伊東豊雄+セシル・バルモンド講演会
先日、建築家の伊東豊雄氏と構造家のセシル・バルモンドの
講演会に行ってきました。
伊東氏は今年68歳になられる建築家で、今なお自分のスタイルを
変化し続けている、現在でも建築界の最先端を走っている建築家です。
また構造家のセシル・バルモンド氏は、エンジニアリング集団の
オブ・アラップという会社の現在は副会長をしており、
その数学的な発想は、今までの構造家とは少し違う雰囲気を持っています。
講演会は、各人が30分ずつスライドを使った講演を行い、
その後1時間を二人のディスカッションという形で進みました。
まず最初に講演したバルモンド氏は、得意のアルゴリズムの話をしました。
これまでの建築には、いくつかのパターンがあり、
1.中心を持ちそれを取り囲むように作られる場所
2.グリッドを持つ場所
その後、1の中心の考えが崩れてきて、
3.中心が中央になくずれている場所
4.グリッドがゆがんでいる場所
と変化しています。さらに変化すると、
5.中心がある領域の外にある場所
となります。
ここまでくると、果たして中心と呼べるのか定かではありません。
アルゴリズムとは「問題を解くための効率的手順を定式化した形で表現したもの」
ですが、一番重要なのは何を出発点とするか決めること、とのことでした。
つまりある出発点を定めアルゴリズムを適用すると、
勝手に結果として形が表れてくるためです。
最初のパラメーターを間違えると、まったく違う形になってしまいます。
アルゴリズムを使うと、あたかも結果として表れる形が自動生成されるため、
簡単と思いがちですが、そうであるからこそ、最初の出発点を定める
発想こそが、デザイナーの力量を示すとも言えるのでしょう。
伊東氏は、最近のプロジェクトのスライドを用いながら、
どのようにして自分のイメージを形にしていったのか、
またその過程において、いかにバルモンド氏のアルゴリズムの考え方が、
自分にとって発想の転換となったかを述べていました。
その後の二人のディスカッションでは、「超高層」というテーマで話されました。
例としてあがったのが、中国で竣工したばかりのCCTV新社屋です。
設計は、オランダ人建築家のレム・コールハース氏です。
これは、2本のタワーが上に行くに従い傾いていて、
なおかつ最上部で複数階あるブリッジのようなフロアでつながっています。
これを見て、伊東氏は超高層のあり方が変化したことを感じたと言っていました。
これまでは超高層にとってなるべく高層であることが、一番のセールスポイントであったのが、
CCTVでは高層を売りにするのではなく、「不安定な形」を実現していると。
これまでの超高層建築は、高層であることでシンボル性を作り出していたのが、
不安定な形によってシンボル性を生み出しているというわけです。
このことによって、これまで建築家の出番が少なかった超高層建築にも、
建築家がやるべきテーマが出てきたということだと思います。
この「不安定な形」という言葉が、二人の共通のテーマであるように思いました。
二人ともアルゴリズムなどを用いて、植物のような曲面ばかりの建築をデザインしています。
これは、今までと違い、建築もより自然に近づく方法を模索しているからです。
しかし自然(例えば植物)のような、曲線ばかりの形を建築に置き換え実現しても、
最終的には、平らな床とまっすぐな壁が人間の生活には必要になります。
伊東氏は、「建築とは自然のかなに秩序を生み出すこと」と定義しておりましたが、
植物のような自由な建築を模索すればするほど、水平垂直というこれまでの建築の
テーマが再度浮かび上がってくると言っていました。
講演の内容は、お互いの最近の興味を話していたため、
はっきりとしたテーマが見えにくかったとも思いますが、
共通しているのは、「不安定な形をいかに実現するか、またそこに表れる秩序」
について興味がある、ということです。
人間は何千年も自然と共存しながら、自分たちの住む場所を作ってきました。
その中で柱を立て屋根をかけるという、最も簡単な行為から建築が始まっています。
そこでも意識されていた水平垂直という概念が、現代でも重要なテーマとして
再度表れてくることは、非常に興味深かったです。
講演会が終わり会場を出るときに、私の前を歩いていた人が、
「伊東さんのスライドで最初に出てきたころの建築は理解できたけど、
途中の曲面だけで出来たオペラハウスあたりから理解出来なかった」
と言っていました。
水平垂直面がないというだけで、人間は空間を把握できなくなることを
よく表している言葉だと思いました。
