子宮頸がんと葉酸の関係について、前回のブログで書いたのですが、今回は具体的な葉酸の摂取量について見ていきたいと思います。





前回のブログでご紹介した論文内では、葉酸の摂取量が5mg/日となっている事が多いのですが、厚労省は葉酸の1日摂取量を1mgと定めています。







1日1mg以上の摂取量で懸念されることに「悪性貧血」と「がん」の2つがあります。


悪性貧血

ビタミンB12や葉酸の濃度が低いと「悪性貧血」と呼ばれる貧血状態になる事があります。


高濃度の葉酸を摂取すると、貧血症状のみ改善されて、ビタミンB12欠乏症が見落とされる恐れがあります。


つまり、悪性貧血の発見が遅れて、ビタミンB12不足が引き起こす神経損傷により、脳や脊髄や神経に永久的な障害を引き起こす恐れが出てきます。


これに関しては、高濃度の葉酸を摂取する前に貧血がないか、ビタミンB12の濃度は適切かを調べることで、対策はできそうです。



がん

がん(特に結腸・直腸癌)を発症した後に高用量の葉酸を摂取することで、がんの進行を早める恐れがあるとされています。


そのため、特に結腸・直腸腺腫の病歴のある人は(時にがんに変化することがあるので)、高用量の葉酸サプリを内服する時は、充分に注意する必要があります。


これに関して、具体的な論文を見ていきたいと思います。





対象

大腸腺腫(大腸がんの前駆病変)と診断された合計1,021人の参加者が、1 mg/日の葉酸 (n = 516) またはプラセボ (n = 505) を投与され、 1994年から2004年までフォローされました。


従来の腺腫、無茎性鋸歯状腺腫/ポリープ(SSA/P)、または大腸がんが発生するかどうかを検証しています。


結果

治療開始3年目から6年目の間、葉酸によるSSA/P リスクは1.94倍と増加していました。




一方で、逆の効果を示した報告もあります。





対象

大腸腺腫のない50歳以上の参加者791人に対し、1mg/日の葉酸サプリメントの摂取または葉酸なしのいずれかに分かれてもらい、3年間の追跡調査しました。


結果

大腸腺腫の発生率

・葉酸群 64人(14.88%)

・対照群 132人(30.70%)

と、葉酸摂取によって、リスクが0.49倍になっていました。



以上のことから、1mg/日の葉酸を摂取し続ける事が、大腸がんのリスクをどのように変化させるか、まだ一定の見解は得られていないと言えそうです。




ちなみに、過去に二分脊椎という先天性疾患の赤ちゃんを出産している女性は、次回妊娠時の二分脊椎再発予防のために、1日5mgの葉酸摂取を勧められています。



この場合は、妊娠前から妊娠12週までの期間限定で高用量の葉酸サプリ摂取が推奨されているのです。





総合的に考えると、異形成のためだけに日頃から葉酸5mgを摂り続けるのは、現時点ではまだオススメできるものとは言えず、異形成と診断された場合に、3〜6ヶ月と期間限定で葉酸5mgを摂取し、異形成が改善するかどうかを見てみるのは一つの手かも知れません。



もしくは、日頃から葉酸の多く含まれる食事を心がけたり、適切な量の葉酸サプリを継続することが、子宮頸がん/異形成の予防につながるかも知れませんね。