Propellerhead Reasonの制作スタイルについて4回にわたって書きましたので、個別のデバイスに戻りましょう。

 
 俺の云ってる「制作スタイル」にも関連しますが、今回はCombinatorについて、もう少し詳しく。
 
 Combinatorは、Reasonデバイスを内包させて、あたかも単一のデバイスとして扱うことができるようにする強力かつ柔軟なデバイスです。
 実際、Reasonには、数え切れないくらいのCombinatorパッチが含まれていて、あるときはインストゥルメントとして、あるときはエフェクターとして取り扱うことができるようになっている。
 デバイスの設定、組み合わせ等をパッチとして保存しておくことができるので、パッチの保存できないデバイスであっても、設定の再利用が可能になるという利点もある。
 
 そう聞くと、Logicのチャンネルストリップ設定に似てると思われた方もいるかと思います。
 確かに、そうとも云える。ただし、それはCombinatorの機能をフルに使ってない場合です。
 
 Combinatorには、ハードウェアとメインミキサーとのインターフェースを除いたReasonのあらゆるデバイスを内包することができる。それも、メモリとマシンパワー以外に制限がない。
 Logicのチャンネルストリップ設定の場合は、あくまで一つのチャンネルにインサートする音源及びエフェクターの設定を保存できるだけ。まあ、DAWとしては普通のことだけど、CombinatorはReasonがDAW化する前の3.0の頃に搭載されたものなので、チャンネルストリップ設定とは、目的がちょっと違うんですね。
 
 Combinatorは、すべてのReasonデバイス使って、新たなReason デバイスを作るものです。そして、内包するデバイスは自由な発想で組み合わせられる。
 すべてのReasonデバイスということはMixer 14:2やLine Mixer 6:2も含めることができる。だからCombinatorの中でミニRackを作ってるような感覚さえあります。
 例えば、SubTractorで、より重厚な音を作りたいと思えば、Combinator内で設定したSubTractorを複製して、Mixerを使ってミックスすることだってできる。
 
【9.5対応改訂】VST in Reasonになって、VSTプラグイン用にPlugin Rack Deviceというものが使えるようになりました。
これ自体、CVのプログラムが可能なのですが、このPlugin Rack Deviceもcombinatorの中で使用が可能です。
 また、今まで多数のデバイスを組み合わせてやっていたことが、VSTプラグイン1つで済んでしまうケースもあるでしょう。
 その場合でも、combinatorでVSTプラグインを操作するということに一定の利用価値はあると思います。
 
 
 例えば、汎用音源であるID8という、GS/GM/XG音源のような比較的チープなデバイスがありますが、これだってCombinatorを使えば、有用なデバイスになります。
 Reasonには、ID8のCombinatorパッチも複数、用意されている。
 
 
このパッチには、音源であるID8が二つ含まれていますね。
この2系統の音源から、別のルートでエフェクターを介してMixer 14:2に接続され、2つの音源の音がミックスされています。
当然、Mixer 14:2でできることは、Combinatorの中でもできるので、Send-Returnでリバーブ、ディレイ、コーラスが使われている。Mixer内蔵のEQも使われていますね。
そして、その出力がコンプレッサーに送られています。
 
もう一つ見てみよう。
今度はエフェクター。
 
このように、音源でもエフェクターでも自由な発想で、新たなデバイスとして制作していくことが可能になります。
 
また、既存のCombinatorパッチを解析すれば、テクニックをパクることも可能です。
 
じゃあ、試しに、さっきのID8のCombinatorをいじってみましょう。
エフェクターの設定は、そのままにして、音源をサンプラーに変更しました。
さらに、NN-XTの音を2系統に分割して、片方はAMPを通しました。
最終的には、NN-19、NN-XT、NN-XT with AMPという3系統の音ができて、それをMixerでミックス。
ついでにCombinatorのBackdropも変更。
 
こういう風に簡単に、新たなサウンドを持ったデバイスを作っていくことができる。
そして、それはパッチとして保存できるわけだから、再利用もできる。
 
さらに、Combinatorには、4つのロータリースイッチ、4つのON/OFFスイッチがあって、この8つは、内包している音源やエフェクターのコントロールに割り当てることができる。
一つのボタンに複数のコントロールを割り当てることができるから、
一つのロータリースイッチで、複数のシンセのレゾナンスをぐりぐり動かすことも可能。また、可変の範囲設定もできます。
 
上の画像の左側に鍵盤の絵があるのが見えますけど、こっちはキーマッピングを設定することができる。
複数のマッピングができるから、
例えば、C1音域にベース音源、C2音域にアルペジエータ音源、C3以上は普通のキーボード音源としてってキーボードスプリットも設定できます。
 
例えば、こんな風に。
C2で分割して、低音部をベース音源に変えてみましたが、さらにデバイスを組み合わせればワンキーでコードがなるようなデバイスも可能になります。
 
このCombinatorを使ったパッチ作りもReasonの制作過程上の重要な部分だと思います。
もちろん、Combinatorをまったく使わなくても制作はできます。2.5まではなかったんだし。
でも、あるなら使った方が楽だと思うし、Combinator内でのサウンドメイクを自分のスタイルに取り込んでおけば、Reasonで、さらに柔軟な制作が可能になります。