帰郷~いいならづけ~1
『千里は、ヒロ君のお嫁さんになる!』
『千里は、ヒロがそんなに好きか?』
『うん!だぁ~い好き』
『そうか…じゃーヒロのお嫁さんになって、じいちゃんの本当の孫になるか』
『うん!千里はおじいちゃんもだぁ~好き!』
『そうかそうか…
千里はヒロの許婚(いいなずけ)になるか
千里をお嫁さんにします
ヒロのお嫁さんになります
そう決めた人のことだ』
『うん!なる!
いいな、いいなら…
いいならづけ-!』
15年前
正確に言えないような
アニメヒーローに憧れる
5歳の少女と
じいちゃんとの約束
俺の知らないとこで交わされた
単なる子供の頃の
(ままごと)の延長のような
成長と共に薄れて
忘れ去られるはずの
約束のはずだった
大人達は
子供の千里に合わせていただけだったんだろ
俺だけだったのか
部屋にこもる祖父
車庫で道具の手入れをする父親
片付けの後もキッチンに居る母親
気まずい空気
だからって
どうにか出来る事じゃない
ドアノブに手をかけたけど
じいちゃんの顔見るのが切なく
『ごめんな…じいちゃん…』
言葉が続かなかった
手を離しドアに背を向けた
『ヒロ…気にするな
いつでも帰って来い…』
『わかってるよ…俺の家だからな』
ドアを挟みお互いに背中合わせの一言が
じんわりと背中に伝わり
気まずい空気が和らいだように感じ、軽く笑顔になった
夜遅くに地元の友達から連絡があり家をでた
昼間からカラオケ…
学生時代から集まる時はここだった
何処で何をしていてもばれる
まあ、ここも親達の手の中だが
部屋の中では唯一自由だった
だから
好きな女の子の話しとかも…
そんなことを思い出しながら気付くと着いていた
懐かしい建物
変わってない…
て、いうか少しは新しくしたほうがいいんじゃないかと思うほど、あの頃のまま
ドアを開けると
四人の友達とオーナーのタケ兄(にい)が話し込んでいた
タケ兄は10歳上でちょっとヤンチャだった。けど、俺達にはいつでも味方してくれる優しい兄貴のような…
一気に戻った
声をかける間もなく
懐かしい言葉と一緒に手荒い歓迎を受けた
部屋に移る前にアルコールを頼む俺達をしみじみと見て
『お前達が堂々と飲むようになったか』
溜め息をつくようなタケ兄
五人共同じ事を思い出していた
10年位前…俺達が中ニの春休み
隠してたって飲めばバレるのに
この部屋だった
缶ビール一本ずつ開け勢いで飲んだ時 いつもなら来ないのに
『何こそこそしてるかと思えば』
やばい!
全員下を向き覚悟をした
『何覚悟決めたような顔してんだよ…殴られるとでも思ったか?』
一瞬、気が抜けた…
『何言ったて、好奇心あおるだけだからな…止めろって言って止めるようなら隠れてしやしねぇだろ?
止めやしねぇよ…
で…どうだ旨かったか?
旨いって顔じゃあねぇな…
酒もタバコも飲みたけりゃ飲めばいい
だけどな
そんなもんは大人になれば自然と嫌でも飲むようになる
飲まずには要られないような事が山ほどある
今のお前等にしか出来ねぇ事、味わえねぇ物があんだろ
過ぎてからじゃ取り戻せねぇんだからよ…
見た目だけ真似て格好つけていい気になってるような奴等にはなるな
本物になれ
お前等のおやじさん達みてぇにな
横道にズレた俺からの忠告だ』
やっていいと言われると気持ちが薄れるもの
あのほろ苦さはタケ兄の言葉と一緒に今も残っている
裏切れない…そんな気持ちが俺達の中にお互いが感じ
そのお陰なのかどうか
真っ直ぐ突っ走って来た気がする
思い出話しは尽きなかった
突然なんの前触れも無く
『俺、今年の秋、結婚するは』
『なにぃ~』
言葉に詰まった後
無茶くちゃ手荒い祝福でまた一盛り上がりした
そう
もうそんな歳なんだ…と、
4人を見ていると
言い出した本人がまた妙なひと言
『結婚するのヒロが一番早いと思ってたけどな』
また突然どっからでた発想なんだと、思ったのは俺だけらしく
何なんだもっともらしいその顔つきは…
中でも一番気が合い何かとライバルで、ぶつかり合ったリュウ
千里が親友だという和音(かずね)の兄貴でもあり
4人の情報はそれなりに行き交い、間に上手く入り合いながらいい関係だ
そんなリュウまでが
『いいならずけ…じゃなかったのか?』
本気であのままごと約束を信じて…たって訳じゃないよな
