産婦人科医として妊婦さんに関わっていると、妊娠中や出産直後の赤ちゃんのことには詳しくなるのですが、年単位でのお子さんの話になるとわからなくなってしまうものです。



そこで、今回は10年という長期間にわたって、出産がどのようにお子さんに影響を与えるかを検証した論文を見ていきたいと思います。




陣痛が始まる前に破水することを「前期破水」と呼ぶのですが、早産の時期に前期破水が起きると、赤ちゃんを早く出してあげるのか、できるだけお腹の中にいてもらって、赤ちゃんの成熟を待つのかを検討することになります。




この論文では、妊娠34週0日から妊娠36週6日までの間に前期破水となった場合、陣痛促進するのか、自然に陣痛が来るのを待機するのか、どちらを選べば10年後の子供の発達に良い結果をもたらすかを検証しています。






対象


妊娠34週0日から妊娠36週6日までに破水して生まれた赤ちゃん。


陣痛促進した127人と、陣痛が来るまで待機する方針とした121人の、10〜12歳時点での発達について評価しました。


結果


認知機能、運動機能、行動に関する評価いずれも、両群で違いはありませんでした。



視覚や聴覚などの感覚機能、呼吸機能、学力、全体的な健康度に関しても、両群で違いはありませんでした。



ただし、陣痛が来るまで待機した場合の方が、入院するリスクが0.68倍、手術を受けるリスクが0.58倍と低くなっていました。




以上のことから、妊娠後期に前期破水となった場合に、陣痛が来るまで頑張って待機しても、10〜12歳という長期間での様々な発達には、それほど影響しない、という事が言えそうです。



実際の臨床では、例えば感染の可能性があれば早期に促進剤を使う事が多いですし、土日などスタッフ数が少ない場合には、促進剤を使って緊急帝王切開となるリスクを考慮して、数日待機する事もあります。



様々な条件を考慮して方針を決めていくのですが、どちらを選んだとしても、長期的な結果は変わらない、というのは一つの安心材料になるのではないでしょうか。