「イランがホルムズ海峡を封鎖すると東海地方が停電になる」。政府内でこんな懸念が浮上している。

イラン情勢の緊迫化で中東諸国から原油輸入が止まる恐れはよく指摘されるが、実は深刻なのは火力発電の6割に使われる液化天然ガス(LNG)の輸入が途絶えることである。


一見、LNGの中東依存度は約3割と、8割を超す原油より大幅に低い。ただ、会社ごとに細かくみれば中部電力は6割がカタール産である。

昨年の浜岡原発の緊急停止でカタールからの追加調達に踏み切り、比率は従来の5割から高まった。原発停止でLNG火力への依存度も高まっており「カタールからの輸入が止まれば、発電量の約4割を失う」(中部電力)。


発電量の4割が失われると、日中のピークの電力不足は深刻で、この場合、地域ごとの計画停電の方法しかなくなる。中部電力管内では、平日の日中、5日間の内2日間は計画停電という、最悪の事態になる可能性もある。


原油は官民で200日分の備蓄があるが、LNGには備蓄の義務がない。「LNGはあくまで原油の代替とされてきたので原油を備蓄すれば十分という考えだった」(資源エネルギー庁)。電力各社には2~3週間分の在庫しかないとされる。

しかもLNGは長期契約の比率が高く、原油と比べると短期調達(スポット)の市場にも厚みがない。「ホルムズ封鎖は『電力危機』。万が一、封鎖が1カ月も続けば東京電力、関西電力、九州電力も厳しいだろう」と言われている。


ここまで「LNGリスク」が膨らんだのは、福島原発事故後の原発停止と定期点検後の原発の再稼働ができないことが主因だ。「大型の原発が1基停止するとLNGの輸入は年120万トン程度増える」(東京電力)。それはLNG輸入量にはっきりと表れている。

2010年度は約7000万トンだったが、11年度は8200万~8300万トンの見通し。このまま再稼働がない場合、ほぼ1年を通して原発ゼロの12年度は9000万~1億トンに達する可能性がある。

LNGの輸入増加は昨年、日本が31年ぶりの貿易赤字になった主因でもある。

2012年度のLNG輸入額は価格上昇の影響もあって10年度比2.8兆円増6.3兆円と試算されている。電気料金に転嫁されれば、消費税増税と同じく家計の可処分所得を目減りさせることになる。


LNGの負担をどう抑えるかは佳境を迎えた東京電力の再建問題も左右する。東電は今年度に2400万トンのLNG輸入を見込み、日本の輸入量の3割を占める最大の買い手である。燃料費は昨年度より7600億円増える見通しで、原発賠償と燃料費による赤字の補てんは、公的資金という名の「税金」で埋められる

結局、発電量の3割を占めた原発がばたばたと止まったひずみが、LNG依存に象徴的に表れている。


万が一にもホルムズ海峡が封鎖された場合、原発再稼働しか計画停電を避ける道はない。「電気事業法の規定を援用し、経済産業相が原発稼働命令を出すしかないのでは」。経産省内ではこんなシナリオもささやかれている。



昨年5月、唐突に(思いつきで)浜岡原発を停止させ、定期点検済みの原発の再稼働を「ストレステスト」で止めたのは、史上最悪の前首相である。

彼のおかげで日本は貿易赤字に転落し、LNG等の燃料費で3兆円から4兆円ものお金を海外流出させた。電力会社は、前首相に対して損害賠償請求をするべきだ。

原発に反対する国際環境NGO「グリーンピース・ジャパン」は、原発の再稼働を止めるために福井市内のホテルに事務所を開設したと報道されている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120218-00000299-mailo-l18

県議会の会期に合わせて、活動拠点にスタッフ58人を駐在させ、原発に隣接する自治体へ働きかけるとともに、県内外の市民団体と協力して反対運動を進めるそうだ。このほかにも、多くの「放射」市民団体が再稼働に反対している。


反原発派は、「再稼働を断念し、全原発停止を受け入れ、脱原発に大きく舵を切るべきである」、「末代にまで悪影響を与える原発再稼働は中止すべき」などの主張をしているが、電力不足への代案はない