妙な笑顔だ
『そんな約束の事より…
お前達を見てた奴なら、いつハッキリするんだって思うだろうな
気にしてなかった訳じゃないだろ』
そんなことを言われても
気にするとかしないとか
俺の中では何なのか分からない
それに
俺にも千里にもは付き合った奴もいるし
まあ、長くはもたなかったけど
確かにいた
訴えてはみたが
『いい迷惑だったろうな、相手した奴』
『その気があった訳じゃないのに』
『そこに気づかないでいるから、質が悪いよなお前達二人は』
『本当に自分の気持ちに気付いてないのかね』
ちょっと待て
何でお前達にそんなことを言われなければならない
リュウがここでは聞かないでおこうと思ったけど、と前置きしてから千里の事を話した
和音に聞いたのだろう
昨夜家族に話した事を話すと
『それでいいのか』
ハモるなよ
じいちゃんと同じ反応すんなよ
そのあと
まるで万引きか何かして事務所で取り調べされているように
しばらくの間
色んな事を聞かれ答え
俺の中で複雑な想いが広がっていくような気がしていた
そんな俺の想いを察してか
まあ
話し尽くすというか
自分達が思っていたように俺達が思っていないことが分かったのか
少し不満げな雰囲気で俺は解放された
ただ一人を残して
急な集まりで良く分からないまま
懐かしい話しはそれなりにできたが
俺の為か
まだまだ解散には早過ぎる時間に別れた
秋に結婚式で会うことを楽しみに
リュウと二人になると
『千里のこと幸せにしねぇと許さねぇからな
あいつは誰よりお前を分かってたんじゃないのか
あいつなりに切り替える努力はしたんだろうからな
いい加減向き合ってやれ
それでもお前の中で女として見られないなら
ちゃんと話してやれ
男としてのケジメをつけて
千里をお前から解放してやれ』
一発殴られるんじゃないかと思うほどの真剣な目に
言葉の意味を理解することも
身動きも出来ず
視線すら反らすことが出来ず返事をしていた…と、思う
まるで
怖いお兄さんに絡まれているようにしか見えなかっただろう
俺の様子を察してかどうか
リュウが断ち切るように話しだし助かったように思ったのは一瞬だった
忘れようとしていた
あの頃の想いを閉じ込めた
俺にとってはパンドラの箱を開けることになった
『ヒロ、お前さ高二の秋頃
千里のこと妙な意識の仕方してたよな』
こいつは何か知っているのか
気付かれていた
存在さえ忘れていた箱を見つけ動揺する自分を感じていた
そしてついに
『千里のFirst Kissだったんだよ』
帰った仲間に俺の居場所を聞き突然現れた和音
なぜか一緒に戻って来た三人も含め、いい大人の男六人が久しぶりに聞く言葉に照れるように視線が定まらなかった
『ヒロ君、気付いてたんでしょ?なぜ8月20日だったのかってことと、千里がKissしたこと』
俺のパンドラの箱は開けられた
そう
高二の8月20日
千里が中一
夏休みの課題の追い込みに集中力が切れベットに横になった
どれくらいたったのか
微かに名前を呼ばれたような気がした
部屋に入る気配に
「千里?」
俺の中だけでの問い掛けだったのか返事はなく
洗いたてのシャンプーの匂いと、微かに肌の温もりを感じた
まだどこかで現実なのかハッキリしなく目を開けられなかった
そして意識がハッキリし始めると同時に
鼓動が早くなるのを感じ
悟られないないよう気にしている俺がいた
近づく鼓動と重なった時
微かに聞こえた言葉に気を引かれた俺の唇に
ほんのり甘い香りと一緒に柔らかな唇の感触が
部屋を出たのを気配で感じ
ベットに座り
零れる落ちたような
『好き』の一言と
甘い香りと柔らかな唇の感触
現実だったのかハッキリしないまま
窓に近づくと
『英語教えてくれる約束だったのに、寝てるなよな…ヒロ君に貸し一つ高くつくから覚えておいてね』
リュウの言う通り
俺の中で何かが変わった
戸惑っている自分を隠すことを気にしてたな
だけど
それも半年後には
そんな出来事もそんな想いも
閉じ込めることになった
千里に彼氏が出来たことで…
思い出から戻ると
それぞれのFirst Kissの話しで盛り上がり
和音が呆れる顔で聞いていた
ふと、一人と目が合うと
『ヒロのFirst』Kissは有名だったよな』
『なんせうちの中学のマドンナとだもんな』
