グリップ素材に関する考察。コルク or EVA編 | 紀ノ国発→全国行!! もっくんのGANGAN BASSツアー

グリップ素材に関する考察。コルク or EVA編

現在はカーボン素材のものまで登場してきましたが、一般的に流通しているバスロッドのグリップ素材といえばコルクEVA
そしてカスタムロッドを製作する上で永遠のテーマ(?)となるのは「コルクorEVA、結局どっちがいいの?」という悩み。

今回はこれについて僕なりの考察を書いてみたいと思います。



まず最初に勘違いされてるなぁ~と思うこと。


「コルク=EVAより感度がイイ」
これはない!(笑)
いや、たぶん理論上は確かにそうでしょう。でも実際にコルクとEVAの感度差を感じ取ることはかなり困難だと思います。
特に雑誌等では「コルクは内部気泡に空気を含んでいるため~(だから感度が良い)」などと書かれていますが、実際はEVAのほうがよっぽど多く空気を内包しています。なんてったって発泡素材ですからね、ほとんど空気です(笑)
結局、コルクのほうが(理論上)ごくわずかに感度が良いというのは、単に素材が軽く硬いからでしょう。
でも前述したように、それによって釣果を左右するほどの感度差などありません。僕個人的には、コルクとEVAで感度差を明確に感じたことはありませんねぇ。。。
もっと言えば、バスロッドにおいてもっとも感度を手に伝える部分はコルクやEVAの部分ではなくリールシート部ですからね。(さらに言えば、実は一番振動を大きく伝えるのはエンドキャップ部分だったりします)
ぶっちゃけ、感度のことを気にしてコルクかEVAかを悩むくらいなら、見直すべきところは他にいくらでもあります(笑)
例えば工法・内部アーバーやリールシート、グリップ長さ(重量バランス)を変えるほうがよっぽど明確に感度が変化します・・・・。


「EVA=コルクより耐久性が高い」
これも非常に微妙なところです。
確かに一般的なバスロッドに使われるコルクは使用とともにボロボロと欠け(パテ剥がれ)が生じていき、またメンテナンスや使用方法によっては痩せてきたり波打ったりしてしまいます。また、たった1日使っただけでもけっこう黒ずんだりしてしまいます。
逆にEVAはどんな使い方をしてもそのような劣化は起きにくいと言えます。
しかし! コルクにはいくらでも補修が可能という特性があります。
わずかな陥没やパテ剥がれはコルクパテでの補修で難なく、仮に親指の爪ほどある穴が空いたとしてもコルクをツギハギすることで直せてしまいます。
しかしながらEVAは、強くぶつけて大きく凹んでしまったり、ラインの摩擦やイバラ等に引っ掻いて深い溝が入ってしまったり、ましてや欠けてしまったりすると元通り修復することは実質不可能です。
つまり、コルクは修理が容易で壊れてからが強くEVAは壊れにくいが一度壊れると修理がほぼできないという性質があるのです。
このため、どちらが強いのかと言われるとなんとも言えず、何をもって「強い」と判断するのは結局は個々の主観次第ですね。

ちなみにですが、高級フライロッドに使われるような超ハイグレードなコルクを使用するなら、絶対にEVAよりもコルクのほうが耐久性が高いです。
そもそもコルクが欠損や肉痩せを生じるのはグレードの低さ故のパテ剥がれや、中の気泡や節が大きすぎる等が原因なので、パテ処理など必要のない中身のぎっしり詰まった超ハイグレードなコルクだとそういった現象はほぼ起きないのです。

15.5.14-一般的なコルク
15.2.15-コルク

近年のコルクの質の低下は我々ロッドビルダーの悩みの種の1つ。
デジーノ神谷さんも「コルクの仕入れ先だけは未だに悩んでいる」と言っていました。ちなみにデジーノ神谷さん曰く「実は一番質が悪いのは国産コルク」だそうです。
現在一般的にバスロッド向けに販売されているコルクは、新品状態だとコルク業者によってパテ埋めがなされていますが、旋盤で削っているとそのパテが剥がれたり下から新たな穴が出現したりで【写真左】のようになります。
コルクという素材は多孔質なので内部に大きな気泡(大豆くらいの)があることもあり、そういう部分が薄皮1枚でふさがっている状態だと外見上は見つけることができず、使用中にボコっと陥没を起こしてその下から大穴が生まれる・・・・なんてことも起きる場合があります。
しかしながら、この写真のコルクは自分で再度パテ埋めすれば使えるレベルなのでまだ全然マシなほうです。ヒドイものだともはや使いものにならないくらいスカスカになってしまい、パテ埋めどころではなくなってしまいます。特に●●●のコルクはそういうのが多いなぁ~(爆)
しかしこれが高級フライロッドに使うような超ハイグレードコルクだと【写真右】を見ての通り、削ってもほとんど穴が生じないのです。断面部分を見ても、気泡はもちろん節すらほとんど存在していないのが見て取れるでしょう。
このコルク、約10年前に流通していたもののデッドストック品で、実際に僕が仕入れて自分のロッドに使ったコルクです。
これだけハイグレードのコルクは加工性・使用感ともにマジで最高でした。しかしそのロッドは結局友人に売っちゃいましたけど(笑) できるならコルク部分だけは売りたくなかった(笑)



