ほたる(そして明日へ)
『中に入っている紙を見てくれる…もしかして裕紀君が』
ゆっくり紐を緩め小さく折られたノートの切れ端のような紙を出した。
「つらいのも、頑張っているのもお前だけじゃないんだからな
わかっていても
頑張れしか言えなくて
なんにも手伝えなくて
つらくても頑張って応援してんだからな。
だから頑張れよ
待ってるからな 新田より」
『まともな紙に書けないのかね』
『確かにあなたの字ね。小学校…4、5年生の頃かな?』
『へぇ~こんな字書いてたんだ
俺の』
『比べるの悪いわよ。男の子にしては綺麗な字。性格が出るのよね』
『本当よね。性格出るのよね』『まるで俺が、字の汚い雑な性格って』
『そんなに卑下しないの。あなたも性格は良い子よ』
『性格はね』
『あ、ありがとう…でもなんか引っ掛かる…』
俺の両側から覗き込み言いたいことを言ってくれる事
『お前は勝手に引っ掛かってろ』
『酷い!冷たい!』
わざとらしく左腕にしがみつく祐紀を完全無視して
『終わりましたかね?笑え無い小芝居…』
恥ずかしそうにおとなしくなる二人。
『えッ?俺は?置いて行かないでよ』
更に俺に縋(すが)る祐紀を二人で離し、話そうとする口を塞ぎ謝るような顔をした。
そんな姿を背後に感じながら溜め息をひとつ…
『確かに俺が書いた物です』
『やっばり…』
『だけど違います!…なぜ彼女が持っていたのか…
これは、小5の時だったかな…
バスケの試合がきっかけで仲良くなった他校の奴が、入院が長くなって焦ってたんです。
何人かで会いに行ったんですけど、ろくな会話も出来なくて。
おばさんの姿とか見てたら
母さんの入院とかで、何と無く気持ち分かる気がして…つい…』
『そのお友達は?』
『大学病院に移って、元気になりました。
今もいいライバルです。
…そういえば…
いきなり謝られた事があった…
もしかしたらこれか?』
『そうか…』
『良かったのかしら、そんな大切な物だったのに』
『良かったじゃん。単なるゴミにされなくてさ。
そんな端切れを良く、楓香さんも拾ったよね。あッ、やべッ…』
また余計な事を言ったと、俺に一発貰うかもと身構える祐紀
『珍しくヒットだな』
頭に手を乗せると、除けようとしながらホッとした顔でまた話し出そうとするのを瞳(め)で止めた。
『あの娘(こ)が明らかに前向きになったのは、裕紀君の言葉
友達を想う優しさだったのね。
明るくなったし、夏美ちゃんと外出もするようになって…
ありがとうございました』
『俺は何も…頭を上げて下さい』
『花園さん…楓香さんが生きる力にしてくれて、そして裕紀を 助けてくれた。
私達の方がお礼を言わないと…
ありがとうございました』
お互いに手を握り会い、頭を下げ合ながら涙が零れていた。
『娘に彼氏を合わせられた時はこんななのかね』
『危ないよ。兄ちゃん、大丈夫かよ』
離れた所に居たはずの花園さんの言葉に驚き、足を踏み外しよろめいた。
『君に、娘を取られたような気がするよ。
あの娘は、私達に味合わせてくれた。
君の存在でね』
『年頃の子供がいれば親は楽しみで心配で、寂しいけど期待して…どんな人を好きになるのか
いつ紹介するのか、なんてね。
無いと思っていたから私達には
そんな事より少しでも楓香と過ごす時間の事だけを思っていたから。
だから…
良かったですねお父さん
楓香が好きになった人が裕紀君のような人で』
『ありがとう』
俺の手を握った
ゴツイ父親の手、軟らかい母親の手からゆっくりと伝わる温もりに、心の奥まで温かくなり言葉の代わりに涙が零れ落ちた。
楓香が言ってた
俺に教えてもらった生きる事…
もしかしてこの紙切れの言葉だったのか?
