【HK9S/EDUCE/012】◎力学的エネルギー◎ | HK5STUDIO/CONVENI

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スキーのジャンプ台を滑降する選手のように、高さの違いを利用してスピードを増していく運動では、エネルギーはどのように変化していくのだろうか。そこにはどんな法則が成り立っているのだろうか。
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スキーのジャンプ競技・ラージヒルで、選手がジャンプ台から飛び出すときの速さは
時速90km前後になるそうです。
そのエネルギーの源は何なのでしょうか?一緒に考えていきましょう!
発砲スチロールに刺さった釘の上におもりを落とすと、釘がさらに深くまで刺さります。
もっと高いところから落とすと、釘はさらに深く刺さりました。
このことから、高いところにあるものの方が、位置エネルギーが大きいと言えます。
高さによって位置エネルギーの大きさがどのように変化するのか調べてみます。
杭がゴムで挟まれていて、上からおもりを落とすと杭が動くようになっています。
この移動距離によってエネルギーの大きさが比較できます。
最初に10cmの高さからおもりを落とすと、1cm動きました。
次に、20cmの高さから落とすと、1.9cm動きました。
最後に30cmの高さから落とすと、3cm動きました。
この結果、杭の動く距離、つまり位置エネルギーの大きさは、おもりを落とした高さに比例することがわかりました。
次に、おもりの質量を変えて調べてみます。
3つのおもりを、それぞれ30cmの高さから落とします。
60gのおもりを落とすと、0.95cm動きました。
2倍の120gのおもりを落とすと、1.9cm動きました。
3倍の180gのおもりを落とすと、3cm動きました。
位置エネルギーの大きさは、落としたおもりの質量にも比例することがわかりました。
力を加えて移動させることを仕事といいます。
高いところにある物体が持つ位置エネルギーを求めるには、
その物体がそこまで持ち上げられるのにされた仕事の量がわかればよいのです。
さて、質量mのバケツを持ち上げるには、バケツが受けている重力と同じmg〔N〕の力で引っ張れば、持ち上げることができます。
バケツを、高さhの位置まで持ち上げる仕事を計算してみます。
仕事〔J〕=力〔N〕×移動距離〔m〕です。
高さhだけ持ち上げるのですから、仕事〔J〕=mg×h となります。
この仕事は、そのままバケツの位置エネルギーになります。
高さhの位置にある、質量mの物体がもつ位置エネルギーはmgh〔J〕であることがわかります。
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速ければ速いほど大きいのは、運動エネルギーです。
運動エネルギーの大きさと、物体の速さの関係を調べてみましょう。
位置エネルギーの測定で使用した装置を、横向きに置いて使います。
装置に力学台車を衝突させます。
力学台車の先についている棒が速度計を通過すると、力学台車の速さが測れます。
力学台車の速さが0.76m/sのとき、杭の移動距離は0.8cmです。
次に、速さを1.54m/sにすると、杭の移動距離は3.1cmになりました。
力学台車の速さがおよそ2倍になると、杭の移動距離はおよそ4倍になりました。
運動エネルギーが速さの2乗に比例しています。
質量を変えると運動エネルギーはどうなるのか調べてみましょう。
力学台車1台で速さは1.01m/sのとき、杭の移動距離は1.4cmです。
次に、力学台車2台で質量を2倍にして、速さは1台の時とほぼ同じ1.06m/sで衝突させると、
杭の移動距離は2.9cmとなりました。
同じ速さの時、質量が2倍になると、杭の移動距離もおよそ2倍になることがわかります。
運動エネルギーが質量に比例しているのです。
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吹き矢を使って、仕事と運動エネルギーとの関係を調べる実験をします。
短い吹き矢と、長い吹き矢を同じ力で吹いた場合、長い吹き矢の方が遠くまで飛びました。
仕事は、「力×その方向への移動距離」で求められましたね。
チューブの中で息が矢を押す力はどちらもほぼ同じですが、長い吹き矢の方は押されている距離が長いので、長い吹き矢の方が大きい仕事ができるのです。
つまり、運動エネルギーも大きくなります。
質量mの物体が速さvで動くときの運動エネルギーを計算することができます。
質量mの吹き矢を力Fでs〔m〕押した場合の仕事を考えてみましょう。
矢が筒を抜けるまでt秒間かかったとして、加速度をaとします。
吹き矢は、筒の中では等加速度直線運動をしています。
したがって、v=at、S=(1/2)at2が成り立ちます。
また、筒の中で吹き矢は、力Fで加速度をもって運動しています。
したがって運動方程式F=maも成り立ちます。
仕事=力(F)×移動距離(S)で求められます。
ここに、等加速度直線運動の式と、運動方程式を代入すると、仕事=(1/2)mv2となります。
吹き矢がされた仕事がそのまま運動エネルギーになるので、(1/2)mv2が、質量m速さvの矢がもつ運動エネルギーを表します。
つまり、「運動エネルギー=(1/2)mv2」となります。
この式を見ると、運動エネルギーは質量に比例することが分かります。
そして、運動エネルギーは速度の2乗に比例するということもわかります。
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位置エネルギーと運動エネルギーを合わせて、力学的エネルギーといいます。
以前学習した、力学的エネルギー保存の法則は覚えていますか?
例えば、振り子が一番高いところにある時、位置エネルギーは最大で、運動エネルギーはゼロ。
振り子が一番低いところにある時、位置エネルギーはゼロで、運動エネルギーは最大です。
このように、位置エネルギーと運動エネルギーを足し合わせると一定になるということを、
力学的エネルギー保存の法則といいます。
左の図は、振り子のおもりのその時々の位置における位置エネルギーと運動エネルギーの割合を表しています。
おもりが一番高いところにある時、式で表すと「mgh+0」となります。
おもりが一番低いところにある時、式で表すと「0+(1/2)mv2」となります。
力学的エネルギー保存の法則が成り立つので、「mgh+0」と「0+(1/2)mv2」は同じ大きさです。
つまり、「mgh+0=0+(1/2)mv2」となります。
この式を整理すると、「v=√(2gh)」となります。
この式は、高さhで振り子から手を離すと、おもりが一番低い位置を通過した時の速さがvになることを表しています。
上記の式が本当に成り立つのか、振り子を使って調べてみます。
おもりの通過する最下点に、速度計を置きます。
振り子を20cmの高さから振り下ろした場合、速度は2.08m/sでした。
計算でもその値になるのか確かめてみましょう。
値を式に代入してみましょう。重力加速度は10として計算します。
v=√(2×10×0.2)
=√4=2
計算で求めた値は2〔m/s〕になりました。
計算で求めた値と、実験で得られた値は非常に近い値になりました。
したがって、力学的エネルギー保存の法則が確かに成り立っていることがわかりました。