【HK9S/EDUCE/022】◎光をめぐる競争 ~植物たちの戦略~◎ | HK5STUDIO/CONVENI

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植物の光合成には光が欠かせません。
しかし、光は強ければ強いほどいいというわけではありません。
植物は太陽の光を浴びて光合成ができるように、種類によってそれぞれ戦略を持っています。
今日は、植物と光の関係を見ていきます。
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植物は、光がなくては生きていけません。
モヤシのもとになるヤエナリの種を発芽させ、一方から光を当てると、光の方を向きます。
すると、葉が沢山の光を受けます。
反対側から光を当てると、また光のある方向に向いていきます。
このように、植物は光をたくさん受けることができる方向に伸びていきます。
ツル植物のクズは、土のない道路でも、はって伸びていきます。
そして、その先に絡み付くものがあれば、ツルを巻き付けて上へ上へと伸びていきます。
光を求めて、他の植物よりも、できるだけ高くなろうとするためです。
植物にとって、光が欠かせないことは樹木の形からもわかります。
ヒノキは上の方がとがって、全体が山のような形をしています。
この木の形は、効率良く太陽の光を受けるのに都合の良い形です。
葉の付き方を見てみると、高いところの葉は、ほぼ垂直に立っていることがわかります。
そして、下の方の葉は、斜め上の方向に伸びています。
また、となり合う葉は、光をさえぎることのないよう、互いに重なり合わないようになっています。
ヒノキが山のような形をしているのは、どの葉にも光が良く当たるようにして、光合成を効率良くできるように
しているからです。
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光合成は、次のような反応式で表されます。
二酸化炭素 + 水 + 光エネルギー → グルコース + 酸素
光合成では、植物が生きていくためのエネルギーの材料=グルコースなどの有機物を作ります。
では、光のエネルギーは、強ければ強いほど、つまり植物が光をたくさん浴びれば浴びるほど
良いのでしょうか。
オオカナダモを使って、光の強さと光合成の関係を調べてみます。
オオカナダモに光を当て、光の強さとオオカナダモが光合成をして排出する酸素の量の関係を調べてみます。
酸素の量が多ければ多いほど、光合成が盛んに行われていることを示しています。
水の入った容器の中にオオカナダモの葉を入れて、徐々に強い光を当てます。
このとき、光合成で発生した酸素の量を記録していきます。
オオカナダモを細かく刻み、実験装置の容器に入れます。
これは、
 ・ オオカナダモの葉に、光がまんべんなく当たるようにするため
 ・ 光合成で発生した酸素を水の中で均一にして、酸素の量を正しくはかるため
です。
最初に、オオカナダモを幕で覆い、光の当たらない状態での酸素の発生量をはかります。
次に、覆いを取り、1000ルクスから徐々に強い光を当てて行き、酸素の発生量の変化を調べます。
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光の強さが0の時の酸素の発生量は、毎時-0.7ミリリットルでした。
光の強さが1000ルクスの時、光合成で発生する酸素の量と呼吸で消費する酸素の量が等しくなりました。
2000ルクス、4000ルクス、6000ルクスと光を強くしていくと酸素の発生量が増えていきますが、
6000ルクスから先は、さらに光を強く当てても、酸素の発生量は変わらなくなりました。
実験結果を表すグラフ(右図)は、横軸が光の強さ、縦軸が1時間あたりの酸素の発生量です。
光をさえぎって、光のの強さが0の時、酸素の発生量はマイナスになっています。
これは、植物が光合成だけでなく呼吸もしているからです。
光をさえぎているので、光合成は行われず、酸素の発生はありません。
しかし、呼吸をして酸素を消費しているので、差し引きマイナスになるのです。
覆いを取って、オオカナダモに光を当て、徐々に光りを強くしていくと、やがて測定装置の酸素の発生量が
0になりました。
この時の光の強さを、補償点といいます。
補償点では、光合成で発生する酸素の量と呼吸で消費される酸素の量が釣り合って、
プラスマイナス0になります。
さらに光を強くしていくと、酸素の発生量は増えていきます。
しかし、ある所から、いくら光を強くしても酸素の発生量が変わらなくなりました。
この時の光の強さを、光飽和点といいます。
光飽和点以上の光を当てても、光合成の量は変わりません。
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植物は日向を好む植物=陽生植物と、日陰でも育つ植物=陰生植物に分けることができます。
陽生植物には、
 ・ ヒマワリ
 ・ タンポポ
 ・ アブラナ
などがいます。
一方、陰生植物には、
・ シダ植物
・ コケ
などがいます。
中の図は、陽生植物と陰生植物の、光の強さと酸素の発生量をグラフにしたものです。
日陰でも育つことのできる陰生植物は、陽生植物と比べて補償点が低いことがわかります。
シダ植物やコケなどが薄暗い所でも成長できるのは、補償点が低いためです。
植物の中には、変化する周囲の環境に足並みを揃えるようにして1年を送るものがいます。
埼玉県秩父市の冬の里山に、カタクリが花を咲かせていました。
カタクリの花が咲いているところに、目印を付けておきます。
季節が変わり、夏になりました。
冬、カタクリが咲いていた場所には、カタクリの姿は見当たりません。
土の中を掘っていくと、白いカタクリの球根を見つけることができました。
カタクリは冬から春先にだけ、その姿を地上に現します。
周りの木々が葉を落とし、太陽の光が地面一杯に降り注ぐこの時期に、カタクリは光合成を行います。
そして、それ以外の時期には、球根として地中ですごすのです。
「光合成ができるようになる冬が来るまで、土の中でじっとしている。」
カタクリは、光をめぐって、このような戦略をとっています。