最近では医療脱毛が広がってきていて、多毛に悩む方は減ってきているかと思いますが、どうしても脱毛に抵抗がある方もいるかと思います。
そこで、今回は多毛に関する論文をご紹介したいと思います。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29522147
こちらは、米国内分泌学会が閉経前女性の多毛症の診断と治療に関して発表したガイドラインになります。
多毛となる原因は非常に多岐にわたるのですが、婦人科で問題になることが多いのは、生理不順も伴いやすい「多嚢胞性卵巣症候群」という状態です。
そこで、まずは多嚢胞性卵巣症候群(PCOSと略します)について説明したいと思います。
PCOSは、体質的に卵巣の中で男性ホルモンが多くつくられてしまうために、卵巣が排卵しにくくなり、結果的に生理不順となったり、男性ホルモンの多さが多毛やニキビの原因になったりする状態を言います。
PCOSの原因は
根本的な原因ははっきりとわかっていないのですが、脳の中にある下垂体という部分から分泌されるLHとFSHというホルモンのバランスが崩れて排卵しにくくなり、生理不順になります。
排卵のしにくさは個人差が非常に大きいため、多嚢胞性卵巣症候群であっても簡単に妊娠する方もいれば、なかなか自然妊娠が難しい方もいます。
PCOSの治療は
妊娠希望のある方で、なかなか妊娠しない方は、排卵誘発剤を使って排卵の確率を上げることになります。
一方、妊娠希望のない方であれば、ピルなどのホルモン治療で定期的に生理を来させることになります。
次に、肝心の多毛に関して説明したいと思います。
上でも説明したように、PCOSの方が多毛になる原因は男性ホルモンだと考えられます。
そこで、物理的に医療脱毛などで対応する方法や、ピルを飲むことが勧められています。
ピルを半年ほど内服しても効果が認められない場合や、様々な理由によりピルが内服できない方は、男性ホルモンを抑える薬を使用します。
代表的な薬はスピロノラクトンという利尿剤で、尿の量を増やすことで高血圧やむくみの治療に使います。
時々、生理前に浮腫みやすい方に対して使うこともある薬です。
このスピロノラクトンを1日に100㎎内服することで、論文上は多毛が明らかに改善したのですが、内服し始めに尿が増える為、立ち上がった時のふらつきが出るかもしれません。
以上が、PCOSが原因と思われる多毛に対する治療法になります。
PCOS自体は、婦人科で診断を付けることが可能なため、気になるときにはお近くの婦人科で相談してみてくださいね。