『二つ年上のマドンナに…上手くやりやがったよな』
『マドンナに奪われ、卒業後はさよならで
千里ちゃんのは奪っておいて、知らん顔
罪な男だねヒロは』
言いたいことを言いやがって
言っておくが奪った覚えは無いからな
『気付いていたんだろ?止める事も避けることもしなかったんだ…奪ったようなもんだろ』
リュウ…もしかして今も千里のこと
前からそんな気がしていた、というか見え見えだったんだけど
いい加減イラツき出した和音の言葉を止めるように
『分かった!8月20日はヒロがマドンナにFirst Kissを奪われた日だ』
『そうです
5歳と10歳は子供だけど
中三と中ニは大人のKissだって兄貴達が言ったんだからね
だから千里…
一大決心だったんだよ
…
鼓動が…
苦しくなるくらいの鼓動がね
ヒロ君の鼓動と調和した時
気付いたんだって
ヒロ君は目が覚めている気付いている
そうしたら別の緊張も出来たけど
知らんふりしてくれているヒロ君と
一緒に打っている鼓動で落ち着けたんだって』
和音は千里のことを淡々と話してくれた
半年後の彼氏騒動は誤解
『私も千里も兄貴とヒロ君のおかげで、男友達は多く気軽に遊びに行っていた
そんな調子で顔見知りになった他中のあいつと一度遊んだだけ
なのに噂は広まった
だけどどう言っても言い訳になるからほっといてたら
千里のした事に気付いていて、止めなかったのに
何であんな事を言ったの
どうでもよかったの
どうして千里を一人にするの』
思わず熱くなる和音をリュウが止めながら
『一人暮らしのことでもめてた時、
お前、千里に何を言ったか覚えてるよな?
「ヒロ君の中で自分が何処に居るのかが分かったような気がする」
そう言って頑張って笑っててたの知ってたか
それで本当の千里として歩いているなら
それでいい…
だけど、違うだろ』
『千里は、ヒロがそんなに好きか?』
『うん!だぁ~い好き』
『そうか…じゃーヒロのお嫁さんになって、じいちゃんの本当の孫になるか』
『うん!千里はおじいちゃんもだぁ~好き!』
『そうかそうか…
千里はヒロの許婚(いいなずけ)になるか
千里をお嫁さんにします
ヒロのお嫁さんになります
そう決めた人のことだ』
『うん!なる!
いいな、いいなら…
いいならづけ-!』
15年前
正確に言えないような
アニメヒーローに憧れる
5歳の少女と
じいちゃんとの約束
俺の知らないとこで交わされた
単なる子供の頃の
(ままごと)の延長のような
成長と共に薄れて
忘れ去られるはずの
約束のはずだった
大人達は
子供の千里に合わせていただけだったんだろ
俺だけだったのか
部屋にこもる祖父
車庫で道具の手入れをする父親
片付けの後もキッチンに居る母親
気まずい空気
だからって
どうにか出来る事じゃない
ドアノブに手をかけたけど
じいちゃんの顔見るのが切なく
『ごめんな…じいちゃん…』
言葉が続かなかった
手を離しドアに背を向けた
『ヒロ…気にするな
いつでも帰って来い…』
『わかってるよ…俺の家だからな』
ドアを挟みお互いに背中合わせの一言が
じんわりと背中に伝わり
気まずい空気が和らいだように感じ、軽く笑顔になった
夜遅くに地元の友達から連絡があり家をでた
昼間からカラオケ…
学生時代から集まる時はここだった
何処で何をしていてもばれる
まあ、ここも親達の手の中だが
部屋の中では唯一自由だった
だから
好きな女の子の話しとかも…
そんなことを思い出しながら気付くと着いていた
懐かしい建物
変わってない…
て、いうか少しは新しくしたほうがいいんじゃないかと思うほど、あの頃のまま
ドアを開けると
四人の友達とオーナーのタケ兄(にい)が話し込んでいた
タケ兄は10歳上でちょっとヤンチャだった。けど、俺達にはいつでも味方してくれる優しい兄貴のような…
一気に戻った
声をかける間もなく
懐かしい言葉と一緒に手荒い歓迎を受けた
部屋に移る前にアルコールを頼む俺達をしみじみと見て
『お前達が堂々と飲むようになったか』
溜め息をつくようなタケ兄
五人共同じ事を思い出していた
10年位前…俺達が中ニの春休み
隠してたって飲めばバレるのに
この部屋だった
缶ビール一本ずつ開け勢いで飲んだ時 いつもなら来ないのに
『何こそこそしてるかと思えば』
やばい!
