USB-DACとして、長らくFostexのHP-A7を使ってきました。一方で、ノートPCとの組み合わせ使用のため常々USB部分の無線化を行いたいと考えていました。

USBデバイスサーバーというものを用いると、LAN経由でUSB-DACを動かすことができると知り市販品を購入しました。しかし肝心のHP-A7ではWindows側でエラーが出て接続できませんでした。

デバイスサーバーのメーカと何度かやり取りをして動作ログをとるなどして調査してもらいましたが、最終的にはHP-A7と接続できないのは仕様という事で決着を見ました。一方、購入したUSBデバイスサーバーは、秋月のUSB-DACでは接続が可能で、USB部分をWIFIで無線化することに成功できました。しかし、音質的にはHP-A7のほうが良いと感じたため、これには不満が残りました。

これらの事から、USB部分に秋月のキットで使用されているPCM2704ないし、同等のUSB-I/FをもつLSIならば、デバイスサーバーと接続できるのではないかと考えました。いっぽう、PCM2704よりももっと良いDACを組み合わせることを構想し、自作USB-DACを具現化することにしました。

回路構成ですが、USB-DACにPCM2706を用いました。これは、PCM2704と同等のUSB-I/Fを持ち、I2Sで外部に信号を出力できるためです。これに、同じTI製で音質が評判のPCM1792を組み合わせることにしました。PCM1792内のレジスタ制御を目的として、AVRマイコンであるATmega328PUを搭載しました。

我が家の音楽コンテンツにはハイレゾ音源は存在しないので、PCM2706が扱うことができる44kHzないし48kHzの音源を再生できるこの構成で十分でしたが、設計の過程で、サンプリングレートコンバーターなるデバイスがある事を知りました。これがあれば、44kHzのコンテンツも再生の過程でハード的にアップサンプリングされてハイレゾもどきの音を聞くことができると思い、SRC4192を採用しました。

USBの電源はPCのノイズがそのまま乗ってきて音質に悪影響を及ぼすと思われたため、アイソレータを使い電源、GNDを分離することにしました。ここにはアナログデバイセスのADUM1400を使用しました。

クロックに関しては、各LSI内でデータがオーバーラン、もしくはアンダーランしないように全体的には同期している必要があると思います。検討の結果、SRC4192が非同期のサンプリングレートコンバータで、このLSIの前後でクロックが非同期であっても破綻しないらしい(おそらくLSI内部で、前段のクロックと後段のクロックの非同期乗り換えを行い、さらにデータもリサンプリングしている)ために、SRC4192とPCM1792は水晶振動子と74HCU04で発振させた24.576MHzのクロックを用いることとしました。

PCM1792の出力以降は、当初はPCM1792の仕様書に掲載されている回路をそのまま利用しましたが、その後ディスクリートに組みなおしました。

以下に本機のブロック図を示します。



当家での使い勝手を考え、USB-DAC Blockの後段に入力セレクタとボリューム、さらに真空管の差動バッファ回路をつけてパワーアンプへ出力するプリアンプ機能を設けました。

真空管の差動バッファ回路は12AU7Aの差動増幅としました。なお、電源ON/OFF時のポップノイズ撲滅のため、ラッチ型のリレーを用いて真空管差動バッファ回路の出力をMuteすることにしました。リレーの駆動トリガーはATmega328PUより、電源投入後15秒待ってからONするようにプログラムしています。


電源は大きく2ブロックに分かれます。
まず、USB-DAC Blockに供給する電源について、電源トランスは、デジタル部とオペアンプよるIV回路と差動・シングル変換にトヨデンのHT2403を用いました。24V巻き線をセンタータップを用いて12V両波整流とし、ここから三端子レギュレータで+5, +3.3Vを生成しています。オペアンプに供給する±15Vは、同巻線を倍電圧整流して、同じく三端子レギュレータで作っています。

Analog Block用の電源は、B電源用に東栄のZT-03ESII、ヒーターにトヨデンのHT61を利用。B電源は当初はブリッジ整流後にFETリップルフィルタで整流し+205Vを生成しています。しかし、B電源の変動に出力がダイレクトに反応するため、家庭内のAC100Vの変動に応じて出力が変動する問題があることがわかったため、ここの電源は安定化を行い+214Vが得られるように変更しました。
ヒーターは、ブリッジ整流して6.3V DCを作っています。

回路図(USB-DAC部分)


ケースにはタカチのCU-5Nを利用。フロントパネルはアクリル板を使い、パネルのデザインは写真用紙に印刷し、アクリル板で挟んでいます。本機は、LCDパネルを取り付け、起動画面表示後、出力のレベル表示を行うようにしています。

出来栄えについては主観になりますが、サンプリングレートコンバーターの効能か、雰囲気のような、余韻のようなものを感じるようになりました。USB-DAC部分の配線をユニバーサル基板で手配線するのは非常に手間がかかりましたが、その甲斐があったと感じています。

 

USB I/F, SRC, DAC, IV変換回路, 制御マイコン

 

差動アンプ部

 

ロジック部電源

 

管球部電源

 

電源トランス