日本未公開作品
英題:All's Well End's Well(終わりよければすべて良し、って感じかな)
92年香港
制作監督:高志森(クリフトン・コー)


出演(キャスト)
常満:黄百鳴(レイモンド・ウォン)
常歡:周星馳(チャウ・センチー)
常騒:張國榮(レスリー・チャン)
満の奥さん:呉君如(サンドラ・ン)
歡の彼女:張曼玉(マギー・チャン)
騒の彼女:毛舜[竹/均](テレサ・モウ)

お正月映画である
監督のクリフトン・コーは、毎年、お正月の華やかな映画を作ることで有名な人。ほかに、「開心(ハッピー)」シリーズで、美少女を発掘したりもしてる。

この作品、たぶん、内容的に日本で公開されることはないんじゃないかと思う。
それは、途中、周星馳の演じているキャラが、日本的にはいろいろと抵触するような行動をするからだ。

さて物語はというと「常家には三人兄弟がいる。長男には大変賢い嫁さんがいる、次男は典型的なプレイボーイ、三男はというと、ちょいとおかまがかっている。それぞれ性格も違うから、愛情生活もまた、いろいろというわけで……」。

何が面白いといって、三男(周星馳より年下役かよ!)なレスリー・チャン演じる、おかまっぽい夢見る青年。
なんというか、しぐさのひとつひとつが堂に入っていて、それがとても自然で、すごく可愛い。
マギー演じるちょいといかれた女の子にぞっこん惚れた周星馳、鉄砲のような得意のセリフを繰り出すディスク・ジョッキーの役がまた、なかなかサマになっている。
この作品の中で、大変に好きなのは、呉君如である。まぁサンドラらしい大げさな演技もあるけれど、珍しく煮え切らない優しいタイプの女性役で、これが意外なほど嵌まっていて、芸域の広さを思わせる。
元気一杯の毛舜[竹/均](もうもう)も楽しい。モウモウもコメディエンヌなのだけど、サンドラとはかなり系統が違っていて、その比較もまた楽しいのだよ。
マギーは……えぇまだ後年のぶっとんだマギーにまで至ってません。ごく普通の若い女優に見える(笑)。

後半、サンドラが家をでて、カラオケ・バーで働いている時に、客で黄光亮(トミー・ウォン)がやってくる。ふだんはかなり目つきの鋭い、マフィアなあんちゃんなんかをやっているトミー・ウォンが、日本人相手の接待で下手なカラオケ歌うビジネスマンの役で、ちょっと出なんだが、すんごくいい味出してる。

もともとの揉め事は、レイモンド・ウォン演じる長男の浮気から始まるんだけど、調子のいいこの長男を演じているレイモンド・ウォンは、実は映画制作に長いことたずさわっていて、映画界では重鎮なのだ。
クリフトン・コーとはよくつるむらしく、お正月映画の常連である。

それにしても、周星馳と呉君如が出ているのに、二人がからまない話って、珍しいよね。

六人が六人とも、それぞれ主役張って演技ができるタイプなので、掛け合いも素晴らしく、お正月映画らしいおめでたい仕上がりになっている。

このお正月映画というと、1988年の『俺たちは天使じゃない(八星報喜)』が有名かな。チョウ・ユンファとジャッキー・チュン、それに上のレイモンド・ウォンの三兄弟が……という、同じパターンの作品だ。
制作者が全然違うけど『大英雄』もお正月映画。
私の手元には『九星報喜』というのもあるけど、これはずっとあとのお正月映画らしい。これがまた面白い映画でね。そのうち紹介しま~す。