Endocrine-Sensitive Disease Rate in Postmenopausal Patients With Estrogen Receptor–Rich/ERBB2-Negative Breast Cancer Receiving Neoadjuvant Anastrozole, Fulvestrant, or Their Combination
JAMA Oncol. 2024 Jan 18:e236038. doi: 10.1001/jamaoncol.2023.6038. Online ahead of print.
数年前にNEJMから進行再発乳癌に対してフェソロデックスとアロマターゼ阻害剤の併用が治療成績良いという結果が出てました。
その術前ネオホルモンVer。
ショートサマリー
アナストロゾールにフェソロデックスを加えると閉経後進行再発乳癌の予後を改善します。
早期乳癌に対してはどうでしょうか。
アナストロゾール単剤に比して、併用療法によって、
pCR率と術後の病理でT1-2/N0-1(micro)/ki67 2.7%以下になる率が増えるかを検討しています。
Phase 3試験で、フェソロデックス有群とアナストロゾール単剤群で比較しています。
閉経後でステージ2-3、ERがAllred scoreで6-8/陽性率66%以上、HER2陰性が適格。
患者さんはアナストロゾール単剤、フェソロデックス単剤、併用を術前6か月行います。
Ki67は4週目と12週目で測定。
もし両方とも10%以上であれば化学療法への切り替えか即手術となります。
Primary outcomeはendocrine-sensitive disease rate(ESDR)というあまり見ない指標。
この定義は上にあるpCR or 術後T1-2/N0-1(mi)/ki67 2.7%以下になります。
Secondary outcomeは4週目のki67です。
1362人が登録され、1298人で評価されています。
ESDRはアナストロゾール単剤が18.7%、フェソロデックス単剤が22.8%、併用が20.5%でした。
また、アナストロゾール単剤と比較し、フェソロデックスを含むレジメンは4週目のki67を下げられませんでした。
4週目もしくは12週目のki67 10%以上の割合はアナストロゾール単剤で25.1%、フェソロデックス単剤で24.2%、併用で15.7%でした。
4週目もしくは12週目のki67が10%以上で化学療法に切り替えた症例は、
167例のうちpCRとなったのは8例、腫瘍の残存がかなり少なくなったのは17例でした。
53例(58%)が生検検体でRNAシーケンスをしていて、PAM50のサブタイプをみると、
394例がluminal A、304例がluminal B、55例がnon-luminalでした。
併用療法はアナストロゾール単独よりも4週目のKi67は低かったですが、(中央値-90.4% vs -76.7%, P<0.001)
Luminal Aではその差は認められませんでした。
Non-luminalの36例(65.5%)は4週目または12週目のKi67が10%を超えていました。
結語としてはフェソロデックス単剤も併用もアナストロゾール単剤を上回れませんでした。
アロマターゼ阻害剤が未だネオホルモンのスタンダードということになります。
PAM50による分類で得た結果は今後の研究に生かせるかもしれません。
イントロダクションです。
フェソロデックスはエストロゲン依存性、非依存性両方のシグナル阻害をします。
FALCON試験ではアロマターゼ阻害剤に比して有意にPFSを延長し、
単剤ではフェソロデックスのほうが上という一般的な認識になっています。
(FALCON試験では特に内臓転移がない群で有効で、
腫瘍縮小という意味ではアロマターゼ阻害剤のほうが上だと思ってますが…)
またアナストロゾール+フェソロデックスは転移再発のセッティングで有効ということも証明されており、
基礎実験ではエストロゲンが少ない環境でより有効ということもわかっています。
SWOG SO226という試験では併用で明らかに成績がよく、
FACTという試験では併用での優位性を示せませんでした。
前者はホルモン療法未治療が多く、後者はあまりいなかったとのことで、
ホルモン治療がいったん入ると状況が変わってしまうようです。
ネオホルモンの特徴として、ホルモン陽性HER2陰性乳癌の内分泌療法に対する感受性を評価することができます。
ここでの内分泌療法抵抗性は、ネオホルモン投与2~4週間後のKi67が10%を超える場合をいいます。
ほかの試験でも10%をカットオフとして検証がされています。
ネオホルモンのアロマターゼ阻害剤またはタモキシフェンは、
治療4~6ヵ月後の病理ステージ、Ki67、ERの値はすべて独立した予後因子で、
再発リスクを判定するための術前内分泌予後指標(PEPI score)が開発されています。
ちなこれです。
https://publish.m-review.co.jp/files/tachiyomi_J0081_1303_0084-0086.pdf
PEPI score 0は治療後T1-2, N0, ER陽性, ki67 2.7%以下と定義されていて、
達成すると5年再発リスクは5%未満でした。
今回の試験はALTERNATE試験といいます。
今回はフェソロデックスが入っていて、フェソロデックスはERを分解してER発現を下げてしまうので、
