カルボン酸は、分子中にカルボキシ基 -COOH を持ち、動物や植物に含まれる成分です。カルボン酸とアルコールを縮合するとエステルができます。カルボン酸やエステルの製法や性質、その反応を学びます。


カルボン酸とエステルのなかまを紹介しましょう。
まずは、カルボン酸のなかま、から。
ギ酸はアリから発見されました。ギ酸のギは、蟻(あり)という字を書きます。
酢酸は、強烈なお酢の臭いがします。酢酸は、食酢の中に4~5%含まれています。
乳酸は、チーズやヨーグルトに含まれています。
続いて、エステルのなかまです。
酢酸エチルは、接着剤の中に含まれています。また、果物の香り成分にも含まれています。
酪酸イソアミルは、あんずのような香りがします。エステルは、良い香りがするものが多く、
香料などにも使われます。
ポリエステルは、衣服やペットボトルなどの原料になるものです。
また、和ろうそくや中性洗剤、ダイナマイトに含まれるニトログリセリンもエステルです。
カルボキシ基を持つ物質を、カルボン酸といいます。
一番簡単な構造のカルボン酸は、ギ酸です。示性式は、H-COOH となります。
カルボキシ基の -COOH に、Hがついた構造です。
ギ酸のHがメチル基のCH3に変わると、酢酸になります。
このようにカルボン酸は、いずれもカルボキシ基を持っています。
カルボン酸は名前のとおり酸なので、酸としての性質を示します。
カルボン酸の性質を調べる実験をしましょう。
試験管に酸の代表として塩酸。カルボン酸の代表として、ギ酸、酢酸を用意しました。
塩酸は、塩化水素 HCl が水に溶けたものです。
では、ギ酸やカルボン酸も水に溶けやすいのでしょうか。
水の入った試験管にギ酸を入れると溶けました。また、水の入った試験管に酢酸を入れると、
これも溶けました。
ギ酸や酢酸のように、カルボン酸の中でも炭素数の少ないものは水に溶けやすい性質があります。
続いて、この水溶液にリトマス試験紙を入れてみます。.
すると、塩酸、ギ酸、酢酸の全てが赤くなりました。
リトマス紙が青から赤になったことから、いずれも酸性であることがわかります。
次に、それぞれの水溶液にマグネシウムを入れてみます。
塩酸に入れると、激しく反応して気体が発生しました。
ギ酸に入れると、塩酸よりはゆるやかですが、盛んに反応して気体が発生しました。
酢酸に入れると、一番反応はゆるやかですが、気体が発生しました。
それぞの気体に火をつけると、いずれもポンという独特の音を出して燃えることから、発生した気体は
水素であることがわかります。
実験の結果をまとめてみます。
カルボン酸は、カルボキシ基を持っていて、炭素数が少ないと、水に溶けやすいという性質があります。
そのため、炭素数1のギ酸も、炭素数2の酢酸も水によく溶けました。
酸の性質を示すのは、水素イオン H+です。
ギ酸や酢酸が、どのように水素イオンを出すのか反応式で見てみましょう。
中の図、ギ酸の-COOHのHがはずれて、水素イオンになり酸としての性質を示します。
右の図、酢酸も-COOHのHがはずれて、酸の性質を示しました。
このH+が、リトマス紙を赤くしたり、マグネシウムと反応して水素を発生したりしたのです。
カルボン酸は酸である、ということを覚えておきましょう。
左の図、乳酸の構造には興味深い点があります。
中心の炭素原子にH、CH3-、-OH、-COOHと異なる4つの原子団がついています。
このように、4つの異なる原子団がついている炭素原子のことを、不斉炭素原子といいます。
不斉とは、同じものが無いという意味です。
乳酸の立体模型を見ると、炭素原子を中心にした正四面体になっています。
真ん中に黒い不斉炭素原子。赤が-OH、黄色は-COOH、青がH、緑がCH3-です。
実は、乳酸には、中の図のように、これを鏡に映したような構造を持つ異性体があります。
重ね合わせてみると、青と緑は一致しますが、赤と黄色は逆になってしまいます。
そこで、赤と黄色を合わせると、今度は、青と緑が逆になってしまいます。
このように、鏡に映したような関係を持つ異性体を、光学異性体といいます。
このような光学異性体の研究で、2001年、日本人化学者の野依(のより)良治博士はノベル化学賞を
受賞しました。


