Ribociclib plus Endocrine Therapy in Early Breast Cancer

N Engl J Med 2024;390:1080-91.
DOI: 10.1056/NEJMoa2305488

 

リボシクリブは日本では使えませんが、海外ではアベマシクリブよりリボシクリブがよく使われています。

再発治療では良好な成績を残しており、進行再発一次治療で使えるCDK4/6阻害剤で唯一OSの延長効果を示しています。

では再発予防としてはどうでしょうか。

 

ショートサマリー

リボシクリブは進行再発乳がんでOSのbenefitを残している薬剤です。

しかし早期乳がんに対しての効果はまだわかりません。

 

Phase 3試験です。

ホルモン陽性HER2陰性乳がんを1:1に振り分けます。

リボシクリブの使い方は3週内服1週休薬で3年間内服です。

内分泌療法はレトロゾールもしくはアナストロゾール。

閉経前であれば卵巣抑制の1カ月製剤を併用しています。

適格はstageⅡかⅢであることです。

今回primary endpointのIDFSの中間報告になります。

有意差判定はp値で0.0128となり、これを超えれば試験は早期終了になります。

 

結果は426例でイベントが発生し、リボシクリブとAIの併用は優位さをもってAI単独を上回る結果となりました。

3年目でのIDFSはリボシクリブ併用で90.4%、AI単独で87.1%でHR 0.75(95%CI 0.62 to 0.91; P = 0.003)でした。

Secondaryである遠隔転移再発についてもリボシクリブが良好でした。

 

イントロダクションです。

一般的な話で特にへーっというのはありませんでした。

方法ですが、症例設定は5000例としていて、

40%である2000例はstageⅡを予定していたようです。

AIは基本は5年で延長して内服することは主治医の裁量で許容されています。

男性、もしくは閉経前女性では卵巣抑制、ゴセレリンに限定されていますが併用しています。

基本1カ月製剤です。

適格基準は18歳以上で、ホルモン陽性HER2陰性。

StageはⅡかⅢとざっくりしていて、術前治療をしていない場合は手術時のステージ、

術前治療をしている場合は、診断時もしくは手術時のステージの悪い方が採用されています。

Stage ⅡAの場合は、少なくとも1つのリンパ節転移があれば適格。

リンパ節転移がなくて、ki67が20%以上のHG 2、または遺伝子検査でhigh riskも適格となります。

Stage ⅡAのリンパ節転移なしの場合、HG 3が適格です。

リンパ節転移の判定は画像でも手術時でもどちらでもOKで、どちらか多い方をステージングに採用します。

遺伝子検査high riskの定義はOncotype DXでRS26以上、

もしくはPAM50, MammaPrint, EndoPredictで定義high riskとされているものでもOKになります。

 

ランダム化までに術前、もしくは術後内分泌療法は1年ほど受けていても大丈夫です。

ただそCDK4/6阻害剤を使用していたり、重篤な合併症があっても不適格になります。

層別か因子はstageⅡかⅢか。閉経前か後か。化学療法がされているかどうか。人種差を挙げています。

リボシクリブの投与量としては、再発治療は600㎎ですが、

今回は毒性等も考慮し400㎎としています。

 

片側α 0.025でHR 0.76が85%の検出力で出せる設定として500イベントが必要と推定し、

第2回の中間解析は426イベント時に行われています。

この時点での有意差設定はp=0.0128としています。

 

結果に移っていきます。

リボシクリブ群は2549例、AI単独群は2552例になっています。

人種は白人がほとんどで約75%。アジア人は13.2%でした。

閉経前は45%で、閉経後が55%くらい。

3年の投与が終了しているのは515例で20.2%。

リボシクリブを継続しているのは45%で、半数以上が2年の投与を終えています。

観察期間中央値は34カ月。治療期間はともに30カ月が中央値になっています。

術前術後化学療法は9割弱に行われていました。

Monarch Eより若干低い数字です。

 

426例にイベントが発生しており、リボシクリブ群で189例、AI単独群で237例です。

3年のIDFSは90.4% vs 87.1%、HRは0.75です。

p値で0.003となり試験は終了となっています。

遠隔転移はリボシクリブ群で120例(4.7%)に対してAI群で170例(6.7%)。

最も多い転移巣は骨と肝臓でした。

StageⅡでのIDFS改善は絶対値で3%、stageⅢで3.2%。

 

3年無遠隔転移再発生存については90.8% vs 88.6%でHR 0.74(95%CI 0.60-0.91)。

3年の無再発生存では91.7% vs 88.7%でHR 0.72(95%CI 0.58-0.88)。

OSについては61例(2.4%) vs 73例(2.9%)でHR 0.76(95%CI 0.54-1.07)になっています。

 

安全性については、重篤な合併症はリボシクリブで13.3%、AI単独で9.9%でした。

有害事象によるリボシクリブ中止は18.9%。

有害事象によりリボシクリブ、AIともに中止なったのは3.3%でした。

最も多かったのは好中球減少。

次に関節痛で、これはアベマシクリブ同様でリボシクリブのほうが36.5% vs 42.5%と少ない。

次いで肝臓障害で25.4% vs 10.6%でそた。

治療中止で最も多かったのは肝障害で、リボシクリブでは8.9%に見られていました。

リボシクリブは早期中止が多く、中止までの期間中央値は4カ月になっていました。

リボシクリブに特徴的なQT延長は5.2%に認めていました。

 

Discussionです。

試験自体は終了となりますが、フォローアップは継続されます。

早期終了になることで、AI群に割り当てられた患者さんもリボシクリブが使えるようになります。

Monarch Eとの比較は当然されていて、

まずMonarch Eのほうがhigh risk症例が多いということ。

NATALEEは間口が広くなっています。

またMonarch Eはタモキシフェンの使用が許容されており、約30%がタモキシフェンを使用していました。

SOFT/TEXTの結果を引き合いに出していて、TAMとAIの差も少し影響しているのではとのことでした。

あとは投与量を抑えたことにより、好中球減少とQT延長も少なかったようです。

投与期間を3年間としたのは、細胞周期をより長く停止させ、より多くのアポトーシスを誘導するためとのこと。

Monarch Eの「再発は2年以内に多いため2年間の内服」というコンセプトに比べると、

幾分ふわっとしています。

 

Limitationとしてはフォローアップが短いこと。

K-M curveは最終盤で逆支店しており、

一番長期でフォローアップできている群の40カ月時点で、リボシクリブ群に3件だだっと再発がでてしまったためとのこと。

これがたまたまなのか、この後そういったことが多発するのかはもう少し見ないとわかりません。

 

リボシクリブとアベマシクリブどっちのほうがいいのか論争はおそらく不毛になるでしょう。

リボシクリブにはアベマシクリブに比べて低リスクの早期乳癌が含まれていますが、

全例でAIが使われている、投与期間が3年ということは治療はアベマシクリブに比べてしっかりと行われてます。

ただ化学療法については若干アベマシクリブに比べて少ない。

これで比較はなかなかできません。

 

Monarch Eのほうが長期成績が出ているため、基本的にはアベマシクリブ。

アベマシクリブの基準にはかからないが高リスクである場合に、リボシクリブを選択するという感じになりそうです。

日本ではリボシクリブは使えませんが、TS-1があるのでさほど問題にはならないでしょう。

 

3年という投与期間は医療経済に大きな影響を与えることまで考えると、

リボシクリブよりTS-1のほうがむしろ良いのでは…