のっけから本題から脱線してしまいました・・・・。
さて、では僕がそれぞれの素材に対して思うメリット・デメリットを書いてみたいと思います。

コルクのメリット
・EVAよりも軽い
・手触りが良い (寒くても冷たくなったりしない)
・ウェット時(雨天)に滑りにくくなる
・天然素材故の高級感ある見た目
・いくらでも補修が可能

コルクのデメリット
・雨の日に使用するとパテ剥がれが生じる
・使っていると黒ずんでくる
・経年変化で波打ち・肉痩せが生じる場合がある
・加工性が悪い (パテ埋めが必要、硬い部分・柔らかい部分があるので均一に削りにくい etc...)
・天然素材故の品質のバラつき
・値段が高い (EVAの約1.5~7倍!)

EVAのメリット
・どんな天候状況でも比較的性能が安定している (雨に濡れてもなんら問題ない)
・独特の見た目 (黒だけでなく、いろんな色がある)
・加工性が良い (パテ埋め等が不要、均一に削るのが容易)
・人口素材故に品質が均一
・値段が安い

EVAのデメリット
・コルクより重い
・使っているとテカってくる
・無機質な見た目
・壊れると補修がほぼできない

まぁこんな感じでしょうか。
個人的にコルクの一番のメリットだと感じるのは「EVAより軽い」ということだと思います。握る部分よりもティップ側に配置される素材は、トータルバランス上軽ければ軽いほど良いです。
逆にコルクの一番のデメリット「高価である」ということだと思います。そしてこのデメリットは「雨の日のパテ剥がれ」「経年変化での波打ち・肉痩せ」「品質のバラつき」などと相まってさらに相対的な高価さを強調してしまいます。
ではEVAの一番のメリットはと言うと「どんな天候状況でも性能が安定している(特に、雨に強い)」だと思います。ドシャ降りの雨の日にコルクのグリップを使用すると、コルクの品質によってはそれはもう悲惨な状況になり、神経質な人はそれが気になって釣りどころではなくなります(笑) またその使用後のメンテを怠ってしまうと、まだおろし立て数ヶ月程度しか経っていなくとも波打ちや痩せが生じる場合だってあります。
ただ、コルクは雨の日には滑りにくくなる性質もありますので、性能的には雨に良いのですが・・・・。しかし逆に雪が降るほど寒い状況だと、人間の手が乾燥してしまって逆にコルクは滑りやすくなる場合があります。
こういった点において、EVAはどんなに暑かろうが寒かろうが、常にいつも変わらない使用感を発揮します。
最後にEVAの一番のデメリットは・・・・悩むところですが「壊れると補修ができない」かなぁと思います。「コルクより重い」も大きいですけどね。


こういった点を踏まえて、僕がバスロッドにおいて理想だと思うコルク・EVAの配置はこんな感じです。

15.5.21-グリップサンプル←やはり基本的にはセパレートグリップ、というかデジーノ・レーシンググリップは現代バスロッド用グリップの完成形の1つですね。ご存じの通り、デジーノ公認でジェノクロスロッドにも採用しています。そしてその素材配置は写真の通り、フォア部&センター部にはコルクリア部のみEVAという配置が僕のもっとも理想とするグリップの姿です。ただしコルクはパテ埋めの手間がかかったり素材自体が高価だったりの理由により、ジェノクロスではフォア部はEVAが標準(コルクはオプション設定)としておりますのでご注意を。フォア部コルク仕様OPには+1,000円いただいています。

神谷氏が提唱するデジーノ・レーシンググリップのコンセプトは「素材が軽いコルクを重心に配置し、素材が重いEVAは重心より離れた位置に配置してバランスをコントロールする」というものです。今ではけっこう有名な理論になりましたね。
センターグリップ、リアグリップの素材配置に関してはその理論がそのまま僕の意見でもあるので、ジェノクロスもそうしています。

しかしフォアグリップに関してだけはちょっと僕独自の理論があり、実用性を最優先にするのであれば、ジェノクロスではフォアグリップにはコルクを推奨しています。
1つの理由は、前述したように素材が軽量故のバランス性です。
しかしもう1つ理由があり、それはライン傷、ルアーによる当て傷・引掻き傷の問題です。
そもそも僕はフォアグリップレスのグリップスタイルを推奨していません。フォアグリップはリールにルアーを引っ掛けて移動する際、ルアーのフックやスピナベ・バスベイトのブレードによりブランクに傷がつくのを防ぐ役割があるので、最小限の大きさでも必要だと思っています。
そう考えた際、EVAフォアグリップだとそれらの傷がEVAに残ってしまいます。
フックでついた引っかき傷はもちろん、一番致命的なのはラインが強く擦れてできた溝傷です。EVAはラインが強く擦れると摩擦で切れてしまい、深い溝状の傷が残ります。そしてこれは直せません。その部位を強くこねるとわかりにくくはなったりしますが・・・・。
しかしこれがコルクだと限りなく起きにくいです。万が一フックで引掻いて欠けてしまっても、前述のようにコルクパテで補修できます。
だから、できるならフォアグリップにはコルクを使用したいところです。
でもコルクは前述のように何かと手間なので、なかなか標準的に使用することは叶っていません。。。

