帝王切開をした後に生理が再開して、生理期間が長くなったり、生理痛が強くなったり、不正出血が続くことがあるのですが、その原因の一つに



帝王切開瘢痕症候群



というものがあります。



これは、帝王切開の時に切開した子宮の壁が縫った後にうまく修復されず、その部分だけ子宮の壁が薄くなってしまう状態を意味します。



超音波検査で見れば、ちょうどその部分だけ子宮の壁が薄くなっているので、診断自体はそれほど難しいものではありません。



ただ、治療となると内服薬で対応できるものはなく、基本的には自然に良くなることもないため、手術にて修復する必要が出てきます。




そこで、今回は帝王切開瘢痕症候群に対して手術治療をした場合の論文について見ていきたいと思います。







この論文では、帝王切開瘢痕症候群がある33人を対象にロボット手術にて治療した方を対象に検証しています。








ロボット手術とは、このように患者さんの近くには手術のアームや術野を見るためのカメラだけがあり、実際に手術する医師は少し離れた場所からロボットを操作して手術する方法です。



将来的には、患者さんから何kmも離れた位置にいる医師が手術する事さえ可能になると言われています。




そういった手術を2013〜2020年の間にフランスで受けた方を対象として検証しているのですが、



まず、帝王切開瘢痕症候群が見つかるきっかけとしては



・続発性不妊: 57.6%


・異所性妊娠: 18.2%


・骨盤痛: 15.2%


・不正出血: 9.1%


でした。



それらに対してロボット手術を行ったところ、瘢痕部の子宮の壁の厚さは、1.55mmから4.26mmに改善していました。



術後に妊娠を希望した20人のうち、15人が妊娠し、14人は正期産で出産しました。



生活に支障をきたす症状を訴えていた9人のうち、5人は症状が消失し、3人は大幅に改善し、1人は症状が変わりませんでした。30人のうち17人が調査のための質問に最後まで回答し、全員が同じような状況になったら、再び同じ手術を受けるだろう、と回答しました。




以上のように、帝王切開瘢痕症候群に対する治療として、ロボット手術は傷の小さい治療として、かなり有望だということが言えそうです。





日本国内においては、まだロボット手術ができる施設は比較的限られているものの、腹腔鏡という内視鏡を使った手術によって、傷の小さい手術は可能なため、もし帝王切開瘢痕症候群による症状で困っていたら、そういった手術を検討しても良さそうですね。