【HK9S/EDUCE/003】◎近づくサイレン、遠ざかるサイレン◎ | HK5STUDIO/CONVENI

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今回は、音源が動く場合など、音についての発展的内容について学習していきましょう。
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救急車が目の前を通過すると音が低く聞こえます。このような現象をドップラー効果といいます。1842年、クリスチャン・ドップラーが、この現象を説明しました。
なぜ遠ざかるサイレンの音は低く聞こえるのか、水面波を使って考えてみましょう。
水をはった容器にスポイトで空気を送り、円形波を作ります。スポイトで作った波源は音波で考えた場合は音源です。水面の一点に振動を加えると、波源を中心に波が広がって行きます。波源を移動させると、進行方向の前では波の間隔が小さく、後ろでは間隔が大きくなります。つまり、前の方では波長が短くなり、後ろでは波長が長くなっています。
救急車が近づくときと遠ざかるときのサイレンの音の変化を見てみましょう。直線で800メートルの滑走路を一定の速さで走って音の変化を観察します。この時の温度は22℃、速度は時速40キロメートルです。救急車のサイレンの音の変化をスペクトラム アナライザーという測定器で分析します。すると、止まっているときの音は770ヘルツ、近づくときの音は795ヘルツ、遠ざかるときの音は740ヘルツでした。
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音源が止まっている場合、音の速さをVとすると、音は左右どちらにも1秒間にV[m]進みます。このときの音源の振動数をfo[Hz]、波長をλとします。音源である救急車が止まっているので、どこも同じ波長になっています。これは、1秒当たり波長λの波がfo個入っていることになります。この状態では、左右どちらも同じ音で聞こえます。
音源が動いた場合、音源が近づく場合を考えましょう。音は1秒間にやはりV[m]進みます。しかし、その音源が1秒間にνs[m]移動した場合、音は(V-νs)[m]の間に fo個の波があることになるので、ひとつの波の長さλ’=(V-νs)/foとなります。この波長を前方の観測者が聞くことになります。
波長が変わりますが、観測者が聞く音速はV[m/秒]のままなので、観測者が聞く振動数f[Hz]は、波の式V=fλ’を変形したf=V/λ’に代入して、f=Vfo/(V-νs)という関係式が成り立ちます。この式から、分母が小さくなるので、もとの振動数よりも大きくなり、音が高くなることがわかります。
次に、音源が遠ざかる場合を考えましょう。fo個の波が(V+νs)[m]の中にあるので、音源が近づく場合と同じように考えると、f=Vfo/(V+νs)という関係式が成り立ちます。この式から、分母が大きくなるので、もとの振動数よりも小さくなり、音が低くなることがわかります。
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次に、速度が80キロの時、移動する音源の振動数を調べました。すると、近づくときの振動数は817.5ヘルツ、遠ざかるときの振動数は722.5ヘルツでした。近づくときの周波数はより大きく、遠ざかるときは、より小さくなりました。先ほどの式にあてはめて考えると、νsの値が大きくなるので、近づく場合にはf(振動数)の値は大きくなり、音が高くなることがわかります。逆に遠ざかる場合にはf(振動数)の値が小さくなるので、音が低くなることがわかります。
今度は観測者が移動した場合を考えてみましょう。サイレンを鳴らして停車している救急車の前を、別の車を時速40kmで走らせて観測します。すると、近づくときの周波数は792.5ヘルツ、遠ざかるときの周波数は745ヘルツになりました。また、速さを時速80kmに変えると、近づくときの周波数は817.5ヘルツ、遠ざかるときは722.5ヘルツでした。
現象としては、音源が移動する場合と同じに見えますが、実は違うことが起きています。
音源が出す振動数foと波長λは一定です。観測者が静止しているとき、音は1秒当たりV〔m〕通り過ぎていきます。しかし、観測者が速さνo で音源に近づく場合、1秒間あたりνo〔m〕分だけ、聞く音が増えるわけです。V〔m〕のときfo個の波に対して(V+νo)〔m〕のときの波の数 f=(V+νo )fo/V と表わせます。このとき、分子の数が大きくなるので、fはfoよりも大きくなり、音は高く聞こえるのです。反対に遠ざかるときには、(V-νo )の中にある振動数は、f=(V-νo )fo/V と表わせます。このとき、分子が小さくなるので、fの値はfoよりも小さくなり、音は低く聞こえます。
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同じ振動数の音叉を2つ用意しました。1つ1つ叩いたときと、2つの音叉を同時に叩いたときでは、波形も聞こえ方も変わりませんでした。振動数が一緒のときに起きる干渉は、観測者がその間を移動しないとわからないのです。
次に、一方の音叉におもりを付けて、振動数を小さくします。おもりを付けた音叉お叩くと、音は少し低くなりましたが、波形は変わりませんでした。しかし、両方の音叉を一緒に叩くと、波形も聞こえ方も変わりました。これは2つの音の振動数がずれているからです。
波Aと波Bは波長がずれています。2つの波が同時に聞こえると、強めあう部分と弱めあう部分ができて合成波Cの様に聞こえます。これがうなりです。
1秒あたりに聞こえるうなりの数をf、波Aの振動数f1、波Bの振動数f2、とすると、f=f1-f2 (f1>f2)という関係式がなりたちます。両方の振動数が近いほど、うなりの振動数は小さくなり、、完全に一致するとうなりは消えます。完全に一致した状態、つまり、うなりが0の状態が一番きもちいいということです
医療の分野では、検査のためにドップラー効果が活用されています。
超音波ドップラー血流計は、超音波を血流に向けて発信して、血液に当たって反射する超音波の波長を測定し、血流の速度や流れが正しい方向に向いているかを調べる機械です。
血の流れの速さによってドップラー効果が生じるため、超音波の波長は変化して装置に戻ってきます。この原理を応用したカラードップラーと呼ばれる装置を使うと、心臓が正しく動いているか、一目でわかります。赤く示された部分は近づいて来る血流、青は遠ざかっていく血流です。
急激な天候の変化を観測するのにも、ドップラー効果が応用されています。
ドップラーレーダーと呼ばれる装置は、雲の中の水滴の固まりに電波をあて、その反射した電波を調べます。向かい風の場合、反射した電波は波長が短くなり、追い風の場合は波長が長くなります。この違いを検知して、風の強さを測るのです。