抗NMDA受容体脳炎という病気のせいで性格が変わるのですが、それに卵巣腫瘍が合併する事が多く、婦人科としての対応も必要になるのです。
そこで、今回はその卵巣腫瘍に対する婦人科的対応についての論文を見つけたのでご紹介したいと思います。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31128109/
2011年から2016年に抗NMDA受容体脳炎と診断された108人の女性について検証しました。
108人のうち29人(26.9%)が皮様嚢腫という卵巣腫瘍を持っていました。
平均年齢は23歳でした。
卵巣腫瘍がない抗NMDA受容体脳炎の方と比べると、卵巣腫瘍がある方が発熱(75.9%)、意識障害(65.5%)、人工呼吸器が必要な状態(55.2%)、集中治療室への入院(55.2%)が高確率に認められました。
また、卵巣腫瘍がある女性の方が、日常生活で介助が必要になる部分が大きくなりました。
29人のうち22人(75.9%)が卵巣腫瘍に対する手術を受け、腫瘍の大きさの平均値は4.61cm、最も小さい腫瘍は1cmでした。
1名のみ卵巣腫瘍が癌との診断になりましたが、残りの21名は良性腫瘍でした。
28名(96.5%)は、良好な経過を辿り、日常生活に支障がないレベルまで回復しました。
ただし、治療後3年間の間に、卵巣腫瘍の手術を受けた方のうち、14.6%が脳炎を再発しました。
一方で、卵巣腫瘍がなかった方では、33.3%が脳炎を再発していました。
以上のことから卵巣腫瘍を伴う脳炎の場合は、比較的症状が重くなるものの、卵巣腫瘍を取ることで再発率は下げられる事から、入念に卵巣腫瘍がないかどうかを検索する必要があると言えます。