あの頃ちゃんと出会っていたら
言ってやったのにな…
「うそばっかり。裕紀は言わないでしょ。
特に女の子には言えないくせに。
ありがとう…裕紀…」
楓香に言われたような気がして、ひとり想いながら静かに見上げた空は青く、何処までも広く太陽は眩しく
気持ちが良かった。
翌日
ボールが弾む音、バッシュで走る音が懐かしく感じる。
たった一日離れていただけなのに走り出したい気持ちを抑え一人音を聞いていた。
『何一人格好付けてんだよ』
『先輩のポジション狙ってたのになぁ』
『何でお前なんだよ!その言葉は俺を抜いてからにしろ』
『俺には、新田先輩しか見えないんです』
『良くも俺と言う偉大な先輩を前に、お前は~』
『子供なんだから先輩はぁ~。
新田先輩待ってましたよ~』
『早く来いよッ!絶対勝つからな俺達…だろ』
待たせたのは二度目。
変わる事の無い空気で迎えてくれる仲間達。
今はこいつ等に応えよう。
こんな俺を必要としてくれるこの中で、精一杯楽しんで、必死に頑張ってみよう。
我が家は夏祭りと決戦が続き大騒ぎだった。
あの勢いのままの応援だ…知らない人の振りしたくなるほどで。
でもそのお陰か、他の応援の人達とも全員が一つになれ、勢いで突っ走れたのかもしれない。
そして俺達は
念願の優勝
全国への切符を手にした。
喜びは半端じゃなかった。
その後の集中力も頑張りも、応援も全てが全力だった。
一瞬一瞬が全て全力だった。
そして
俺の、俺達のゲームセットのホイッスルが響き渡った。
2回戦68Vs65
悔しかった。
仲間達と初めて泣いた。
だけど
後悔は無くスッキリしていた。
全てが俺達の全力だったから
誰もが輝いていた。
応援席の先輩も仲間も、家族も
そして
花園さんと一緒に来て居てくれた楓香も言ってくれるよな
「最後まで精一杯頑張ったね」
ゆっくり紐を緩め小さく折られたノートの切れ端のような紙を出した。
「つらいのも、頑張っているのもお前だけじゃないんだからな
わかっていても
頑張れしか言えなくて
なんにも手伝えなくて
つらくても頑張って応援してんだからな。
だから頑張れよ
待ってるからな 新田より」
『まともな紙に書けないのかね』
『確かにあなたの字ね。小学校…4、5年生の頃かな?』
『へぇ~こんな字書いてたんだ
俺の』
『比べるの悪いわよ。男の子にしては綺麗な字。性格が出るのよね』
『本当よね。性格出るのよね』『まるで俺が、字の汚い雑な性格って』
『そんなに卑下しないの。あなたも性格は良い子よ』
『性格はね』
『あ、ありがとう…でもなんか引っ掛かる…』
俺の両側から覗き込み言いたいことを言ってくれる事
『お前は勝手に引っ掛かってろ』
『酷い!冷たい!』
わざとらしく左腕にしがみつく祐紀を完全無視して
『終わりましたかね?笑え無い小芝居…』
恥ずかしそうにおとなしくなる二人。
『えッ?俺は?置いて行かないでよ』
更に俺に縋(すが)る祐紀を二人で離し、話そうとする口を塞ぎ謝るような顔をした。
そんな姿を背後に感じながら溜め息をひとつ…
『確かに俺が書いた物です』
『やっばり…』
『だけど違います!…なぜ彼女が持っていたのか…
これは、小5の時だったかな…
バスケの試合がきっかけで仲良くなった他校の奴が、入院が長くなって焦ってたんです。
何人かで会いに行ったんですけど、ろくな会話も出来なくて。
おばさんの姿とか見てたら
母さんの入院とかで、何と無く気持ち分かる気がして…つい…』
『そのお友達は?』
『大学病院に移って、元気になりました。
今もいいライバルです。
…そういえば…
いきなり謝られた事があった…
