gakunohana さんがgakunohana さんの春友さんによる神楽面工房 天岩戸木彫 工藤省悟様へのインタビューの模様を届けてくださいました。

5月15~20日、日本橋高島屋で開催された「日本の伝統展」に、「日本製」関連では、和ろうそくの大與さんと、神楽面工房・天岩戸木彫さんが参加されました。
gakunohana さんの親しい春友さんが、神楽面の工藤省悟さんに15分のインタビューをすることができ、録音を文字に起こしたものを、メールでgakunohana さんに送ってくださいました。それをgakunohana さんが編集して届けてくださいました。

拡散を希望されています。
もし、ブログやX、インスタをやっている方は、ご遠慮なくリブログしてください。

臨場感あふれるインタビューの模様をお楽しみください。
gakunohana さんの春友さん、そしてgakunohana さん、素敵なインタビューをシェアしていただきありがとうございます。

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問1 

神楽面の材料の木について、教えてください。木の種類、工藤さんの材料選びのポイントなど。また、仕入れは安定しているのでしょうか?
※参照:大子の楮 

【工藤さん】 
神楽面の材料の木は、楠(クスノキ)です。白木、材料は安定している。楠は、宮崎県は、質とか、量とかが、良い。仕入れてから、すぐ使うのではなく、乾燥で 3~4 年寝かせることで、計画的に仕入れてるから、全然困らない。材木屋さん、銘木と言うのですけど、今は昔と比べて手に入りにくいかも知れない。そっちの人達は苦労すると思うけど、うちは、楠と、桐だから。桐は、もう、全国的にあるので、材は困ることはないです。漆(うるし)だったりすると、98~99%は、中国製なんです。1%しか流通してないので、モノによっては、原材料が確保できないことがあるかもしれないけどね。うちに関しては、今のところ全然 問題はないです。

問2 
能面と神楽面の違いを教えてください 。

【工藤さん】
簡単に言うと、能で使えば能面、雅楽で使えば雅楽面、伎楽で使えば伎楽面。 神楽で使うので、神楽面であって、作る工程としては そんなに変わらないですね。 神楽というのは、神様のお面で、能とかだと役のお面だったり……という、文化的な違い。それを取り扱う人達の違いではないかと思う。

問3
神楽面は、どういう思いの方が手元に置きたいと考えて購入されていくのですか? 

【工藤さん】
お面にも色々な神様がいて、男面(手力雄命:たぢからおのみこと)は、力とスポーツの神様。地元では、開運とか魔除けのお守りですね。家の中に飾って、神棚みたいな感じ。ご利益があるみたいで、地元では高いところ に飾っています。 女面(天鈿女命:あめのうずめのみこと)は、芸能、舞踊の神様なので、芸能とか舞踊とかする方が、ご利益がありますように!と飾るようですよね。

問4 
芸能の神様の天細女命(あめのうずめのみこと)の事をこのようにコメントしていた春馬くんの 事をどう思われたのか、教えてください。

『なぜこんなにも表情のない神楽面が、芸事の神様として存在しているのかを考えずにはいられませんでした。省悟さんが天鈿女命のお面を作るには、相当な経験値と、お父様の許しがないと作れないそうです。それ程繊細な仕事が求められ、微細に彫り進めていく過程が、時に微妙な表情の変化を求められる俳優にも通じるんじゃないかと思ってしまいました。いや、思いたかったのかも……。』(春馬)

【工藤さん】
8年前ですからね~  春馬さんが、どう思ったのか? ちゃんと自分なりに解釈して、こう、思ったことを素直に書いてもらったんだなあ…… ぐらいの感じでした。そう言っても、やはり、この記事が出ること自体、一緒に写っている写真とか出て、取材してもらったことで、特にこの時はすでに有名だったから、まあ 親戚一同 舞い上がって 「載ってる!載ってる!」って感じでしたけどね。どっちかと言うとね。内容よりも、「ほら ほら ほら」と。それからゆっくり内容とかを見たって感じですよね。

問5
工藤省悟さん略歴が、「日本製」では、3 代目とありますが、4 代目の間違いでしょうか?

【工藤さん】
初代の曾祖父、ひいおじいちゃん(工藤伊太郎)が、地元の神楽面の大会で優勝して、祖父ちゃん(工藤正任)が、見て自分も彫れると思ったらしくて、38 歳までは土木の会社に働いていたが、38 で脱サラして工房を立ち上げた。商標登録みたいな感じで、書類上は初代がじいちゃんになるから、僕は3代目になってるけど、曾祖父のひいじいちゃんもやってたから、僕は、4 代目、と言っている。 3代目であろうが、4 代目であろうが、そんなに拘りはない。
取材の時は、書類上は3代目、と言っているんです。ひいじいちゃんを数えるか?数えないか?の違いで、僕は数えるほうです。親父も、どっちかと言うと、僕と一緒ですね。祖父ちゃんが立ち上げたから、やはり祖父ちゃんは、自分が初代で僕を3代目と言ってるけど。どっちでも良い。

余談 (先日、私が趣味の勉強のために矢来能楽堂に行ったときの話をすると……)
【工藤さん】
能楽堂もけっこう色々あるみたいですね。この前、銀座で2月にやった時も、能楽堂を何軒か見かけましたね。歌舞伎とか舞台とかあるように、能は貴族のたしなみで、能楽堂があるのかも知れないけど……神楽というのは、五穀豊穣を願ってする農民のお祭り。毎年、当番制になるのですが、一軒一軒、神楽の舞台を廻していくんですよ。 地元の民家で、お祭りの前の日とか、当日に、即席で舞台を作るんですよね。うちの地元では、今年は、この家でやる!というのがあるので、基本的には固定で。ある場所では、神社の神楽殿のところとか、毎日神楽を見せる神社なんかもあるけど、本格的な夜神楽と言って、夜を徹して舞うのは、毎年、民家を廻って舞台を作ってやる。 そこは、村で協力しあってやる。100年とか前は、やっていたけど、やっぱり高齢化してきて、「うちでは持たないから。別の場所でやってくれないか?」と、どんどん変わってきてますね。コロナもあって、まだ、夜やるやつ(夜神楽)は復活してなかったりとかするんですけど。どうしても、自分達だけではまかないきれないって風になっていて……。こんな感じですね。

※参照 大子の楮
「日本製」の美濃和紙の取材にもありますが、美濃和紙の原料には茨城県大子町の那須楮が使われています。しかし、外国産の安価な楮が大量に輸入されるようになり、那須楮を含む国産楮の栽培は減少の一途をたどっています。栽培農家の高齢化も進んで、那須楮の生産は今、とても厳しい状況です。春馬さんはこのようなことも踏まえて、伝統産業をいかに元気にして継承していけるのかも考えていたのではないかと思います。

今回は、神楽面についての理解を深めたいと思い、工藤さんに質問をさせていただきました。工藤さんは春馬さんに似て、とても真面目な好青年、自分を飾ることなく、真摯に答えて下さいました。春馬さんを見た気がしました。
このインタビューで、工藤さんのお人柄と、神楽面の素晴らしさを、少しでも伝えられたら幸いです。