以前にもちらりと書いたような記憶があるが、このところ、20代から30代の経営者や起業家に会うチャンスがたびたびあり、毎回、「ああ、時代は変わりつつある」ということを実感している。


 否定しているのではない。悪い意味でもない。「この先、何が起こるかわからない」ということは震災で十二分に体感した。だからこそ、衒いなく、裏もなく、自らの事業を明快に話すことが出来る若者たちが着実に増えていることを嬉しいと思う。


 何が「変わりつつあるのか」といえば、「ビジネスの進め方」である。「交渉ごと」と言うべきだろうか。大手企業のビジネスマンの大半が、「交渉先より優位に立つ」という時には脅迫まがいの方法で取引を進めてきた。「買う」立場はより強く、「売る」立場やより弱く、という高度成長期に強引に強化されたこの方法を好まない経営者が出てきたし、相手を尊重しながら自らも利益を得るというやり方を率先する人を近頃、散見するようになってきた。


 こんなことは実は当たり前の話で、一見、遠回りに見えるかもしれないが、回りをよくすることで最終的には自らにプロフィットをもたらすということが、バブル崩壊後、忘れさられてきた感がある。

 だが、「有益な遠回り」をやり遂げようという新世代のビジネスマンが登場しつつあることを大いに歓迎しよう。この兆候が震災後に増えたと感じるのは気のせいか・・・大きな犠牲を払った震災は、また新たな社会構造を生み出す大きな転機になっているのだと、今こそ信じたい。