不思議な体験③

20代前半の冬です。


深夜、神奈川県を車で走っていました。

40代の運転手、
助手席に私、
後部座席に女性Aさんが横になっていました。

民家の無い、長い長い直線1本道には街灯はあまりなく、
私達のヘッドライトだけが真っ暗な道を照らしていました。

遠くに、とても明るい灯りが見えます。
ビルの明かりか街灯か、と思っていました。

仕事仲間の40代の運転手とは仕事以外の話はしません。
後部座席の女性は横になっており、眠っているかもしれない。
運転手と私は無言のまま真っ暗な道をただ前を見ていました。

長い直線道路の向こうには、さっきからずっと真っ白い光が見えます。
街灯か何かだと思っていたのですが、なかなか近づきません、
同じ位置に、同じ明るさで、まるで一緒に進んでいるように、光との差は縮まりません。
真っ白い光はずっと同じ位置にあります。


しかし少しずつ近づいています。
少しずつ光が大きくなっていきます。
それはどんどん眩しくなっていきます。
街灯でもなければビルでもありません。

街灯もあまり無い真っ暗な世界で、真っ白い何かの光が前方の斜め上にあるように見えます。
飛行機かな?

遠くまで真っ直ぐ伸びている長い長い1本道を、
私達の車は時速70~80キロくらいだったでしょうか。
白い光は同じくらいの速さで、しかし私たちのほうが少し速く、
少しずつ近づきます。

少し向こうの斜め上に、つまり空中に、相変わらずものすごく明るい白い光があるのですが、運転手にも間違いなく見えているのですが、話題にすることもなく、無言のままです。


あれは何なのだろう。私は助手席から光を見つめていました。

街灯の少ない山道の真っ暗な空の、低い位置に、何やら電気が浮かんいて、私達と同じ速さで同じ方向に進んでいるように見えるのです。

数分後、ついに私たちの距離が縮まります。
ほぼ同じスピードで、しかし私たちのほうが若干速く、数分後には追いつくよ、って感じです。

遠くに見えていた白い光がどんどん近くなっていきます。

それは眩しい白い光を出しながら飛んでいる、とても大きな平面でした。
見えているのは底の平面なので
上部の姿は分かりません。
真っ暗の中、板の下面から下に向かって光が出ていて、上部は全く見えません。

私たちは斜め下から斜め上のそれを見ながら、ほぼ同じ速度で一緒に走っています。

一枚の平たい底板にビッシリと、ものすごい数の電球のようなものが付いています。
斜め下から、車の助手席から、斜め上に浮かぶ板に付いているものすごく明るく白く光る大量の電球を見ています。

そんな異常な光景なのに、私も運転手も無言のままです。
口に出そうという気が全くないままです。

普通なら「何あれ?あれは何なの?UFOじゃないの???」と大騒ぎする異常事態ですけど、ソレについて全く触れる気にならない。
なぜか「異常」を全く感じないのです。
ただ、ぼんやりと光を見ていました。

そしてついに私たちは追いつきました。
私達の車のすぐ斜め上にいます。
私達が追い付いて、抜かそうとしています。

真上に来たそれはものすごく大きな板でした。民家くらいの大きさです。
そして、ものすごく低い!!!!
なんと、すぐそこにあるのです。
もっとずっと上のほうにあると思っていた光は、
車のすぐ上に、その間1mも離れていない、
スレッスレを、ゆっくりと、車をかすめて、車の真上を後ろへ過ぎていきました。
私達の車が時速70キロならあちらは時速65キロ、って感じ、
ゆっくりと距離を縮めて、
ついに私たちが追い付いてそして追い抜いていく。

私達が光の板のすぐ下をゆーーっくりと追い抜くのです。

空中に浮かんでいる巨大な板は、まばゆい光を真下に出しながら、全くの無音で私たちの日産ガゼールをかすめます。
エンジン音とか風を切る音とかは、全く聞こえません。
冬だったので窓を閉めていますが多少の音は聞こえるはずです。
しかし無音です。
上から降り注ぐものすごい光はハッキリと見え続けています。
大きな玉や小さな玉、玉でない形も、白い光を出す電球?がビッシリと貼りついている平面の巨大な板です。
光の色は白のみで、キラキラピカピカと光り輝いています。
すぐそこにあるので、電球のひとつひとつがハッキリと見えます。
数えられない膨大な数なのですが、1、2、3、4、と数えることも出来る距離です。
なぜこれが空中に浮いているのか?

私達は無言のまま、驚きの声を上げることもなく、何の感情もない、急ブレーキをかけることも止まることもなく、光の板よりも少し速いスピードで、光の下をゆっくりと過ぎ、光の板は私たちの車をかすめる位置で、ものすごい光を出しながらフロントガラスから後方に見えなくなりました。車の中に光が入り、光が後ろへ動き、そしてついに抜かし切った車の前方は闇のみです。


その時、運転手が初めて口を開きました。
「今の、何だったんだろうね」
口ぶりは冷静で無感情です。
私も不思議と全く気にならなかったので無感情のまま
「何だったんでしょうね」
と言った時に、後部座席の彼女が寝たまま、
「え?何?」と言ったので
運転手と私が
「UFOだと思う」
と言うと飛び起きて、
「えーーーーーー!!何で教えてくれないの??」
そこで初めて車を停め、外へ出ました。

しかし、真っ暗な闇に私たちのみ。

つい数秒前まで私たちにずっとくっついていた光は全くありませんでした。
あのタイミングなら私たちが車を停めたら光の板が今度私達を追い抜く、
もしくはまだ後方に時速60~70キロ程度の速さで浮かんでこちら方向へ進んでいるはずなのです。

遠くの方にずっと見えていて、
ずっと見えていて、少しづつ追い付いて、
そしてついに追いついて、抜かした。
すっと一緒にいたのに、抜かした途端に消えた。
もう全く何も無かった。
無音の闇のみ。

その後も私と運転手が全く興奮もせず、話題にもせず、無反応だったことは不思議でした。
ひとり、後部座席の彼女だけが「起こしてくれれば良かったのに!見たかった!」と、いつまでもギャンギャン言っていました。

その後も、その光について運転手と私が話題にすることは全くありませんでした。何も無かったような感覚なのです。

その後35年以上経ちますが、この話はごく数人の人にしか話していません。
話す気持ちに全くならないのです。
後部座席の彼女は亡くなりました。
運転手は健在ですが会うことはありません。
もし会ったら「あの時のアレ、何だったんだろうね」と話題に上るかもしれませんが、もう会うことはありません。

車で高速で走っていながら、斜め上に浮かぶ巨大な板の、ものすごく眩しい膨大な光を、斜め下からずっと見ていて、そして車の真上を、窓をあけたら触れそうな位置で、接触するほどすぐ上を、ゆっくりとかすめていって消えた光の話でした。

似た画像を。

スティーブン・スピルバーグ

映画「未知との遭遇」