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とんねるずのみなさんのおかげでした」「めちゃ×2イケてるッ!」。フジテレビの黄金期を支えた長寿のバラエティーが3月で終了した。スマホの普及やネット動画の台頭……。テレビ視聴のあり方も大きく変わる中、バラエティー番組はどうなっていくのか。
《♪バラエティーを滅ぼすなよ/フジテレビをおちょくるなよ》
  3月22日、「みなさんのおかげでした」の最終回。スーツ姿で登場した石橋貴明木梨憲武は、1991年のヒット曲「情けねえ」の替え歌を歌い、フジのバラエティーを象徴する存在であり続けた30年の歴史に幕を閉じた。
  フジは80年代、「楽しくなければテレビじゃない」をキャッチコピーに、ビートたけし明石家さんまらが出演した「オレたちひょうきん族」を始める。TBS「8時だョ!全員集合」の牙城(がじょう)だった土曜夜8時で視聴率首位を奪った。
 前身の「みなさんのおかげです」が始まったのは88年。当時の人気ドラマや映画のパロディーで笑いを取った。とんねるずが番組スタッフの物まねをしたり、スタッフがCDデビューしたり。「部室の再現」とも評された。
 96年には、土曜夜8時で「めちゃ×2イケてるッ!」の放送が始まる。よゐこ、極楽とんぼなど、メインのお笑いコンビ・ナインティナイン以外はほぼ無名だったが、メンバーの結婚や出産まで映し出し、視聴者を引きつけた。
 テレビライターの戸部田誠(40)は「ひょうきん族までは番組のスパイスだった内輪ノリを意識的に極限まで追求した『みなさん』と、タレントの成長や人生をドキュメントとして見せた『めちゃイケ』。いずれも内輪ノリを生かした番組だった」と指摘する。
 両番組とも近年は視聴率1桁台が続いた。「社会の成熟とともに『みなさん』のようなハラスメントのにおいのするものは嫌われるようになってきた」と戸部田。めちゃイケについても、「成功物語として完結した側面もある」。
 フジの坪田譲治・第二制作室長(52)は「タレントの力をひき出すのは、昔からフジの強み。出演者、制作者、視聴者の距離が同じであるべきだったが、視聴者が遠くなってしまったのかもしれない」。
 ■「イッテQ!」「ナスD」人気 スターに頼らず見せ方で勝負
 一方で、放送開始から10年を超えた今も約20%の視聴率を維持する人気番組が日本テレビの「世界の果てまでイッテQ!」だ。
 演出の古立善之(43)は、一般の人の目線を持つように心がける。海外ロケのVTRを見て「これは感動する」「発言がちょっと生意気」といった初見の感想を基礎に、細かな編集にあたる。
 テレビでバラエティーが人気番組となって半世紀。今の作り手たちは既視感のない番組づくりに苦慮している。「枠と芸能人が先にあって、『何を伝える?』と考えている。本来は逆だと思う」と話す。自身は、「無名の人を見せる」ことを明確にした。「電波少年」以前から続く「お家芸」だ。97年の入社当時は「スターが出ない局だった」と振り返る。だが、イモトアヤコ、みやぞんらを見いだしたことで、「あの眉毛の太い子面白い」と、視聴者の見る動機を生んだ。
 テレビ東京の「池の水ぜんぶ抜く」など近年のヒットバラエティーには、「お約束」の笑いやスター頼みではない、偶発性にかけた番組が目立つ。
 「ナスD」こと友寄隆英ディレクターが人気をさらったテレビ朝日の「陸海空 地球征服するなんて」。秘境を訪ね、果実で全身が真っ黒になるなど破天荒な行動が話題を呼んだ。総合演出の米田裕一(36)は「最初からディレクターを出そうと思っていたわけではない」と明かす。不定期の長期間ロケでタレントを押さえるのが難しかったためだという。
 「時間をかけて奥地まで行ったからとれた映像。どう見せるかを考えた時、最適な調理法だった」。今月からゴールデンに進出する「帰れマンデー見っけ隊!!」も担当する。「素材に対してどの調理法が合うか。ピタッとはまらないと舌が肥えた視聴者には受けない」(敬称略。視聴率はビデオリサーチ調べ。関東地区)