エステルは、酸とアルコールから水がとれた構造の物質です。
例えば、左の図のように、酸をカルボン酸にしてアルコールと反応させます。RとR´は炭化水素基を
表します。
すると、-COOH のOHと、アルコールのHが反応して水が取れて、炭化水素基と炭化水素基に、
-COO-がはさまれた結合ができます。
これをエステル結合といいます。
エステル結合がある物質のことを、エステルといいます。
試験管に入ったカルボン酸の酢酸に、アルコールのエタノールを加え、さらに濃硫酸を加えます。
試験管に空冷管を取り付けておき、お湯の中に入れ、反応させます。
しばらくすると、発生した蒸気が空冷管で冷やされて液体となり、試験管に戻ってきます。
十分に反応したら、試験管をお湯から取り出して水を加えます。
溶液が、中の写真のように、2層になりました。
これは、水に溶けにくい酢酸エチルという物質が生成したからです。
生成した酢酸エチルの性質を発泡スチロールとの反応で調べてみます。
まず、発泡スチロールに反応前のエタノールをかけてみましたが、反応しません。
次に、酢酸をかけましたが、やはり変化はありません。
ところが、反応後にできた酢酸エチルをかけると、激しく反応して融けてしまいました。
反応前のエタノールはアルコールの臭い、酢酸はお酢の臭いがします。
そして、反応してできた酢酸メチルは、接着剤の臭いがします。
実験を、まとめてみましょう。
反応前、炭素数が少なく、-OHや-COOHがついていると、水に溶けやすい性質があるので、
試験管の中の酢酸やエタノールは水に溶けています。
ところが、反応すると、-OHや-COOHがなくなるので水に溶けにくくなります。
示性式で見てみましょう。
酢酸の-COOHのOHと、エタノールの-OHのHが反応して、水ができます。
水がとれた結果、炭化水素基と炭化水素基の間に-COO-ができて、エステルになったのです。
普通、エステルはカルボン酸のエステルを指しますが、他の酸からもできます。
例えば、硫酸や硝酸、リン酸のエステルもあります。
エステルは、ダイナマイトの原料にもなっています。
ダイナマイトは混酸 (濃硝酸と濃硫酸を混合したもの)と、アルコールのグリセリンからつくられます。
混酸とグリセリンを特殊な装置を使って反応させます。
つまり、酸とアルコールからニトログリセリンというエステルを合成するのです。
合成したニトログリセリンを洗浄して、残った酸などを取り除き、ニトログリセリンの純度を高めると、
無色透明な液体・ニトログリセリンができました。
これが、ダイナマイトの原料です。
このニトログリセリンに、燃えやすい性質を持つニトロセルロースを加えてかき混ぜると、ゲル状の
ニトログリセリンになります。
ゲル状のニトログリセリンに、酸化剤と可燃剤のデンプンを配合したものをよく混ぜ合わせ紙に巻くと、
ダイナマイトができあがります。
ダイナマイトは、主にトンネル工事などに使われています。


エステルは塩基や酸を加えると分解します。
塩基を加えるとカルボン酸の塩とアルコールに、酸を加えるとカルボン酸とアルコールに分解します。
エステルと塩基の反応を、実験で見てみましょう。
試験管に水酸化ナトリウム水溶液を入れて、そこにエステルの酢酸エチルを加えます。
すると、左の写真のように、2層に分かれました。
試験管に空冷管をつけて加熱します。
しばらくすると、発生した蒸気が冷やされて、液体になり、試験管に戻ってきます。
加熱を止めて、試験管の中をみると、もう2層には分かれていません。
水に溶けにくい酢酸エチルが分解して、水に溶けやすい物質に変わったからです。
この反応を化学式で考えてみましょう。
酢酸エチルは、水に溶けにくい性質でした。
酢酸エチルに水酸化ナトリウムを反応させると、エステル結合 -COO- の2つのOの間を切って、
酢酸ナトリウム (カルボン酸の塩) とエタノール (アルコール)になります。
どちらも水に溶けやすい物質なので一層になったのです。
水酸化ナトリウム水溶液のような塩基でエステルを分解する反応のことを、けん化といいます。
エルテルを酸と反応させても、エステルは分解します。
酢酸エチルに硫酸を加えた場合を、右の化学式でみてみましょう。
この場合は、水が作用してエステル結合を切断します。
すると、エステルは酸とアルコールのエタノールに分かれます。
エステルと酸の反応では、水が作用してエステルを分解するので、加水分解といいます。


