Giredestrant for Estrogen Receptor–Positive, HER2-Negative, Previously Treated Advanced Breast Cancer:
Results From the Randomized, Phase II acelERA Breast Cancer Study

J Clin Oncol. 2024 Mar 27:JCO2301500. doi: 10.1200/JCO.23.01500. Online ahead of print.

 

経口SERD giredestrantのphase2試験の報告です。

 

ショートサマリー:

ホルモン陽性HER2陰性の進行再発乳癌に対して、giredestrantと主治医選択の内分泌療法単剤を比較したphase2 acelERA試験ですです。

 

対象は閉経前後関わらず18歳以上で測定可能病変のある、1-2レジメンの治療歴がある患者さんです。

フルベストラントに先立って分子標的、化学療法は1レジメンずつまで許容されます。

Giredestrant群(30mg/day)とフルベストラントかアロマターゼ阻害剤(±卵巣抑制)で1:1に振り分けられます。

層別因子は臓器転移があるかないか。CDK4/6阻害剤が使用されているかどうか。

フェソロデックスが先行して使われているかどうか(フェソロデックスもSERDだから)。

Primary endpointはPFSです。

 

結果は303例がエントリーされ、観察期間中央値7.9ヶ月でPFSはHR 0.81(95% CI, 0.60 to 1.10; P = 0.1757)で有意差無し。

事前に規定されていたsecondary endpointであるESR1 mutation(ctDNAで測定)が評価された232例では、

ESR1変異ありの90例で見るとHR 0.60 (95% CI, 0.35 to 1.03) 、

変異のない142例で見るとHR 0.88 (95% CI, 0.54 to 1.42) と、

ともに95%信頼区間は1をまたいでいました。

有害事象や有害事象による中止例はともに同じような感じでした。

 

Primary endpointは達成できませんでしたが、

ほとんどのサブグループでgiredestrantによる一貫した治療効果が認められ、

ESR1変異ありにおいて良好なベネフィットの傾向が認められた。

ジレデストラントの忍容性は良好で、有害事象については対象群と同等であり、

既知の内分泌療法のリスクと同じでした。

 

総括として、giredestrantを他の試験で引き続き検討していく必要がありそうです。

 

Introductionは目新しいことはなかったので飛ばします。

適格基準は先に書いたとおり。

追加としては再発初回治療の内分泌療法は6ヶ月以上使用されている必要があります。

最低限の内分泌療法感受性は確保したいという意図でしょう。

除外基準としてはSERD使用歴があることですが、

フェソロデックスは28日以上前に中止されていれば許容されます。

また有症状であったりするlife-threateningな状態は除外です。

層別因子で臓器転移が入っていますが、この臓器は肺と肝臓と定義されています。

 

ESR1の測定はFoundationOne Liquidが使われています。

もうLiguidが普通に使われていく時代に…

 

1年半までは8週間毎にCT評価。

それ以降は12週毎が許容されています。

 

EndpointはPFS。

SecondaryにOS, 奏効率(CR+PR), 治療奏効期間, Clinical benefit rate(CBR : 奏効+24週以上のSD), ESR1 mutationにおけるPFS, 薬剤動態, Patient-reported outcome(PRO), 安全性を挙げています。

 

サンプルサイズは300を想定。

166のイベントが発生しHR 0.647(8.5ヶ月 vs 5.5ヶ月)を80%の検出力で、αを5%に設定。

統計学的にぎりぎり有意とできるHRは約0.738になっています。

臨床的カットオフ時に病勢進行または死亡が認められなかった患者のデータは最後の腫瘍評価時で打ち切りです。

OSについては、PFSが統計的に有意だった時に、同じ手法で検定します。

 

さて結果です。

まず患者背景ですが、303人がエントリー。

データカットオフ時点で観察期間中央値は7.9ヶ月。

106人(35%)が治療を継続しており、46人(15.2%)が試験終了となっていました。

主治医選択の内分泌療法は75%がフルベストラント。その他がアロマターゼ阻害剤でした。

 

進行乳がんはおらず全例再発乳がん。

多くはアジア、ヨーロッパ人で閉経後。

臓器転移ありが多く、CDK、抗がん剤、フルベストラントが使われていました。

ただCDKは4割くらいしか使われておらずちょっと実臨床とは乖離がある印象…

ctDNAを測定している群ではESR1変異は232例中90例(38.8%)に認め、

giredestrant群に51例、主治医選択群に39例と前者に多めに振り分けられていました。

 

