Vol.52 「スイスイ~帰ろう水曜日!今日は残業無し!(4)」 | ノムラ證券残酷物語

Vol.52 「スイスイ~帰ろう水曜日!今日は残業無し!(4)」

『現在の信用枠で後5万株は買えると思います。持ち株の別子(住友金属鉱山)も処分して勝負すれば、後5万株合計10万株まで可能かと思います!』と押してみた。


「そうだな、いっぺんにまとめて買うのはどうかと思うから、明日は2万株だけ買っておこうか?』って・・・『そんなぁ~~~せめて5万株…』って思う気持ちを抑えてもう一押しだぁ~


『そうですね。わかりました(ここで「ありがとうございました」とは言わない。儲けさせるのだから(建前は…)ありがとうとは言わないのである…)では社長、短い期間で良いのですが、新しいご資金はご用意出来ないでしょうか?明日の寄付きで買っても直ぐに100円幅程度なら取れそうな気配ですからやっぱり10万株にして100円なら1000万円程度なら直ぐに儲かりそうなので、2000万円程ご用意頂ければ、10万株買えるのですがどうでしょう?それと会社の方はやっぱりK常務にご一任でよろしいのでしょうか?』って一気に勝負にでた。


ここまでロビーのソファーで会ってからたぶん5分掛からない時間だった。


「個人は追加で2万株も買えばもう十分だよ。株は遊びだから…合計3万株で300万円儲かれば十分さ!会社の運用はK藤常務に任せてあるから、明日K常務に聞いてみたら?」って…


もう一息でノルマ達成かな?と…もう一度押しだ!って言い聞かせて…


『それでは明日会社の玉はK藤常務にお話しますが、やっぱり社長、別子(住友金属鉱山)がほぼ買値で儲かっていないのですが、おそらく少しタイミングが悪かったかもしれないので、これを手仕舞って足の速い日石に乗って見ませんか?そうすればやっぱり10万株買えますが』って…粘る事も基本なのだ…


実は別子は3日前に3万株買わせたばかりで50円程やられているので、トントンってことは無く、手仕舞いの手数料まで考慮すると、下手をすると200万円以上やられていまう状態だったのであるが、インターネットで持ち株の買値などをいつでも把握できる現代の状態と異なり、証券会社の言うがままにある銘柄を買った後は、売買報告書が3日目に届くが、かなり細かい客なら別だが、お金持ちの客ほどおそらく半分以上は報告書すら見ないし、買った値段もそして現在の株価も自分で調べる客などほとんど私の記憶では居なかったと思う。このような本当の細かな損益を伝えなくても大雑把な説明で、乗り換え作戦は割と簡単に決まったケースが多かった。


少し考えた社長は、「そうだな、あまり大きな取引はやった事が無いから怖いが、まあ短期勝負なら一度やってみるか!」って!!!


『やった~~ノルマ達成!』って言葉はやっぱり飲み込んで、『それでは、別子を処分して明日日石を10万株買っておきます。短期勝負です!』って!細かな値段のことは一切触れない。これは鉄則である。幾らで売って、幾らで買うか?こんなことをいちいち顧客から確認を取っていたら商売なんか絶対に出来ない。そんなものだった。全てを任せてもらうというか、細かいことは聞かれないように「任せてもらうように」仕向ける。


そもそも、「売買の別、指値/成行きの別」など細かく顧客からの注文内容を確認することが証券取引法で定められたルールなのだが…これ自体ルール違反であることだが…


「よし、話はそれだけか?じゃあ少し飲みに行くか?!」って、社長に初めて飲みに誘われた。もう既に11時を回っていて、課長は支店で待っているだろうから、時間を見て後で電話しなければならないが、そんなことは後回しで良いって決め込んで『はい!喜んで!」って、銀座の夜の街かな?って・・・若いサラリーマンにはとても刺激的な夜になるのかなって?ドキドキしながら、この日の夜はまだ長くなりそうな気配でした。(まだまだ続く)