左の図、「けん化」は、塩基でエステルを分解。
中の図、「加水分解」は、水が作用しますが、触媒として酸を使います。


カルボン酸とエステルのなかまを紹介しましょう。
まずは、カルボン酸のなかま、から。
ギ酸はアリから発見されました。ギ酸のギは、蟻(あり)という字を書きます。
酢酸は、強烈なお酢の臭いがします。酢酸は、食酢の中に4~5%含まれています。
乳酸は、チーズやヨーグルトに含まれています。
続いて、エステルのなかまです。
酢酸エチルは、接着剤の中に含まれています。また、果物の香り成分にも含まれています。
酪酸イソアミルは、あんずのような香りがします。エステルは、良い香りがするものが多く、
香料などにも使われます。
ポリエステルは、衣服やペットボトルなどの原料になるものです。
また、和ろうそくや中性洗剤、ダイナマイトに含まれるニトログリセリンもエステルです。
カルボキシ基を持つ物質を、カルボン酸といいます。
一番簡単な構造のカルボン酸は、ギ酸です。示性式は、H-COOH となります。
カルボキシ基の -COOH に、Hがついた構造です。
ギ酸のHがメチル基のCH3に変わると、酢酸になります。
このようにカルボン酸は、いずれもカルボキシ基を持っています。
カルボン酸は名前のとおり酸なので、酸としての性質を示します。
カルボン酸の性質を調べる実験をしましょう。
試験管に酸の代表として塩酸。カルボン酸の代表として、ギ酸、酢酸を用意しました。
塩酸は、塩化水素 HCl が水に溶けたものです。
では、ギ酸やカルボン酸も水に溶けやすいのでしょうか。
水の入った試験管にギ酸を入れると溶けました。また、水の入った試験管に酢酸を入れると、
これも溶けました。
ギ酸や酢酸のように、カルボン酸の中でも炭素数の少ないものは水に溶けやすい性質があります。
続いて、この水溶液にリトマス試験紙を入れてみます。.
すると、塩酸、ギ酸、酢酸の全てが赤くなりました。
リトマス紙が青から赤になったことから、いずれも酸性であることがわかります。
次に、それぞれの水溶液にマグネシウムを入れてみます。
塩酸に入れると、激しく反応して気体が発生しました。
ギ酸に入れると、塩酸よりはゆるやかですが、盛んに反応して気体が発生しました。
酢酸に入れると、一番反応はゆるやかですが、気体が発生しました。
それぞの気体に火をつけると、いずれもポンという独特の音を出して燃えることから、発生した気体は
水素であることがわかります。
実験の結果をまとめてみます。
カルボン酸は、カルボキシ基を持っていて、炭素数が少ないと、水に溶けやすいという性質があります。
そのため、炭素数1のギ酸も、炭素数2の酢酸も水によく溶けました。
酸の性質を示すのは、水素イオン H+です。
ギ酸や酢酸が、どのように水素イオンを出すのか反応式で見てみましょう。
中の図、ギ酸の-COOHのHがはずれて、水素イオンになり酸としての性質を示します。
右の図、酢酸も-COOHのHがはずれて、酸の性質を示しました。
このH+が、リトマス紙を赤くしたり、マグネシウムと反応して水素を発生したりしたのです。
カルボン酸は酸である、ということを覚えておきましょう。
左の図、乳酸の構造には興味深い点があります。
中心の炭素原子にH、CH3-、-OH、-COOHと異なる4つの原子団がついています。
このように、4つの異なる原子団がついている炭素原子のことを、不斉炭素原子といいます。
不斉とは、同じものが無いという意味です。
乳酸の立体模型を見ると、炭素原子を中心にした正四面体になっています。
真ん中に黒い不斉炭素原子。赤が-OH、黄色は-COOH、青がH、緑がCH3-です。
実は、乳酸には、中の図のように、これを鏡に映したような構造を持つ異性体があります。
重ね合わせてみると、青と緑は一致しますが、赤と黄色は逆になってしまいます。
そこで、赤と黄色を合わせると、今度は、青と緑が逆になってしまいます。
このように、鏡に映したような関係を持つ異性体を、光学異性体といいます。
このような光学異性体の研究で、2001年、日本人化学者の野依(のより)良治博士はノベル化学賞を
受賞しました。