治療結果ですが…

前述の通りHR 0.81(95% CI, 0.60 to 1.10; P = 0.1757)で有意差なしです。

中央値だと5.6ヶ月 vs 5.4ヶ月と0.2ヶ月の差。

それぞれのイベント発生は90例と92例。

6ヶ月PFSは46.8%と39.6%でした。

ESR1変異ありのPFSではHR 0.60(95% CI, 0.35 to 1.03)です。

5.3ヶ月 vs 3.5ヶ月。

サブグループ解析が細かく載っています。

目をこらさないと字が読めねぇ…

閉経前やアジア人は若干良さそうだったり、ESR1変異ありは若干よさそうくらい。

ORRについては以下の通り。

単剤で1割以上はまずまずですかね。

OSはもちろんimmatureです。

進行により亡くなってしまっている方が多いですが、

COVID-19により亡くなっている方も3例ほどいるようです…コロナほんとに憎いな…

 

Dose intensityは96.98%と99.57%で若干giredestrantの方が低いです。

安全性については最も多かったのがAST上昇。

次いで関節痛、ALT上昇、貧血、嘔気です。

Grade 3-4で多かったのは貧血(とはいえgiredestrantで2例のみ)、高血圧、AST上昇、骨痛、ビリルビン上昇です。

PROでの報告は疼痛が若干多いくらいで基本的には大きなものはなかったと。

 

さてdiscussion。

Amcenestrantを使ったAMEERA-3(以下の記事)とほぼ同様のことを言っていました。

 

抜き出して再掲しますが、

「EMERALD試験とSRENA-2試験、acelERAがこの試験と同様のセッティングですが、

EMERALDはエラセストラントを使ってHR 0.70(0.55-0.88), 

SERENA-2はカミゼストラントを使ってHR 0.58(0.41-0.81)とこの2つはpositive。

acelERAはジレデストラントを使ってHR 0.81(0.60-1.10)とこの試験はnegativeです。

 

この差がどこからきているかですが、

ここでは他の試験ではTPC群でフェソロデックスの使用が少なかったのと比較して、

AMERRA-3ではフェソロデックスの使用が多かったことが挙げられています。

AMERRA-3は約9割で他の試験は約7-8割です。

 

しかしSERENA-2についてはコントロール群が100%フェソロデックスです。

ここは登録前の前治療としてフェソロデックスが全く認められなかったのがSERENA-2ですが、

他の試験ではEMERALDでは3割、acelERAで2割、この試験では1割でフェソロデックスの前治療歴がありました。

またSERENA-2は前治療ラインが0が3割、1ラインが7割と前治療歴が少ないことも挙げられていました。

CDKの使用歴もEMERALDは100%ですが、他は4-5割程度。

この試験では約8割です。」(転載終わり)

 

やはり今回も患者背景の違いを挙げていますね。

ただ単剤投与としてはまずまずの成績でしょうと書いてます。

気になるのは分子標的薬との併用で、エベロリムス(アフィニトール)とgiredestrantの併用をみるevERAを進行中なようです。

 

ESR1変異ではやや有効そうに見えました。

これはEMERALD試験やSERENA-2試験でも同様です(この2つは有意差出てますけどね)。

作用機序的にフルベストラントに比べてESR1変異があってもよく効く、というのが経口SERDの特徴になっています。

ただネオホルモンのcoopERAという試験では、ESR1変異が無い状態の手術前の患者さんに対して、

giredestrantを使っていますが、ki67の低下率はアロマターゼ阻害剤より上だったという結果を出しています。

これだけでESR1変異がなくてもよう効きまっせ!というのは言い過ぎですが、

まあ1st lineでも使っていいんじゃないですか?!という示唆でしょう。

 

サブグループ解析の閉経前、アジア人についても指摘していて、

症例数少ないのであれですが注目してもいいのではと。

 

肝機能異常については対象群でも認めており、

もともとベースラインでの肝機能異常も両群で不均一だったことも影響しているのではと。

 

患者背景について再度触れています。

CDK未治療の患者が多く(地理的特性?)、ESR1変異が少なく、一次化学療法が使われている症例が多いと。

CDK治療歴のある患者での有効性を期待しているところがあり、対象群がの治療成績が他より良いという点を挙げていました。

確かに他の試験では対象群が2-4ヶ月くらいですが、今回は5ヶ月とやや長めです。

 

ESR1変異に関しては、無作為割付け層別因子ではなかったため、治療群間で不均一でした。

とはいえ対象群のフェソロデックスに比べればESR1変異に対しても効いていそうというのは他の試験と同様の結果です。

今後経口SERDはESR1変異陽性で使う感じになりますかねぇ。

 

現在giredestrantは1st lineでパルボシクリブ+giredestrant vs パルボシクリブ+レトロゾールで試験が行われています。

persevERAという試験。

先に挙げたevERAはpost CDKが対象です。

lidERAはadjuvantセッティングの試験です。

他の経口SERDも同様の試験が行われているため、正直混乱しています。

色々試験結果が出そろったらまたまとめなきゃいかんですね…

今のところはelasestrant(日本では多分使えない)とcamizestrantが一歩リードしている印象を持っていますが、

正直微妙な患者背景の差がもろに結果に反映されそうな印象です。

薬剤毎で特性が大きく変わる印象も今のところないので、日本で使える経口SERDを使う感じになるのではないかと思っています。