人通りの少ない七条大橋の橋の上
小さな鞄を肩から下げ、パンパンになった大きくて丈夫なショップ袋を持った女の子たちがみえる。夏の匂いのする川に架かった橋の上で、なんてことないことをおしゃべりしながらゆっくりと歩く。
彼女たちにはなんら関係のない私は、彼女たちよりも随分とはやく歩く。追いつく。
橋の上の歩道はせまいので、ゆとりを持って並んだ2人のいるところの隙間は通れない。
だけれども私には私の歩いてきたリズムというのがあるので、それを落とすのはなかなかに難しく、ずんずんと彼女たちの背中に近づいてしまう。右手側の彼女が私に気づく。
「あっ、すみません」
「あ、や…すみません」
彼女たちの会話が止まり、私と右手側の彼女の会話がうまれる。ただその先に言葉が続くことはなく、私は彼女たちを追い抜いて歩き続ける。彼女たちの声が聞こえなくなる。遠くのほうで、川を横断するように走っていく電車がみえた。
夏の匂いがする。夏の声もする。
真夏の夜もこんなに涼しければいいのに、なんて都合のいいことを思う。
橋を渡り終え、飲食店や古いビルの並ぶ通りに辿り着く。コンビニがある。ドアが開くとこの夜にはどうにも明るすぎる光とともに涼しい風が流れ出てくる。
それに流し出されるように、コンビニ袋を提げた女の人が出てきた。
私は彼女の後ろを歩く。コンビニ袋を提げた女の人は、灰色のTシャツと金色の文字が少しだけ入ったスウェットを身に纏い、灰色のよれっとしたクロックスを履いている。金髪の長い髪によく似合う。煙草を吸ってそうだな、マルボロか、ピースか、赤いラークか。なんてことを考えていたらいい匂いがした。香水のようなつんとするものではなくて。柔軟剤とかシャンプーとかそういう感じの。どきりとした。
歩き煙草もせず、よれよれのものを身につけていてもしゃんとした綺麗な歩き方をする綺麗な後ろ姿。綺麗な胴ライン。かっこいいお姉さんだな……素直にそう思った。途端に泣きたくなった。どうしてだかわからないけれど。人は、他人に憧れを抱いた時、涙を流したりするものなのだろうか。
勝手にそんなことを考えていたらお姉さんは道沿いのマンションに入って行ってしまったし、渡るべき信号が青になってしまった。走って渡る。
渡った先にはバス停がある。
バス停の前に2人の人影。どうやらカップルらしい。女が「温泉じゃないじゃん〜〜!」と叫んでいる。男がなだめるようになにか言っている。私はその横を通り過ぎていく。通り過ぎても尚、女の「やだ〜〜〜!」という声が聞こえる。宿泊予定の宿が『温泉付き』と謳いながらも銭湯のような風呂場だったのだろうか。見かけがそれでもお湯が温泉ならば温泉付きに間違いはない。女の声が聞こえないほど歩いて来てしまった。
なんの変哲もない日常のなかの、火曜日という平日の夜。どうしてだか他人の生きているドラマが妙に面白く感じた、そんな京都の初夏の夜。
2019.06.04