「季節の記憶」保坂和志 ★★★★★
「言葉で、存在してるものをあてはめること、そんなことをしてるのは人間だけだ、という趣旨の文章は、今までにも何回か目にしてきていて、「確かにそうだなー」と当たり前のことを、毎回思う。毎回思って、どうにかなるかというと、どうにもなりません」
「元々無名なことに言葉をあてはめて、それで意思疎通してるっていうのは、なんだか現実感のないことで、すごいな」
などなど、こんなことが自然と頭の中に浮かんできて、これは、ただ小説に書かれたことをなぞってるだけなんだけど、それでも「自分で考えている!」と感じさせてくれる、なんだか稀有な小説だと思います。すごい。
保坂和志さんの小説を読んでいると、読むと考えるが同じ時間に進行していって、この平凡な脳みそをめいいっぱい回転させて「考えてる」ことを意識しただけで、なんとなく頭脳が冴えわたってきたな、うれしい、という錯覚を感じることができて、なんともありがたいのです。
ほんとに個人的な趣味なのですが
「事実としてそうなんだということを知っていてもそれを実感する方法を持たないというのあ人間の持った世界像の特異なところで、こういう世界像を得れば得るほど人間は、少なくとも地上では孤立するしその方向はもう止まらない」
という哲学チックな文章が続いて「なにこれ、すごいなあ」と嘆息しているところに
「なんて思っていたけれど、ところで11月末の、秋というよりも冬といった方がいい季節の夜は不思議に安定している」
という、「保坂和志さん、すっとぼけた」とつっこみたくなる文章の流れが、とても好きです。
内容のつながらない文章、なのに、その「つながらない」感じが、自然で、もうこれは、感動ものなんです。面白かった。
「短歌という爆弾: 今すぐ歌人になりたいあなたのために」穂村弘
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