『空の色は…』 | ~From.裕~

『空の色は…』

偶然を装ってかどうかは解らないが茜は藤本と何度となく会った。
たわいも無い会話とお茶。
気の合う楽しい時間を過ごし、何となく季節が過ぎる中、藤本に惹かれていたのも事実だった。そんな人だったからこそ本当の自分に嘘を付いてはいけない。でも断る理由にも気持ちの嘘が付けないと思い、昂太を彼氏に見立てた。
『慣れたもんだよな…中学から何回彼氏になった?時にはヒーローのようにピンチに駆け付け悪を退治ってなッ!昂太君』
回して来た腕を欝陶しい顔で受け
『面白がって後押ししてたのは誰だよ。調子乗せるからアイツまでその気になって…』
『大切な姉ちゃんを性も無い男や質の悪い男から守れたんだからいいじゃねぇか。他にも色々騒ぎ起こしてくれましたよね君の姉上は』
毎回3歳下のガキ扱いの自分が何処まで信じて貰えるか、何処まで太刀打ち出来るか、そして何故か強気な茜に半端なく緊張していた。
あの強気は何処から湧き出るのか本気で解っていないのか、それとも照れ隠しのポーカーフェイスか
『藤本さんにどんな風に話したんですか?弟だってばれなかったんですよね。まさかやり合ったとか』
『そう!一人の女を巡り男二人体を張り拳を交わし、やがて切れた唇に当て紅く染めた拳が交差、まるでジョーと力石のように』
『あの藤本さんが~』
蒼井までが乗り出したのが可笑しくて必死で笑いを抑える晃のイタズラ。
二人は良いカモなのだ。
『ばぁか…そんな訳ねぇだろ。あの人は至って大人の男だったよ…そんな顔しても話さねぇよ!言っとくがコイツの話しを鵜呑みにして信じるなよ。からかわれてるのいい加減学習しろ』
どうしても晃に最後は信じさせられてしまう事を反省するが、仔犬と同じで相手されると不信感忘れ乗ってしまう可愛い後輩なのだ。
確かに藤本と会った時は一番緊張、いや恐怖心があった。
今までの男とは違う強い覚悟のような物を感じ、茜もいつでもより想いが揺れ不安を抱えているような気がしていた。
藤本に本当は惹かれている…
言葉にしない茜の様子がいつもにない不安を昂太に抱かせ、そんな想いが一瞬、本気で向き合わせたのかも知れない。
気付けば24時を回り店内は他の客は居なく静かになっていた。