
kan-haru blog 2007
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「昭和 写真の1945~1989」展
東京都写真美術館で、「昭和 写真の1945~1989」展が開催されました。
戦後の日本はさまざまな変化を遂げ、焼け野原からの復興と人びとの生活の変化がありました。写真の展示構成は、東京都写真美術館の収蔵作品の中から、戦後の「昭和」を象徴する約600点の写真を選び時代別の4期に分け、第1部では、戦争の惨禍の後、占領下におかれていた昭和20年代を舞台に、新しい価値観を持ってこの時代をとらえた「オキュパイド・ジャパン(占領下の日本)」が、5月12日から6月24日までの期間開催されました。
丁度、若山武義氏の手記も、昭和戦後史を掲載中でもあり、昭和20年代の写真展はあまりなく関心がありましたので、期間中の6月23日に見てきました。
なお、この写真展の開催は、現在第2部の「ヒーロー・ヒロインの時代」では、力道山から長島茂雄、吉永小百合など、エネルギーにみちあふれた昭和30~40年代のヒーロー・ヒロインの姿を通じ、この時代を表現した展示が6月30日から8月19日まで開催中です。
また、第3部「高度成長期」昭和30~40年代 Part.2 が、8月25日~10月14日に開催され、第4部「オイルショックからバブルへ」昭和50年代以降 が10月20日~12月9日まで開催されます。
・写真展から見る「廃墟の時代」の想い
第1部の写真展示は、[パート1]「廃墟――焦土からの出発」の写真が27点あり、展示の写真の前に立つと、当時実体験の悲惨な姿が眼の前にありありと浮かんできて、しばしもの想いいに耽りました。
展示作品の中に、「敗戦の日の太陽、高田」(1945年8月15日)撮影の写真がありました。この写真を見て、すぐに、若山武義氏手記の、大森町大空襲爆撃で逃げまどって土手の上で、翌朝見た太陽の印象「ああ、深紅の太陽」(「大森町界隈あれこれ(15) 鎮魂!大森町大空襲(第9回)」参照)が浮かんできました。地球上で、どんなことがあっても、太陽はいつも同じ姿を見せます。
1945年8月15日は、関東は快晴で暑い太陽がじりじりと照り付ける中、私は疎開先の国民学校の校庭に集合して玉音放送を聞き、その時の照り付ける太陽が忘れられない記憶です。
若山武義氏の戦後史手記(1946年記述) 天皇制の問題集 第4回
政治法律上の責任なし、道徳的に責任あり
しかも陛下に最後の叡才がないわけではなかった。日本が存亡の最後の関頭に立ち至った時、国民を滅亡の渕から救うため、御一身を以ってポツダム宣言の受諾を宣明されたと云うことは、私共にまだ生々しいことである。今次の大戦において、陛下に政治上、法律上の責任のないことは明白である。しかし、御聖代においてかくの如き大戦が起り、しかも開国以来完全なる敗北で国民を悲惨な状態に陥し入れたことについては、宗祖に対し、また国民に対し、道徳的、精神的な責任を最も強く感じていられるのはけだし陛下であらうと私は拝察する。諸臣は臣節を弁えず、責任をとらず、その中にあって陛下がその御自覚を持たるることは、けだし我国至高の道徳の表明であって、我々が国民の中心として皇室を尊崇して来た所以であり、今後祖国の再建の精神的礎石は一にそれにかけられているからである。
このことを更に十分に御自覚遊ばされ、静かに苦悩に堪えられて、この歴史的混乱の時代を、憲法の改正へ、更に能うべくんば平和条約の締結へと御躬ら尊き義務を果たされてあることを私は拝察し、陛下の御心事に涙なきを得ないのである。
「自由の国」の建設
降伏後八ヶ月半、連合軍の指令下とは云え、いかに多くの変革が今上陛下の時代において行われつつあることであろうか。我々は戦の敗れたことを悲しむよりも、新しい日本の胎動を瞠目して待つものである。然してそれは陛下本来の御意思、亦国民本来の要望の実現に外ならぬ。即ち平和国家、高遠な理想を自覚した文化国家の創設。再び大権の名に隠れて国民の自由と批判を猱 する余地と危険の見出されぬ民主国家。もはや人が人により抑制と圧迫を加えらるることなき「自由の国」の建設である。
これ、世界に伍して恥ずるなき完全なものまでこの国を高めんとする君民一致の悲願に外ならぬ。この為には、古きが故に保持されると云うのではなく、むしろ進んで惜しみなく放棄せんとして、これを御自身事実の上に証明されつつあるのか陛下であろうと存じ上げる。そこにいささかの不自然さもない。
近く新憲法が制定されよう。あくまだポツダム宣言の條章に従い、日本国民の自由の意志の表現によって出来たものでなければならぬ。今迄の大権の中の多くのものが削られても、なほ、日本国家構成の最高の実現、日本国民統合の象徴として、天皇は永久に維持されなければならぬ。
それは単なる天皇制護持ではないのである。我国の長い歴史において、民族の結合の本源においてそれを支持して来たものである。それは、君主主義対民主主義という対立を超え、一君万民、国民共同体そのものの本質としてである。
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