Randomized Phase III Study of Amcenestrant Plus Palbociclib Versus Letrozole Plus Palbociclib in Estrogen Receptor–Positive, Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Negative Advanced Breast Cancer: Primary Results From AMEERA-5

J Clin Oncol. 2024 Jun 18:JCO2302036. doi: 10.1200/JCO.23.02036. Online ahead of print.

 

新規経口SERD4つのうちの1つ、

サノフィが開発するAmcenestrantの再発一次治療の試験結果です。

先に書きますがnegative studyでサノフィはすでにAmcenestrantの開発を中止しています。

 

ショートサマリー:

AMEERA-5はluminalに対しての再発一次治療として、

amcenestrant(経口SERD)とパルボシクリブの併用vsレトロゾールとパルボシクリブの併用を比較した試験です。

 

AMEERA-5はphase3試験で二重盲検になっています。

この治療の前に治療が入っている場合参加できません。

1対1に割り付けられ、層別はde novo stageⅣかどうか、閉経後か、臓器転移があるかです。

Primary endpointはPFS。

Secondary endpointはOSや薬物動態、安全性になっています。

 

結果ですが、2020年10月から2021年12月までで1,068人がランダム化されました。

8.4カ月時点での中間解析でPFSのHRが1.209 (95% CI, 0.939 to 1.557; one-sided P value=0.9304)となり、

事前に規定していた中止基準に引っ掛かったためこの試験は中止となりました。

6カ月時点でのPFSはamcenestrant群で82.7%、レトロゾール群で86.9%でした。

有害事象は85.6% vs 85.4%で、grade 3以上は46.3% vs 60.8%でした。

 

AMEERA-5は残念ながら中止となってしまいました。安全性で新しい報告はありません。

 

Introductionでは過去の試験のことについて触れています。

Phase 1, 2試験のAMEERA-1ではamcenestrantとパルボシクリブの併用で有害事象の増加はなく、

amcenestrant200mg1日1回がパルボシクリブの併用の奨用量となりました。

この試験では観察期間中央値14.8カ月で奏効率32.4%、臨床的有用率73.5%とまずまずの成績でした。

ということで、現在の標準治療であるレトロゾールとパルボシクリブの併用と勝負するphase 3試験が組まれました。

 

対象は18歳以上でluminalの進行再発乳癌で、放射線照射や根治が望めない患者さんが対象です。

PSは2以下。再発治療は何も入っていないことが条件になります。

術前後にSERDが入っていたら不適格。

また術後の内分泌療法中、もしくは終了後12カ月以内の再発は不適格になります。

つまりは内分泌療法への感受性が良いであろう群が対象になっています。

 

Amecenestrantは200㎎を毎日内服。パルボシクリブは周知のとおりの内服。

層別因子は上に書きましたが、臓器転移の定義は肝、肺、脳、胸腹膜になっています。

閉経前なら28日ごとの卵巣抑制が必要になります。

 

Primary endpointはPFS。

Key secondaryがOSになります。

 

αエラー片側2.5%、検出力90%でHR 0.75を出すために516のPFSイベントが必要と想定され、

合計1,066人のエントリーが必要と想定されました。

 

さて結果。

1,068人がランダム化され、それぞれ534人ずつです。

患者背景はバランスがとれています。

3/4が閉経後、半数でde novo stageⅣです。

臓器転移も約半数で認めており、骨転移単独は1割以下。

 

中間解析でHR 1.1より大きい場合中止が勧告されます。

観察期間中央値8.4カ月で243のPFSイベントが発生しました。

HRは1.209 (95% CI, 0.939 to 1.557; one-sided P value=0.9304)

有意差まではありませんが事前の1.1を超えて中止が決定しました…

6カ月時点でのPFSは82.7% vs 86.9%

絶対値で見て4%の差。

サブグループで見ても一定に効果が得られていない結果です。

イベント数は少ないですが65歳以上だとレトロゾールに傾いています。

 

奏効率は32.2% vs 42.3%, CBRが76.0% vs 82.4%とこちらも振るわず。

OSはimmatureですが、現時点で1.086 (95% CI, 0.613 to 1.926)のようです。

 

この原因がどこから来ているのかということもあり、薬物動態についても記載があります。

ここは少しなじみがないので誤訳していたらすみません。

Phase 1,2試験で相互作用がないとのことでamcenestrantの量は200㎎にきまりましたが、

いざこの試験ではamcenestrant併用だと、パルボシクリブの血中濃度が35%低下していたとのことです。

じゃあこれが原因かと言われると、血中濃度がしっかり保たれていた群でもPFSは同じ傾向でした。

Amcenestrantとパルボシクリブともに血中濃度が高い場合は、治療効果が良い傾向は認められていて、

肝転移がないとよりその傾向が強いようです。

じゃあ肝転移がある、ないで治療効果の差を見てみると、

肝転移があると治療効果が悪い傾向にあるとのことでした。あくまで探索的な解析です。

 

安全性についてはall gradeだと85.2% vs 89.7%。

パルボシクリブはamcenestrantと併用のほうが相対容量強度(RDI)は上みたいです(97.3% vs 91.1%)

減量も27.2% vs 43%, 投与延期も50.7% vs 61.2%でした。

やはりパルボシクリブとの何かしらの相互作用があり、薬物動態に影響を与えているのかもしれません。

 

その証拠?に好中球減少はamcenestrant群で低い結果でした。

 

多い副作用としては好中球減少、関節痛、疲労、ホットフラッシュ等

肝障害についてはレトロゾール群より多かったようです

 

さてdiscussionですが…

6カ月時点でのPFSは82.7% vs 86.9%でした。

PALOMA-2での6カ月時点でのPFSは86%、プラセボで72%。

患者背景に大きな違いはなさそうです…

ただde novo stageⅣは52%でPALOMA-2の32%より多かったと。

それ以外はあまりこれといった議論はありませんでした。

 

Limitationとして、ESR1 mutationについては検討がされていないと。

もともと経口SERDの強みはESR1 mutationにも対応できることです。

All comerでも勝てると踏んでだったのでしょうか…

 

他のphase3試験としては

imlunestrant±アベマシクリブ+内分泌療法をみるEMBER-3

camizestrant+パルボシクリブ vs アナストロゾール+パルボシクリブをみるSERENA-4(この試験とほぼ同じ)

giredestrant+パルボシクリブ vs レトロゾール+パルボシクリブをみるpersevERA

このあたりの結果がでると使い分けや経口SERDの立ち位置がわかってくるかもしれません。

 

正直経口SERDの微妙な構造式の違いだけでそんなに効果がかわるのかなと思っていましたが、

CDKとの相互作用で効果に差が出る可能性があるとなると、

しっかりと使い分けが考えられる、もしくは淘汰がされていく経口SERDが出てくるかもしれません。

 

うーん、正直期待していたので残念ですが、

「Amcenestrantが負けたか…だがあやつは四天王の中でも最弱…」

的な展開になることを期待しましょう。