全員下を向き覚悟をした
『何覚悟決めたような顔してんだよ…殴られるとでも思ったか?』
一瞬、気が抜けた…
『何言ったて、好奇心あおるだけだからな…止めろって言って止めるようなら隠れてしやしねぇだろ?
止めやしねぇよ…
で…どうだ旨かったか?
旨いって顔じゃあねぇな…
酒もタバコも飲みたけりゃ飲めばいい
だけどな
そんなもんは大人になれば自然と嫌でも飲むようになる
飲まずには要られないような事が山ほどある
今のお前等にしか出来ねぇ事、味わえねぇ物があんだろ
過ぎてからじゃ取り戻せねぇんだからよ…
見た目だけ真似て格好つけていい気になってるような奴等にはなるな
本物になれ
お前等のおやじさん達みてぇにな
横道にズレた俺からの忠告だ』
やっていいと言われると気持ちが薄れるもの
あのほろ苦さはタケ兄の言葉と一緒に今も残っている
裏切れない…そんな気持ちが俺達の中にお互いが感じ
そのお陰なのかどうか
真っ直ぐ突っ走って来た気がする
思い出話しは尽きなかった
突然なんの前触れも無く
『俺、今年の秋、結婚するは』
『なにぃ~』
言葉に詰まった後
無茶くちゃ手荒い祝福でまた一盛り上がりした
そう
もうそんな歳なんだ…と、
4人を見ていると
言い出した本人がまた妙なひと言
『結婚するのヒロが一番早いと思ってたけどな』
また突然どっからでた発想なんだと、思ったのは俺だけらしく
何なんだもっともらしいその顔つきは…
中でも一番気が合い何かとライバルで、ぶつかり合ったリュウ
千里が親友だという和音(かずね)の兄貴でもあり
4人の情報はそれなりに行き交い、間に上手く入り合いながらいい関係だ
そんなリュウまでが
『いいならずけ…じゃなかったのか?』
本気であのままごと約束を信じて…たって訳じゃないよな
妙な笑顔だ
『そんな約束の事より…
お前達を見てた奴なら、いつハッキリするんだって思うだろうな
気にしてなかった訳じゃないだろ』
そんなことを言われても
気にするとかしないとか
俺の中では何なのか分からない
それに
俺にも千里にもは付き合った奴もいるし
まあ、長くはもたなかったけど
確かにいた
訴えてはみたが
『いい迷惑だったろうな、相手した奴』
『その気があった訳じゃないのに』
『そこに気づかないでいるから、質が悪いよなお前達二人は』
『本当に自分の気持ちに気付いてないのかね』
ちょっと待て
何でお前達にそんなことを言われなければならない
リュウがここでは聞かないでおこうと思ったけど、と前置きしてから千里の事を話した
和音に聞いたのだろう
昨夜家族に話した事を話すと
『それでいいのか』
ハモるなよ
じいちゃんと同じ反応すんなよ
そのあと
まるで万引きか何かして事務所で取り調べされているように
しばらくの間
色んな事を聞かれ答え
俺の中で複雑な想いが広がっていくような気がしていた
そんな俺の想いを察してか
まあ
話し尽くすというか
自分達が思っていたように俺達が思っていないことが分かったのか
少し不満げな雰囲気で俺は解放された
ただ一人を残して
急な集まりで良く分からないまま
懐かしい話しはそれなりにできたが
俺の為か
まだまだ解散には早過ぎる時間に別れた
秋に結婚式で会うことを楽しみに
リュウと二人になると
『千里のこと幸せにしねぇと許さねぇからな
あいつは誰よりお前を分かってたんじゃないのか
あいつなりに切り替える努力はしたんだろうからな
いい加減向き合ってやれ
それでもお前の中で女として見られないなら
ちゃんと話してやれ
男としてのケジメをつけて
千里をお前から解放してやれ』
一発殴られるんじゃないかと思うほどの真剣な目に
言葉の意味を理解することも
身動きも出来ず
視線すら反らすことが出来ず返事をしていた…と、思う
まるで
怖いお兄さんに絡まれているようにしか見えなかっただろう
俺の様子を察してかどうか
リュウが断ち切るように話しだし助かったように思ったのは一瞬だった
忘れようとしていた