ER発現を除いた修正PEPI scoreを使っています。
フェソロデックスを使わないネオホルモンの試験を見ると、
ER発現が2以下になることは基本まれで除いてもさほど影響はないとのことでした。
今回の報告はprimary endpointだった併用療法がendocrine-sensitive disease rate(ESDR)を上げるのかという報告です。
ホルモン陽性乳がんは不均一性(ヘテロジェナイティ)が強いため、
より深い研究のためゲノム解析やトランスクリプトーム解析(組織のRNA網羅的解析)も行われています。
ACOSOG Z1031というネオホルモンの試験ではPEPI 0とki67の低下がPAM 50の結果によって異なっていたので、
今回はRNAシーケンスで得られるPAM 50サブタイプを探索的に見たりもしています。
方法です。
対象は閉経後でT2-T4c, Nは問わずでER陽性(Allred 6-8 or ki67>66%), HER2陰性。
過去に治療歴がないことも条件です。
アナストロゾール、フェソロデックス、アナストロゾール+フェソロデックスが1:1:1に振り分けられます。
層別因子としては腫瘍径(T2 vs T3 vs T4), リンパ節転移(陽性 vs 陰性), PS(0-1 vs 2)です。
28日を1サイクルとして6サイクルの治療の後手術を行います。
4週目、12週目での生研は必須になっていて、あとは手術時にki67の判定をしています。
最初に書きましたが、4週目もしくは12週目のki67が10%を超えている場合、
A学療法か手術に切り替えになります。
化学療法のレジメンとしてはweeklyパクリタキセルもしくは標準療法(アンスラタキサン?)とのこと。
各サイクルの最初に画像検査をして腫瘍径測っています。
手術も標準的なものが行われ、リンパ節の郭清は適切に省略可能ですが、
PEPI scoreが測定できるようにしなさいって書いてありました。
Primary outcomeはESDRです。
pCRもしくは修正PEPI scoreが0が定義で、
4週目または12週目のKi67が10%以上、PDになってしまった、修正PEPI scoreが1以上、修正PEPIが測定できない、プロトコール治療中止の場合、ESDを達成できていないとみなされます。
サンプルサイズは、各群425例として、
アナストロゾール単剤に対するフルベストラントのESDRが10%以上増加すると想定すると、
検出力84%となるようです。
検出力から設定するのではなくて、サンプルサイズを決めて妥当な検出力かどうかを検討するパターンのようです。
1362人がエントリーされ、年齢中央値は65歳。
後から不適格がわかったなどで最終1298人で試験開始となりました。
内訳は今後アナストロゾール、フェソロデックス、併用をA, F, A+Fで示しますが、
A:434人、F:430人、A+F:434人。
40%以上がリンパ節転移陽性、30%がT3-4cと局所進行でした。
約10-15%は治療前からki67 10%以下でした。
最初から2.7%以下という人も少数ですがいました。
治療を開始した1298人のうち、933人(71.9%)が4週目または12週目のKi67が10%以下になるか、腫瘍縮小でki67が測定できないレベルになっていました。
内訳としてはA:289人、F:306人、A+F:338で、術前治療と手術が行われています。
302人(23.2%)はki67が10%以下にならない(A:109人、F:104人、A+F:68人)か、
画像的にPD(A:16, F:6人, A+F:8人)となっています。
そのほか63人(4.9%)では患者希望や副作用で治療中止し手術に移行しています。
ki67 10%以上だった281人のうち、114人(40.5%)が手術に進み、
167人(59.4%)が化学療法へスイッチしました。
レジメンで最も多いのはAC‐wPTX(60人, 35.9%)、
次いでwPTX(56人, 33.5%)、次いでTC(33人, 19.8%)でした。
その中で14人が有害事象で中止となり、手術に移行したようです。
結果ですが、933人のprimary outcomeを達成した群について、
70%が乳房温存術、60%以上がリンパ節郭清を省略できていました。
ただ、474人(50.8%)がリンパ節のマクロ転移を認めていて、修正PEPI 0を達成できていませんでした。
臨床的にリンパ節転移陽性だった365例中、病理学的にリンパ節転移陰性、
もしくはマイクロ転移までdown stagingしたのは約10%にとどまりました。
918人は手術検体でERレベルが高いままで、A:97.2%, F:75.7%, A+F:71.3%。
やはりフェソロデックスが入るとERレベルは下がるようです。
ki67が2.7%以下だったのは、全体で63.3%, A:57.8%、F:61.4%、A+F:62.4%でした。
Ki67が下がりきらずに化学療法に移行した153例では、
おおよそ60%が乳房温存術を施行し、56%がセンチネルリンパ節生検のみで手術を終了していました。
ただ93.5%が病変が残存しており、リンパ節転移陽性は56.9%。
pCRとなったのは5.2%のみでした。
さて、Primary outcomeのESDR。
pCRを得たのは0.5%-1.2%とかなり少数でした。まあ仕方ないですね。
