まちの春
マンホールの縁からにょきにょきと
歩道の隅からいつの間に
白・黄・青
小さき戦士の放つ臭気。
春の気だるさを押し運ぶビルのすきま風。
その中を私はずんずんと歩いていく。


春のうた
春が好きなのは
ぼんやりとしているから。
目覚めたときの、世界が交錯したような錯覚。
春はいのちの入り混じった匂いを連れてくる。
だから異様だ。
だけど、ぼんやりとしているから、
その匂いさえ
私を惹きつけてやまない。
春はいのちの入り混じった色を連れてくる。
おのれの色を恥じらいもなくさらけ出す
いのちの圧迫感さえも
春が柔らかく包み込むから、
その中で私は開放される。
春は優しい錯覚で
私を毒する季節。
そう、私が生まれた季節。