この人たちの代案は、「再生可能エネルギーをもっと増やす」、「足りない分は節電する」などというものだが、再生エネは現在のペースで増加しても10年後にやっと全電源の5%にしかならず、原発分30%の節電は「根性論(暑い夏を根性で乗り切る)」や「神風が吹く」といった類いの幻想にすぎない。


具体策のない意見、実現可能性のない意見は政策とはなり得ない。「脱原発」も結構だが、対案なく反対運動を起こすなら、それは無責任と言われて当然である。

原発の再稼働は1日も早くやって欲しいのだが、電力会社側もこれまでのように「事故は絶対起こりません」などといった無責任さも許されない。

「何十年、何百年の間に想定外の事故が起こることは否定できないが、その時でも放射能汚染は現在のラジウム温泉並の放射線量に止めることを目標に施策を推進する」といったリスクを明らかにし、対策を説明すべきである。


無責任というのは日本人の専売特許になってしまったのだろうか。

「公務員は減らせ」と言うが、「公共サービス低下はやむを得ない」とは言わない。

「年金は納めない」と豪語する人がいるが、「老後の面倒は自己責任で」とは決して言わない。

「給食費未納」の親が「子供には食事を与えてもらわなくて結構」と言うのを聞いたことがない。

成田空港建設に反対した人が、恥もなく成田空港を利用する。

日教組の先生が、「公立学校は荒れているから」と言って、自分の子供を私立の学校に入れる。

沖縄では、米軍基地は出て行ってもらいたいが、補助金はよこせと言う。

「脱原発」は、昭和30年代から40年代に盛り上がった「非武装中立」論にも似ている。国家の安全保障を日米同盟に依存しているにもかかわらず、米軍出ていけ、自衛隊不要などとよく言えたものだ。

このような無責任体質の頂点が政治家で、「増税反対、福祉充実」の先送り政策により、1000兆円もの借金を作ってしまった


このまま原発の再稼働ができないと、もちろん電力不足という問題があるのだが、もうひとつの問題として、電力会社が倒産するということがある。

東京電力は既に実質破綻会社であるが、沖縄電力以外の他の電力8社は全て原発を持っており、今年度の決算は全社大幅赤字に転落する。

電力会社の倒産は、そこに貸している銀行の決算にも大きな影響を与える。大量の不良債権が発生するからだ。

電力会社への主要な貸出先は、メガバンクと日本政策投資銀行である。電力会社の倒産は、イコール金融危機であり、政府は電力会社だけでなく銀行にも巨額の公的資金を注入する必要が出てくる。


いずれにしても、今後政府の対応は3つの選択肢しかない。

1. 原発を再稼働させず、電気代を上げる。

2. 原発を再稼働させず、電気代も上げない。

3. 原発を再稼働させる。

1の選択は、夏のピークを乗り切ることが困難で、電気代の値上げで国民も企業にも泣いてもらい、温室効果ガスも大量に排出し、企業は海外に逃げていくが、政治家が頭を下げて国民にお願いし、「放射脳ヒステリー」を納得させるという点では、現状で60%程度ありえるシナリオである。


2の選択は、1のデメリットとともに、既に燃料費がボディブローのように効いてきている電力会社を破綻させ、金融危機にもつながる最悪のパターンであるが、大衆迎合主義の政治家にとっては選挙のための正しい戦略であり、30%程度ありえるシナリオである。


3の選択は、1と2のすべての問題を解決する経済合理性からは最も優れた手段であるが、マスコミや反原発派がこれだけ放射能の恐怖を宣伝すれば、政治家にとっては最も取りづらい選択である。ただし、中東情勢が緊迫すればという前提で、10%くらいはありえるシナリオである。


あと2か月くらいで全原発が止まってしまうが、それを夏までに再稼働できるかどうかが、日本経済の鍵となる。


なお、原発を止めたことで貿易赤字が鮮明になり、円安に振れてきたので輸入物価が上がりインフレになり、長年の懸案であったデフレから脱却でき、問題が解決するという人がいる。

これは大きな間違いである。輸入物価が上がってインフレになっても、景気は回復しない。物価は上がっても給料は上がらない。景気回復を伴わないインフレを「スタグフレーション」と言い、最悪のパターンである。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B0%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3