またロッド構成・性能的にもフォアグリップがあったほうが何かと有利な部分が多いと考えています。でもこれは企業秘密ですのでこれ以上言いません(笑)
逆にフォアグリップレスのメリットは何と言っても組み上げの手軽さとコストダウン、そして最新鋭なデザイン性でしょう。デザイン的には僕はあんまり好きではありませんが・・・・。
ちなみによくフォアグリップレスによってブランクに直接指が触れるので感度が向上、などと言われますがはっきり言ってそんな効果はありません。


ちなみに決してオールEVAグリップが悪いと思っているわけではないので、こんなんも作って使ってます。

Ver,BK←ジェノクロス・ブラックシリーズ・・・・?的な(笑)、オールEVAのデジーノ・レーシンググリップです。写真ではグリップ単体ですが、すでに組み上げてフィールドで使ってます。先日からの紀ノ川釣行で使っているロッドですね。実はジェノクロス的にはこれは雨天時仕様のグリップです。前述したように雨天時はコルクにパテ剥がれが生じ、けっこう神経質な僕にはそれがガマンならないので(笑)、これからの雨が多い時期用に製作したのがこれってワケです。そして実際に使ってみるとこれはこれでけっこう武骨なカッコ良さがある。コルクよりも精度が良いのでビルダー的には楽ですし(笑)


最後にEVAの話題になったところで、ワンポイントアドバイス。


【番外編①:EVAの修理方法】

先ほど「EVAは傷がつくと直せない」と書きましたが、実は傷の程度によっては直せる場合もあります。
あまり知られていないので、ここでご紹介しようと思います。

・・・・というか、文字で書けば超簡単です。
ドライヤーで傷部分を温めるだけ、それだけです。
前述したように、EVAは発泡素材で気泡の中は空気なので、暖めて中の空気を膨張させてやると元の形状に戻る性質があるのです。
ただしこれはあくまで、ぶつけてちょっと凹んでしまった、ラインに軽く擦れて少しだけ溝ができた、フック先が少しだけ刺さって小穴が空いた、程度の傷のみ有効な方法です。
思いっきり凹んだり、完全に繊維が切れた溝傷ができたり、欠損やボッコリ穴があいたものはさすがに物理的に無理です。
また、暖め過ぎるとEVAが焦げてしまったり縮んでしまったりして取り返しのつかないことになるので、多少の経験も必要ではあります。様子を見ながら行ないましょう。

「EVAにラインを擦ってしまって傷ができたけど、ほっといたら直ってた」という現象を経験した人も多いと思いますが、車の中などに放置されている間に勝手にこのドライヤーでの修理方法と同じ理屈の現象が起きていたということです。


【番外編②:EVAのテカリ除去方法】

よく「コルクは黒ずむけど、EVAもテカるから嫌だ」という人がいます。
そういうあなた、手が汚れています(笑)

実はEVAのテカリの原因はEVA繊維に詰まった人間の皮脂、つまり手垢なんです。
なので僕のようにフィッシンググローブをして釣りをする人やあまり汗をかかない人の場合、あまりテカりが生じません。
逆に言うとEVAに付着した手垢を落としてあげればテカりはずいぶん元に戻せます。
ちなみに言うまでもなくコルクの黒ずみも手垢です。
つまりコルクの黒ずみとEVAのテカりは結局同じものです。
なので洗剤などを使ってクリーニングしてあげるとそれらはずいぶんとマシになります。

一番良いのはエバーグリーンさんなどから発売されているマルチクリーナーみたいな、天然素材の洗剤がオススメです。
ただしコルクの場合はあまり頻繁にゴシゴシするとどんどんパテが剥がれていくので、コルクはクリーニング後に再度パテ盛りをするのが良いでしょう。コルクパテはジャストエース社のものがオススメです。ホームセンターで売ってる木パテは絶対にやめた方がいいですよ。
僕は月1回くらいはこういうクリーニングをしてます。だから僕のロッドはどれもグリップがきれいです。



いかがでしたでしょうか。
まぁ本題の「コルクorEVA、結局どっちがいいの?」という問いに関しては、僕なりの結論は書きましたが、当たり前ですが最終的に選ぶのはユーザーご本人です。
正式にご案内できていませんが、ジェノクロスでもすでにグリップの素材をどちらでも選べるようにしております。(新品ロッドもしくはオーダー製作の場合に限ります)

コルクかEVAか悩んだら、このブログを参考にしてみてください。