いわゆる「丸投げ」、みなさん聞いたことはあると思います。
家づくりで言えば、「引き受けた工事をぜーんぶほかの工務店などにやらせること。」
ぐらいのイメージで思ってる人が多いんじゃないでしょうか?
例えば大手ハウスメーカーが引き受けた建築工事を一式全部、地元の工務店にまかせちゃうみたいな。
でも、これって必ずしも丸投げとは言えないんです。
いわゆる「丸投げ」は、専門的には「一括下請負(いっかつしたうけおい)」と言います。
どういう意味なのか?
建設業法を所管する国土交通省の見解は以下の通りです。
(平成28年10月14日 国土建第275号 国土交通省土地・建設産業局長 「一括下請負の禁止について」より)
※ここから引用
一括下請負とは
元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、以下の場合に該当するときは、一括下請負に該当します。
- 請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工 を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
- 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
※引用おわり
ポイントは、「実質的な関与があるか?」と、「一部分であっても丸投げになる」というところだと思います。
つまり、大手ハウスメーカーと契約した工事を、地元工務店一軒まるごと任せたとしても、元請が施工に実質的に関与していれば「一括下請け負い(丸投げ)」ではないということになります。
逆に、地盤改良工事、基礎工事、外壁工事など、工事全体の一部分であっても、元請が実質的に関与していなければ「一括下請け負い(丸投げ)」となります。
ところで、「実質的に関与」とはどういうことでしょうか?
「一括下請け負い(丸投げ)」にならないために元請が果たすべき役割も具体的に定められています。
※ここから引用
元請(発注者から直接請け負った者)が果たすべき役割
施工計画の作成
- 請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成
- 下請負人の作成した施工要領書等の確認
- 設計変更等に応じた施工計画書等の修正
工程管理
- 請け負った建設工事全体の進捗確認
- 下請負人間の工程調整
品質管理
- 請け負った建設工事全体に関する下請負人 からの施工報告の確認、必要に応じた立会確認 安全管理
- 安全確保のための協議組織の設置及び運営、作業場所の巡視等請け負った建設工事全体の労働安全衛生法に基づく措置
技術的指導
- 請け負った建設工事全体における主任技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確認
- 現場作業に係る実地の総括的技術指導
その他
- 発注者等との協議・調整
- 下請負人からの協議事項への判断・対応
- 請け負った建設工事全体のコスト管理
- 近隣住民への説明
※引用おわり
「元請は、以上の事項を全て行うことが求められる」とされています。
つまり一つでも行わなければ丸投げということになります。
何故、丸投げ(一括下請け負い)かどうかが重要かというと、基本的に法律違反だからです。
建設業法第22条
「建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。」
いろいろな家づくりブログを見ていると、大手ハウスメーカーであっても品質管理をしっかりやっているかどうかはバラツキがあるようです。
「大手だから安心だと思って契約したけど、実態は丸投げで品質管理は下請けまかせだった、それによって不具合が発生した」、というような場合は、きちんと直してもらうのは当然ですが、元請として建設業法上の責任も問われることになります。
残念ながら、「不具合が見つかったら直せばよい」という考え方で品質管理がいいかげん、あるいは何もやっていないようなハウスメーカー、工務店も少なくないように思います。しかし、隠れた施工不良が見つかった時にはもう手遅れということも考えられます。
(補償が切れていた、工務店が倒産していた、フランチャイズを脱会してた、大地震で倒壊してしまった等々)
大手だから、住宅展示場にモデルハウスがあるような会社だから・・・というだけで安心せず、施工に元請が実質的に関与しているかどうか、しっかり見極める必要があります。
また、建設業者、特に現場監督の方々には、先に述べた「元請としての役割」をすべて果たしていなければ法律違反であるということを肝に銘じていただきたいと思います。