産婦人科の外来をしていて、甲状腺癌を見つける事はまずないのですが、外来患者さんの中には「甲状腺癌の治療後」という方が時々来られます。





20代、30代と比較的若い方も多く、今回はそんな甲状腺癌と妊娠の関係について説明したいと思います。










この論文では、甲状腺癌治療後の妊婦さん154人と、甲状腺の病気や癌のない妊婦さん308人を比較しています。



血液検査の項目で比較すると、甲状腺癌治療後の患者さんの方が、TSHは低く、fT4は高い結果となりました。


fT4は、甲状腺から出てくるホルモンであり、TSHは甲状腺に対してfT4を出せと頭から指令を出すホルモンです。



これは、甲状腺癌によって甲状腺を摘出した為に、fT4をはじめとした甲状腺ホルモンを補充する事で、fT4の値が高めになり、それに伴ってTSHが低く抑えられている結果と思われます。



では、実際に妊娠経過についてはどうでしょうか。



年齢や妊娠前のBMI、妊娠前の血圧・糖尿病、以前の帝王切開や体外受精・顕微授精などの条件を合わせて比較したところ、、、



早産率・妊娠糖尿病・妊娠高血圧腎症に関しては、両群に違いはありませんでした。


しかし、癒着胎盤のリスクが10.57倍となっていました。



癒着胎盤とは、出産後の出血の量が非常に多くなったり、場合によっては子宮そのものを取らないといけなくなるなど、かなりリスクの高い状態です。


また、妊娠中にはなかなか確定診断が付かず、いざ出産する段階になって初めて見つかる、ということも。



そう考えると、甲状腺癌治療後の妊婦さんは、癒着胎盤がおきる前提で、出産する病院を考えた方が良いのかもしれません。



これに関しては、出産する病院次第ですので、もし該当する方は担当の先生と相談してみてくださいね。