以前、出産経験のない方でもミレーナを入れられる、というブログを書きました。
ミレーナは、ホルモン剤が含まれている3cm程度の棒で、それを子宮内に入れることで生理痛を楽にしたり、生理の量が減ったり、避妊効果が期待できる治療法なんですが、子宮の中に入れる際に、それなりに痛みを伴います。
下から出産経験のある方であれば、子宮の出口がある程度広がっている為、比較的スムーズにミレーナを入れられるのですが、出産経験のない方や、帝王切開しかしたことない方であれば、子宮の出口がそれほど広がっていない為、それなりに痛みを伴うことも。
そこで、ミレーナ挿入時に子宮の出口に麻酔する事もあるのですが、今回は飲み薬で子宮の出口を広げて痛みを軽くする方法についてご紹介したいと思います。
この論文では、子宮の出口を柔らかくするために、ミソプロストールという薬を内服した場合と、腟錠として使用した場合を比較して検証しています。
ミソプロストールは、サイトテックという名前で処方されている薬のことで、日本では胃潰瘍や十二指腸潰瘍の時に使う「胃薬」の一種です。
対象となったのは、子宮鏡という内視鏡検査が必要となった430人の女性です。
子宮鏡とは、内視鏡の一種で子宮の出口から細い管を挿入して子宮内を観察するものです。
ミレーナと同じか、それ以上に太い管を入れる必要があるため、事前に子宮の出口を広げておく必要があります。
そのため、ミソプロストールを内服群、腟錠群、コントロール群で分かれてもらい、子宮鏡検査の12時間前に薬を使ってもらいました。
それぞれの薬の内容は
・内服群: 400μgのミソプロストール内服錠と澱粉の腟錠2つ
・腟錠群: 400μgのミソプロストール腟錠と澱粉の内服錠2つ
・コントロール群: 澱粉の内服錠と腟錠
となっています。
澱粉の錠剤に関しては、薬としての効果は全くないものであり、薬を使っている本人が、自分が何の薬を使っているかわからないようにする為に使用しています。
その結果、子宮の出口の大きさは
・内服群: 4.79 ± 1.07 mm
・経腟群: 4.25 ± 0.71 mm
・コントロール群: 3.92 ± 0.92 mm
と、ミソプロストールを使った方が出口が広がっており、経腟群より内服群の方がより広がっていました。
また、子宮鏡を子宮頸管内に入れる「入れやすさ」では、
・内服群: 4.25 ± 0.64
・経腟群: 4.22 ± 0.74
・コントロール群: 2.55 ± 0.87
と、ミソプロストールを使用した方が子宮鏡を入れやすい結果となりました。
子宮鏡を入れる際、子宮の出口を広げるために要した時間は
・内服群: 48.98 ± 12.6秒
・経腟群: 46.55 ± 15.32秒
・コントロール群: 178.05 ± 74.18
と、ミソプロストールを使用した方がかなり短い結果となりました。
副作用の点では、内服群でも経腟群でも大きな差はありませんでした。
ミソプロストールの添付文書を見てみると、薬の主な副作用としては、便秘や下痢、食欲不振などが挙げられます。
また、稀な副作用としては、ショックやアナフィラキシーなどの症状も。
保険で認められている使い方なら、重い副作用が出た時の治療費も補償されるのですが、今回ご紹介した使用方法は、保険では認められていない「適応外使用」のため、万が一、副作用で入院が必要になったり、障害がなかった場合にも国からの補償が効かないことになります。
そういった「適応外使用」のリスクも踏まえた上で、ミレーナ挿入時にミソプロストールを使用することは、痛み軽減に有効な手段の一つになる可能性があると言えそうですね。