Vol.47 「地獄の投信ノルマ(7)」
車を公衆電話のある場所まで回しI上代理がY田課長の自宅に電話して交渉してもらい、更に、Y田課長は支店長の自宅に電話してCBの増額交渉をするという伝言ゲームが続きました。ようやく、再度課長の自宅にI代理が電話した時にY田が私に電話を代われと言っているようで私が電話口に出ました。
「K村、ご苦労さん、それでな、2000万円なんか絶対ノムラでは無理なんだ。もう支店長の枠も無いんだ。但し、今月は特別に…400万円だけなら用意できるそうだ。支店長が本部に相談して特別にもらったそうだ。但し、これでも駄目なら来月必ず用意するって約束して来い!でも投信は1億絶対決めろよ。でも「タダ」でCBだけ取られるなよ!」って…(お前に言われなくてもそんなヘマはしねぇ~よ!って心の中で叫びながら)『はい。もちろんです。頑張ってきます!』と電話を切りました。
再度部長の自宅に戻り、もう一度玄関先で『部長、支店にお願いして来ました!ただ、今月はもう200万円しか追加ではご用意出来ないそうです。すみません。合計500万円で何とか1億お願い出来ませんでしょうか?お願いします!』ってもう頭を下げたまま、絶対OKが出るまで動かない覚悟で最後のお願いでした。しばらく考えた後、「分かった。今回だけだぞ!その代わり今後も良い玉回してくれよ!ご苦労さん!明日課長に言っておくから彼と話してくれ」『部長、本当ですか?ありがとうございます!本当にありがとうございます!」って…本当に疲れた交渉だった。
何度も、何度も、部長に丁寧に「ありがとうございます」を連発して失礼し、車を停めてある方向とは別に歩き出しました。でも何か釈然としない、ムカムカして仕方ありませんでしたので、このまま報告するのは悔しくで少し焦らすことにしました。住宅街をタバコを吸いながら30分程歩き回りようやく車に戻って、待ちくたびれた様子のI上代理に『すみません。やっぱり最低でも1000万じゃないと無理そうです。粘ったんですが…』と嘘の報告をした。
課長は飛び起き、「1000万ならかうんだな!本当か!?」って、そう言うなり「もう一度課長に電話してくるわ」ってI代理は公衆電話に走って行きました。15分程して戻ってくると「K村、重工とは別なCBだが今月末払い込みで300万円取れた!これで合計1000万になるぞ!もう一回行って来い!」って…
「なんだよ。やっぱりやれば出来るんじゃん!って…もう客は500万でOKなんだよ!って…」
(もう少し続く)