当に本当にありがとうございました。



私はあなたに身体より心が救われていました。



あなたが、物凄い偉い事をなさって来た医師だとは知らなかったけれど、とても素晴らしい人だとはずっと知っていました。




私が、バタークリームのクリスマスケーキが食べたくなったのは、先生を忘れないからと、私は知っています。



40年以上前に、小さな町内とはいえ、子供全員にケーキを配って下さったのは大変だったと思います。


ありがとうございました。


あなたが、もっと古い時代に苦労してお医者さんになり、医師になってからも、足りないと薬科大に通い、お金も労力も苦労しながら誠実に学び、人に尽くした人とは知りませんでした。



なけなしの自腹のお金で、医療の届かないペルーの奥地に単身行って、人を救っていた凄い人とは知りませんでした。


尊敬していましたが、町内の静かな優しいお爺ちゃん先生と思っておりました。


もともとお金があって、だから医者にもなれたのかな?くらいに思っておりました。


ですが、知らなかったけれど、あなたが私の中の大人のなかで、誰よりも尊敬する人だったのは間違いありません。


あなたが居てくれただけで、私は少し強く生きられました。



今でも尊敬して慕っております。


あなたを思って、あなたの様に優しい夫からバタークリームのクリスマスケーキを買ってもらいます。


また会いたいです。


症状のお話ししかしなかったけれど、何でも伝わる様な気がしていました。


今も、どんなに技術や知識の豊富な医師にあっても、あなたを超えて尊敬する人はありません。


ご家族に、あなたが大切にしていた聖書と、ご遺影に使われたお写真を頂きました。


私は、どんなお守りより大事に思っています。


ありがとうございました。


あの頃、言葉に出来なかった思いがあなたに届きます様に。