「海外で働く」という話をする時、日本人の間で必ずと言っていいほど話題になることに

「仕事をするのに必要な英語力はどの程度なのか?」ということが挙げられると思います。

 

ビジネス英語の試験と言われているTOEICで900点取れていれば良いのでしょうか。

留学に必要なTOEFLで110点取れていれば良いのでしょうか。

 

 

私の感覚としては、各会社で海外派遣の基準が設定されている場合は別として、

実は、発想の逆転が必要なのではないかと思います。

 

当然、できればできるほど良いのですが、「これくらいできたら良い」という考え方ではなく、

「今できる英語で何とかする」というマインドセットが必要なのではないかと思います。

 

「今できる英語で何とかしていく」には、英語ができればできるほど

「心が折れる」可能性は低くなりますが、特に一定の基準があるわけではありません。

 

 

さらに言えば、「仕事ができる英語力」と言っても、実は、様々なレベルが存在します。

 

特に、「働く場所(英語圏/非英語圏)」、

英語圏の中でも一緒に働く人の「日本(人)への興味」、

そして、「仕事内容」によって大きく異なるように思います。

 

非英語圏で、英語で仕事をしている人で、外国人に興味がない人は

相対的に少ないと思いますので、当該カテゴリーは省略しています。

 

 

英語圏で日本に興味がない人と働く

米国から出たことがなく、米国にしか興味がない人だけのチームで働くようなケースです。

求められる英語力は最も高くなります。

 

一言で言えば、このカテゴリーで求められる英語レベルは「ネイティブレベル」です。

このカテゴリーでは「英語ができる」という概念は存在しません。

ネイティブレベルに話せて当然だからです。

日本人に対して「日本語がうまい」と思うことがないのと同じです。

 

特に、米国はグローバルで様々な人種が入り混じっているように感じるかもしれませんが、

このカテゴリーの米国は、実は非常にローカルです。

外国人は英語を完璧に話し、米国人のように立ち振る舞うことが要求されます。

 

米国人が国際性を強調するために使う「international」という言葉も

実は国籍が異なるだけで、幼少時代から米国で育ち、

現地化した人を指していることもあります。

 

 

少し話はそれますが、英語力以上に大変なのが

「米国人のように立ち振る舞う」というところで、

現地の文化環境で育っていない場合には苦労するところだと思います。

 

例えば、「〇〇の業務経験はあるか?」と聞かれた場合、少し触れたことがある程度だと、

日本人としては「ほとんどない」と言いたくなります。

 

しかし、そのような受け答えは「自信のない仕事のできない人」という印象を

与えてしまうかもしれません。

 

ビジネス以外のちょっとした雑談も苦労するポイントで、

フットボールの話や高校時代の話をされ、

背景知識がない状態で理解しなければなりません。

 

日本語で聞いても理解できない内容だと、

英語が聞けていないのか、内容が理解できてないだけなのか、

その区別もつきにくく苦労することになります。

 

欧州の方が米国よりも真にinternationalな環境のため、

米国ローカルが最も厳しい環境のように思います。

 

 

英語圏で日本に興味がある人と働く

上記と比較すると大幅に難易度が落ちます。

米国のトップスクールに留学できるレベルの英語力があればやっていけるでしょう。

 

チームに日本人やアジア人が多い場合や日系企業の現地子会社へ駐在する場合などは、

必要とされる英語力はさらに低くなるでしょう。

 

「海外勤務」というと、このカテゴリーを想像する方が多いかもしれませんが、

ビザの取得要件の関係もあり、

多くの日本人はこのカテゴリーで仕事をしているように思います。

 

 

非英語圏で日本に興味がある人と働く

想像しやすい例は、日本で外国人と英語で仕事をすることでしょう。

 

この場合、英語が拙くても理解しようと努力してくれること、

最も難しい文化の面で相手から日本に合わせようとしてくれることから、

最も英語力は必要とされないでしょう。

 

 

上記に加えて、仕事内容によっても必要とされる英語力は異なります。

 

例えば、バリュエーションのような数字で語る世界の場合、

必要な英語力は相対的に低いですが、

文化の理解がより重要なコンサルティングのような仕事は難易度が上がりますし、

グローバルで統一された手法がある一方で、

ローカル色を残した監査はその中間と言えそうです。