エステルは、酸とアルコールから水がとれた構造の物質です。
例えば、左の図のように、酸をカルボン酸にしてアルコールと反応させます。RとR´は炭化水素基を
表します。
すると、-COOH のOHと、アルコールのHが反応して水が取れて、炭化水素基と炭化水素基に、
-COO-がはさまれた結合ができます。
これをエステル結合といいます。
エステル結合がある物質のことを、エステルといいます。
試験管に入ったカルボン酸の酢酸に、アルコールのエタノールを加え、さらに濃硫酸を加えます。
試験管に空冷管を取り付けておき、お湯の中に入れ、反応させます。
しばらくすると、発生した蒸気が空冷管で冷やされて液体となり、試験管に戻ってきます。
十分に反応したら、試験管をお湯から取り出して水を加えます。
溶液が、中の写真のように、2層になりました。
これは、水に溶けにくい酢酸エチルという物質が生成したからです。
生成した酢酸エチルの性質を発泡スチロールとの反応で調べてみます。
まず、発泡スチロールに反応前のエタノールをかけてみましたが、反応しません。
次に、酢酸をかけましたが、やはり変化はありません。
ところが、反応後にできた酢酸エチルをかけると、激しく反応して融けてしまいました。
反応前のエタノールはアルコールの臭い、酢酸はお酢の臭いがします。
そして、反応してできた酢酸メチルは、接着剤の臭いがします。
実験を、まとめてみましょう。
反応前、炭素数が少なく、-OHや-COOHがついていると、水に溶けやすい性質があるので、
試験管の中の酢酸やエタノールは水に溶けています。
ところが、反応すると、-OHや-COOHがなくなるので水に溶けにくくなります。
示性式で見てみましょう。
酢酸の-COOHのOHと、エタノールの-OHのHが反応して、水ができます。
水がとれた結果、炭化水素基と炭化水素基の間に-COO-ができて、エステルになったのです。
普通、エステルはカルボン酸のエステルを指しますが、他の酸からもできます。
例えば、硫酸や硝酸、リン酸のエステルもあります。
エステルは、ダイナマイトの原料にもなっています。
ダイナマイトは混酸 (濃硝酸と濃硫酸を混合したもの)と、アルコールのグリセリンからつくられます。
混酸とグリセリンを特殊な装置を使って反応させます。
つまり、酸とアルコールからニトログリセリンというエステルを合成するのです。
合成したニトログリセリンを洗浄して、残った酸などを取り除き、ニトログリセリンの純度を高めると、
無色透明な液体・ニトログリセリンができました。
これが、ダイナマイトの原料です。
このニトログリセリンに、燃えやすい性質を持つニトロセルロースを加えてかき混ぜると、ゲル状の
ニトログリセリンになります。
ゲル状のニトログリセリンに、酸化剤と可燃剤のデンプンを配合したものをよく混ぜ合わせ紙に巻くと、
ダイナマイトができあがります。
ダイナマイトは、主にトンネル工事などに使われています。


エステルは塩基や酸を加えると分解します。
塩基を加えるとカルボン酸の塩とアルコールに、酸を加えるとカルボン酸とアルコールに分解します。
エステルと塩基の反応を、実験で見てみましょう。
試験管に水酸化ナトリウム水溶液を入れて、そこにエステルの酢酸エチルを加えます。
すると、左の写真のように、2層に分かれました。
試験管に空冷管をつけて加熱します。
しばらくすると、発生した蒸気が冷やされて、液体になり、試験管に戻ってきます。
加熱を止めて、試験管の中をみると、もう2層には分かれていません。
水に溶けにくい酢酸エチルが分解して、水に溶けやすい物質に変わったからです。
この反応を化学式で考えてみましょう。
酢酸エチルは、水に溶けにくい性質でした。
酢酸エチルに水酸化ナトリウムを反応させると、エステル結合 -COO- の2つのOの間を切って、
酢酸ナトリウム (カルボン酸の塩) とエタノール (アルコール)になります。
どちらも水に溶けやすい物質なので一層になったのです。
水酸化ナトリウム水溶液のような塩基でエステルを分解する反応のことを、けん化といいます。
エルテルを酸と反応させても、エステルは分解します。
酢酸エチルに硫酸を加えた場合を、右の化学式でみてみましょう。
この場合は、水が作用してエステル結合を切断します。
すると、エステルは酸とアルコールのエタノールに分かれます。
エステルと酸の反応では、水が作用してエステルを分解するので、加水分解といいます。


左の図、「けん化」は、塩基でエステルを分解。
中の図、「加水分解」は、水が作用しますが、触媒として酸を使います。