あの頃の想いを閉じ込めた
俺にとってはパンドラの箱を開けることになった
『ヒロ、お前さ高二の秋頃
千里のこと妙な意識の仕方してたよな』
こいつは何か知っているのか
気付かれていた
存在さえ忘れていた箱を見つけ動揺する自分を感じていた
そしてついに
『千里のFirst Kissだったんだよ』
帰った仲間に俺の居場所を聞き突然現れた和音
なぜか一緒に戻って来た三人も含め、いい大人の男六人が久しぶりに聞く言葉に照れるように視線が定まらなかった
『ヒロ君、気付いてたんでしょ?なぜ8月20日だったのかってことと、千里がKissしたこと』
俺のパンドラの箱は開けられた
そう
高二の8月20日
千里が中一
夏休みの課題の追い込みに集中力が切れベットに横になった
どれくらいたったのか
微かに名前を呼ばれたような気がした
部屋に入る気配に
「千里?」
俺の中だけでの問い掛けだったのか返事はなく
洗いたてのシャンプーの匂いと、微かに肌の温もりを感じた
まだどこかで現実なのかハッキリしなく目を開けられなかった
そして意識がハッキリし始めると同時に
鼓動が早くなるのを感じ
悟られないないよう気にしている俺がいた
近づく鼓動と重なった時
微かに聞こえた言葉に気を引かれた俺の唇に
ほんのり甘い香りと一緒に柔らかな唇の感触が
部屋を出たのを気配で感じ
ベットに座り
零れる落ちたような
『好き』の一言と
甘い香りと柔らかな唇の感触
現実だったのかハッキリしないまま
窓に近づくと
『英語教えてくれる約束だったのに、寝てるなよな…ヒロ君に貸し一つ高くつくから覚えておいてね』
リュウの言う通り
俺の中で何かが変わった
戸惑っている自分を隠すことを気にしてたな
だけど
それも半年後には
そんな出来事もそんな想いも
閉じ込めることになった
千里に彼氏が出来たことで…
思い出から戻ると
それぞれのFirst Kissの話しで盛り上がり
和音が呆れる顔で聞いていた
ふと、一人と目が合うと
『ヒロのFirst』Kissは有名だったよな』
『なんせうちの中学のマドンナとだもんな』
『二つ年上のマドンナに…上手くやりやがったよな』
『マドンナに奪われ、卒業後はさよならで
千里ちゃんのは奪っておいて、知らん顔
罪な男だねヒロは』
言いたいことを言いやがって
言っておくが奪った覚えは無いからな
『気付いていたんだろ?止める事も避けることもしなかったんだ…奪ったようなもんだろ』
リュウ…もしかして今も千里のこと
前からそんな気がしていた、というか見え見えだったんだけど
いい加減イラツき出した和音の言葉を止めるように
『分かった!8月20日はヒロがマドンナにFirst Kissを奪われた日だ』
『そうです
5歳と10歳は子供だけど
中三と中ニは大人のKissだって兄貴達が言ったんだからね
だから千里…
一大決心だったんだよ
…
鼓動が…
苦しくなるくらいの鼓動がね
ヒロ君の鼓動と調和した時
気付いたんだって
ヒロ君は目が覚めている気付いている
そうしたら別の緊張も出来たけど
知らんふりしてくれているヒロ君と
一緒に打っている鼓動で落ち着けたんだって』
和音は千里のことを淡々と話してくれた
半年後の彼氏騒動は誤解
『私も千里も兄貴とヒロ君のおかげで、男友達は多く気軽に遊びに行っていた
そんな調子で顔見知りになった他中のあいつと一度遊んだだけ
なのに噂は広まった
だけどどう言っても言い訳になるからほっといてたら
千里のした事に気付いていて、止めなかったのに
何であんな事を言ったの
どうでもよかったの
どうして千里を一人にするの』
思わず熱くなる和音をリュウが止めながら
『一人暮らしのことでもめてた時、
お前、千里に何を言ったか覚えてるよな?
「ヒロ君の中で自分が何処に居るのかが分かったような気がする」
そう言って頑張って笑っててたの知ってたか
それで本当の千里として歩いているなら
それでいい…
だけど、違うだろ』