Vol.75 「仕手筋とノムラ(4)」 | ノムラ證券残酷物語

Vol.75 「仕手筋とノムラ(4)」

本当の仕手筋とは、実はあの当時のノムラ自体だったのだろうかと思う事が何度もある。仕手筋とは、ある銘柄を狙って、その株を、買って買って、買い占めて、そして会員なり顧客を喜ばせて、最後は誰かがその更に上値を買って、自分達全員の玉を売り逃げなければ、誰かがババを掴むことになる。本当にその会社が好業績なり、会社の内容が一変して市場の注目を浴び、全員参加型の大幅な株価上昇につながるのであれば別であるが、実際はそんなことはほとんど無いといって良い。


ただ、バブル期のウォーターフロント銘柄なり、ノムラがシナリオを書き、全ての投資家参加型になった、石川島や東京電力、東京ガスといったとんでもない大型銘柄が10倍にもなった事が、歴史上最も強烈な仕手相場だったような気がする。ただ、やっぱり、上に書いたあの時代、前代未聞の銀座と虎ノ門の首都圏クロスが凄まじい結末だったと思う。


虎ノ門、銀座の双方の支店は完全に干上がっていた。営業マン全員の全ての顧客はそれぞれ、日本曹達、アマノ株で一杯一杯になっており、虎ノ門では自分の顧客が売りたい、損でも良いから売りたいと言っても、それを営業マンが止められなければ、営業マン自身が自分の別の顧客で、売りたい顧客の売り株数以上の買い物を用意して、支店の残は絶対に減らしてはならないという恐怖政治が引かれていた。


とにかく、厳しい玉管理だった。客はいつまでも上がらない株など持っていたくないし、営業マンも手数料ノルマは別にちゃんとあるのに全く売買が出来なくなり、もう限界に来ていた。銀座のアマノも恐らく同じ状況だったのだろう。


そんなある日の夕方、虎ノ門では突然全員集合が命じられ、仰天の支持が飛んだ。支店長が珍しく指示を出し、そしてY田課長が細かい指示を出した。「明日の寄付きで日本曹達を全員売れ、明日寄付きで合計1000万株の曹達を売る!一度にまとめて売れるのはこのタイミングだけだ。いいか、今から客に電話しろ!」と、とてつもない指示が飛んだ。ずいぶん長い間持たせていた客だろうが、昨日「直ぐにも1000円までぶっ飛びます!」って適当な事を言って買わせた客でも全部同じである。とにかく売れと言う。(続く)