もしかしたらこれか?』
『そうか…』
『良かったのかしら、そんな大切な物だったのに』
『良かったじゃん。単なるゴミにされなくてさ。
そんな端切れを良く、楓香さんも拾ったよね。あッ、やべッ…』
また余計な事を言ったと、俺に一発貰うかもと身構える祐紀
『珍しくヒットだな』
頭に手を乗せると、除けようとしながらホッとした顔でまた話し出そうとするのを瞳(め)で止めた。
『あの娘(こ)が明らかに前向きになったのは、裕紀君の言葉
友達を想う優しさだったのね。
明るくなったし、夏美ちゃんと外出もするようになって…
ありがとうございました』
『俺は何も…頭を上げて下さい』
『花園さん…楓香さんが生きる力にしてくれて、そして裕紀を 助けてくれた。
私達の方がお礼を言わないと…
ありがとうございました』
お互いに手を握り会い、頭を下げ合ながら涙が零れていた。
『娘に彼氏を合わせられた時はこんななのかね』
『危ないよ。兄ちゃん、大丈夫かよ』
離れた所に居たはずの花園さんの言葉に驚き、足を踏み外しよろめいた。
『君に、娘を取られたような気がするよ。
あの娘は、私達に味合わせてくれた。
君の存在でね』
『年頃の子供がいれば親は楽しみで心配で、寂しいけど期待して…どんな人を好きになるのか
いつ紹介するのか、なんてね。
無いと思っていたから私達には
そんな事より少しでも楓香と過ごす時間の事だけを思っていたから。
だから…
良かったですねお父さん
楓香が好きになった人が裕紀君のような人で』
『ありがとう』
俺の手を握った
ゴツイ父親の手、軟らかい母親の手からゆっくりと伝わる温もりに、心の奥まで温かくなり言葉の代わりに涙が零れ落ちた。
楓香が言ってた
俺に教えてもらった生きる事…
もしかしてこの紙切れの言葉だったのか?
あの頃ちゃんと出会っていたら
言ってやったのにな…
「うそばっかり。裕紀は言わないでしょ。
特に女の子には言えないくせに。
ありがとう…裕紀…」
楓香に言われたような気がして、ひとり想いながら静かに見上げた空は青く、何処までも広く太陽は眩しく
気持ちが良かった。
翌日
ボールが弾む音、バッシュで走る音が懐かしく感じる。
たった一日離れていただけなのに走り出したい気持ちを抑え一人音を聞いていた。
『何一人格好付けてんだよ』
『先輩のポジション狙ってたのになぁ』
『何でお前なんだよ!その言葉は俺を抜いてからにしろ』
『俺には、新田先輩しか見えないんです』
『良くも俺と言う偉大な先輩を前に、お前は~』
『子供なんだから先輩はぁ~。
新田先輩待ってましたよ~』
『早く来いよッ!絶対勝つからな俺達…だろ』
待たせたのは二度目。
変わる事の無い空気で迎えてくれる仲間達。
今はこいつ等に応えよう。
こんな俺を必要としてくれるこの中で、精一杯楽しんで、必死に頑張ってみよう。
我が家は夏祭りと決戦が続き大騒ぎだった。
あの勢いのままの応援だ…知らない人の振りしたくなるほどで。
でもそのお陰か、他の応援の人達とも全員が一つになれ、勢いで突っ走れたのかもしれない。
そして俺達は
念願の優勝
全国への切符を手にした。
喜びは半端じゃなかった。
その後の集中力も頑張りも、応援も全てが全力だった。
一瞬一瞬が全て全力だった。
そして
俺の、俺達のゲームセットのホイッスルが響き渡った。
2回戦68Vs65
悔しかった。
仲間達と初めて泣いた。
だけど
後悔は無くスッキリしていた。
全てが俺達の全力だったから
誰もが輝いていた。
応援席の先輩も仲間も、家族も
そして
花園さんと一緒に来て居てくれた楓香も言ってくれるよな
「最後まで精一杯頑張ったね」