修正PEPI score0は17.5%から21.9%。
A:18.7%、F:22.8%、A+F:20.5%と併用群が振るわない結果でした。
先行研究のZ1031試験では30%だったので想定より低い値です。
ESDを達成できない因子を多変量解析をしてみると、
cT3-4であることOR 2.48; 95%CI, 1.66-3.72; P < .001、
cN1-3であることOR, 17.85; 95% CI, 10.05-31.71; P < .001、
gradeが3であることOR, 1.71; 95% CI, 1.04-2.80; P =0.03、
治療前のki67が20%以上であることOR, 1.52; 95% CI, 1.10-2.09; P = .01
が上がっていました。
167人の化学療法に切り替えた群では、8例でpCR(4.8%)を達成していました。
17例で腫瘍残存が必定に少なく、pCRと合計すると15%でかなり奏功したという結果。
4週目でのki67の抑制率についてみてみると、
変化率の中央値はアナストロゾールで-80.6%(-92.2%~-55.6%)で、
フェソロデックスで-79.1%(-90.8%~-55.5%、P = 0.36)、A+Fで-83.5%(-92.3%~-62.4%、P = 0.15)と、
アナストロゾール単剤に比べて有意差はありませんでした。
治療前Ki67が10%以下であった155人のうち、4週目のKi67が10%を超えたのはわずか6例(3.9%)でした。
治療前Ki67が10%以上であった967人のうち、アナストロゾールを投与された336人中103人(30.7%)、
フェソロデックスを投与された315人中94人(29.8%)、
A+Fを投与された316人中60人(19.0%)が4週目のKi67が10%以上でした。
治療前のKi67の値で調整すると、4週目のKi67が10%を超える可能性は、
アナストロゾール単剤よりA+Fで有意に低かったようですが(P < 0.001)、
フルベストラントとアナストロゾールの間に有意差はありませんでした(P = 0.91)。
最後にPAM 50での検討です。
全霊で測定できているわけではなく、58%にとどまっています。
全体的にgrade 3が多く、リンパ節転移陽性、ki67が20%以上と偏りがあった様子。
PAM 50の結果、52.3%がluminal A, 40.3%がluminal B, 6%がERBB2-enrichedかbasal-likeでした。
ERBB2もしくはbasal-likeでは結果が振るわず、
36例(65.5%)が4週目または12週目のKi67が10%を超えてネオホルモン中止となり、
2例(3.6%)は進行が認められ、13例(23.6%)は修正PEPI scoreが0を超え、1例(1.8%)のみ修正PEPI scoreが0でした。
Luminal Aではどの治療でもki67が10%を超えることは少なかったですが、
Luminal BではA+Fが最も4週目のki67を下げていました。
(A+F vs アナストロゾール:−10.6%; 16.0% to 5.7%;P < .001)
また、ki67が10%以下になっている率もアナストロゾールより上でした。
(OR 0.27;95%CI、0.13-0.53;P < 0.001)
Discussionです。
先行研究のZ1031Bに比べて結果は振るいませんでした。
この結果は局所進行例が多かったことを挙げています。
多変量解析を見ても腫瘍径が大きい、リンパ節転移がある等ではki67の低下が得られないことから、
患者背景の違いは確かに大きいんだと思われます。
ただ治療開始前のki67が2.7%以上だった1272例のうち、43.1%がki67 2.7%以下となっていました。
ネオホルモン自体はそれなりのパワーを持っていると書いてありました。
あとはLuminal Bだった場合はアナストロゾールより併用が有効でした。
アナストロゾール抵抗性な群が一定数存在するため、ここの治療方針を検討することができるのではと。
全例PAM 50することが現実的ではないけどな…
Limitationとして、1つ目にESDを達成することの重要性が実臨床でどうなのかという点。
実際に再発を減らすことができるのかっていうことですね。
この試験ではその先まで検討がなされるようです。
2つ目に治療前および治療後の画像診断をした患者は60%未満だったので、奏効率が解析できなかったこと。
最後にPAM50を受けた群がたまたま局所進行だったり悪性度が高かったりしたことでバイアスがかかってしまっている点でした。
あまり見ないエンドポイントだったりしたので結構読むの時間かかってしまった。
ネオホルモンはどういったあたりが注目されているかが分かった論文でした。
日本ではあまり積極的にネオホルモンがやられているわけではなく、
使うとしたら術前の待機時間が長いので使っておく。くらいでしょうね。
でもやっぱりki67の低下率とかをみると、ああホルモン効いてたんだなーって実感することも多く、
実は最近ひそかにマイブームです。(オペの待機時間がほんとに長いのでやらざるを得ない面が大きいですが)
術後の内分泌療法も一度使っているとスムーズに入れますしね。
標準治療になるにはまだまだ先かなー。
フェソロデックスじゃなくて経口SERDと併用して結果がどうなるかで変わってくるかしら?