北沢陶『をんごく』(角川ホラー文庫)を読了。
大正末期の大阪を舞台にした哀しく切ないホラー。
初めて読む作家だったが、横溝正史ミステリ&ホラー大賞<大賞><読者賞><カクヨム賞>をトリプル受賞した作品ということで、期待大で臨んだ。
個人的に、恒川光太郎『夜市』を読んだときに似た感動を覚える読書となった。
愛する妻を若くして亡くすもその死を受け入れられず、巫女のもとを訪れた壮一郎だったが、なぜか降霊は失敗してしまう。巫女は「奥さんな、去んではらへんかもしれへん、気をつけなはれな」と壮一郎に警告する。すると家の中に異形となった亡き妻の気配を感じ始め、その姿を探る最中、死んだことに気づかない霊だけを喰う顔のない男エリマキと出会う。壮一郎はエリマキとともに妻の霊を追うことに。
異形の者と対峙するホラー小説としての恐怖はもちろんあるのだが、それ以上に、「愛する者の死とどう向き合っていくのか」という哀しく切ないストーリー展開が非常に良かった。そして、妻が異形となってしまったのにはある忌まわしい原因が絡んでいたことが明らかとなる、いわゆる因習ホラー的な要素もあり、しかも因習ホラーの大半を占める田舎などの限界集落ではなく大阪の商人の町の秘密というところがまた素晴らしい。
壮一郎と行動を共にするエリマキの存在もまた魅力的。人の魂を喰う化け物ではあるが壮一郎の協力者として、掴みどころのないようで人情味も垣間見えるキャラクター。そして彼にも、彼自身忘れていた秘密があり、その正体は一体何なのかを予想しながら読むのも楽しかった。



