先日、朝ドラの虎に翼で「なぜ人を殺してはいけないのか？」という話がやっていました。

犯罪にかかわったとされる女学生の美佐江が、寅子に対してその問いを発するわけですが、美佐江は法律の本を読めば悪いことをすれば罰せられる、と言ったことは分かるが、なぜ、それらのことが悪いことと分類されるのかが分からない、と言います。それで、犯罪を繰り返すのでしょうか？

先日以下の内容でブログを書いてみました。『相棒』でも似たような話がやっており、殺人が許容されない根拠を優秀な学生ですらも回答できないことを免罪符に、殺人は許容されるんだ、と自分を納得させようとする教授の話がやっていました。

それに対して、殺人は絶対的に許されない、その明確な根拠がある、という話を書かせていただきました。

『殺人が許されない根拠について　～『相棒session13』より～』先日、相棒の再放送がやってました。「殺人が許されない根拠を教えよ」と鮎川教授が元教え子たちに問いを出し、監禁し、満足な答えが出ない場合には猟銃で殺してしまう、…

ameblo.jp

知的に考えては「殺人の許容されない理由について」の回答を出すことはできない（知の限界）

上記ブログにも記載しましたが、知的な議論、哲学的な議論によってはこの問いに決着をつけることができません。

それは、相対主義の議論に陥るからです。

根拠のないまま議論しても、例えば、「人殺しを許容すると自分が殺されることも許容しなければならないから」と言うと、「では自分が殺されても良いと言う人は人殺しも許されるのですか？」となり、決着がつきません。

こういう議論は声が大きい人の勝ち、となり、相対主義の議論であり、決着をつけることができません。

結局のところ、こういった問いに対して決着をつけるには、根拠となる理念が必要になります。

それは、一般的には真理という名で呼ばれます。

結局のところ、真理が存在するのであれば、「人殺しは許容されるか？」に対して決着をつけることができるのであり、真理が存在しないのであれば、このような問いには永遠に決着をつけることができません。

では、真理は存在するのか？という話ですが、実はこの問い自体が、それを判断する根拠がないがために、知によっては決着が出ない議論となっています。哲学的に、知的に考えても、永遠に真理は存在すのか？という議論に決着をつけることはできません。

これが知の限界です。

いかにして真理が確信できるか？

知的に考えても1万年経っても真理は存在するのかどうかの決着をつけることができません。それゆえに、ソクラテスの時代から真理は存在するのかしないのかという議論はあったのですが、いまだに決着がついていないのです。

では、真理が存在するとして、この真理はどうとらえることが可能なのか？

これは、実は、自分で分かるのです。人間は誰しもが、自分自身の内側に真理の認識を持っているのです。そして、外部から真理に関する情報が与えられたときに、自分自身の内側にある真理認識と照らし合わせて、「これは真理である」と自分自身が判断できるのです。

確信であり、宗教体験です。西田幾多郎の『善の研究』を私はお勧めします。西田が書いてあることが絶対的に正しいと私は保証したいと思います。西田幾多郎が、『善の研究』の中で、純粋経験と実在と言う話をしていますが、まさにその通りと思います。

さて、上記のように、人間は真理情報を与えられればこれが真理であると判断できると言いましたが、実際のところ、通常人間は真理の情報を外部から与えられても、それが真理であると判断できません。

それは、その人の心が利己主義的な思いで曇っているからです。しかし、様々な人生経験をする中で、その心の曇りを取り除いていく過程で、自分自身の純粋な心、純粋な利他心というものが浮かび上がってきます。そうする中で、自分自身の思いが、純粋な意識（神の意識）に通じていき、「ああ、これか」と分かるわけです。そこにおいて、外部から与えられた情報が、これが真理なのか、とうなのか、という判断が可能になるのです。

神の意識との共鳴によって、真理を確信するという事です。そして、それは自分自身の心が利己主義的な思いから純粋な利他の思いに上がっていくことによって、可能になる、ということです。そのための方法論として、様々な宗教の戒律などが存在しているということです。

そして、真理とは何かというと、それが愛であるということです。愛とは利他の思いであり、与え、分かち合う思いです。

なぜ人を殺してはいけないのか？

愛が真理であり、愛とは利他の思いであり、無条件の無限の分かち合いであり、あらゆるものを生かし育む思いです。

一方で、殺人とは利己主義の最たるものです。

それゆえに殺人は絶対的に許されません。

人は真理に沿って生きることで幸せになり、真理に反することで不幸になっていきます。そういった面からも、殺人は許されないと言えるでしょう。

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Taigen Ogura Philosophy Labo

「なぜ人を殺してはいけないのか？」『虎に翼』より