慢性的な骨盤の痛みがあると、婦人科的には子宮内膜症やクラミジア感染などを疑う事が多いのですが、中には「骨盤内うっ血症候群」という病態もあります。
血管の中には血液の逆流を防ぐための弁があるのですが、この弁が壊れてしまい、血管内に血液が溜まってしまうために慢性的な痛みが出ると言われています。
特徴としては、長時間の立ち仕事や座り仕事にて痛みが悪化し、横になると改善する点があげられます。
以前、この骨盤内うっ血症候群に対して、血管に栓をする「塞栓術」という治療が有効である、というブログを書きました。
今回も、また塞栓術の有効性を検討した論文が出てきたので見ていきたいと思います。
この論文では、慢性的な骨盤痛を訴える女性の骨盤内静脈瘤に対する塞栓術の効果を検証しています。
対象
他の疾患を否定され、骨盤内静脈瘤を指摘された18〜54歳の女性60人。血管造影検査のみを受ける群と、血管造影検査に合わせて塞栓術も行う群に分かれてもらい、痛みの変化を検証しています。
結果
治療12ヶ月後の平均的な痛みの強さを二つの質問票で比較したところ、
治療群: 2(3〜10)、15(0〜3)
観察群: 9(5〜22)、53(20〜71)
と、いずれの質問票でも治療群で痛みの改善傾向が認められ、大きな副作用はありませんでした。
以上のことから、骨盤内の静脈瘤が原因となる慢性的な骨盤痛に対しては、血管塞栓術が有効である、ということが言えそうです。
一点、問題があるとすれば、骨盤内うっ血症候群の診断が難しいということ。
婦人科でよく行う超音波検査で簡単に診断がつけられるものではなく、造影CT検査にて骨盤内血管の静脈瘤を見つける必要があります。
しかし、具体的にどの程度の静脈瘤があれば確定できるかの診断基準もなく「おそらくこれが原因だろう」という想定をして塞栓術を行っていく形になります。
この辺りは、骨盤内うっ血症候群という比較的マイナーな病態を知っているかと、それに対する治療として塞栓術を積極的に行っているかどうか次第になってくるため、症状で困っている方は、一度かかりつけで相談してみて下さい。
診断や治療に関しては放射線科が中心となって行う事が多く、調べた範囲では都内近郊だと埼玉県の獨協医科大学が治療に関する論文を発表されていたので、参考にしてみて下さい。
https://www.jsir.or.jp/docs/journal_magazin/m30_3.pdf