Overall Survival With Circulating Tumor Cell Count–Driven Choice of Therapy in Advanced Breast Cancer: A Randomized Trial
J Clin Oncol. 2024 Feb 1;42(4):383-389.
ショートサマリー
進行ホルモン陽性HER2陰性乳がんに対してSTIC CTCという試験が行われました。
これは内分泌療法か化学療法を選択するときにCTCの数をもとに治療選択をすることは、
PFSで医師による選択治療に劣らないことが今のところ証明されています。
今回は副次評価項目であるOSの報告です。
それぞれの医師が化学療法にするか内分泌療法にするかを決める場合と、
CTCの数が 5CTC/7.5ml以上だった場合化学療法、それ以下だった場合内分泌療法を第一選択とする場合、
OSはどうなるかという試験です。
結果、OS中央値はCTC群(CTCを元に治療を選択する群)で51.3ヵ月(95%CI、46.8~55.1)、
標準群(医師が治療選択をする群)で45.5ヵ月(95%CI、40.9~51.1)
HR 0.85;95%CI、0.69~1.03;P=0.11と一応有意差はなし。
標準群が内分泌療法を推奨し、CTC数が多かった189例(25.0%)では、
化学療法の法が内分泌療法より治療成績が優れていた(HR 0.53;95%CI、0.36~0.78;P=0.001)。
医師の決定とCTCの数値が食い違う場合、OSはCTC数を信頼した方がいいかもしれないです。
この試験知りませんでしたが、非常に興味深く、
医師のプライドをへし折るような試験をしているんですね。
イントロダクションでは、進行再発治療の第一選択としては基本的に内分泌療法ですが、
化学療法を行うことも1つの選択肢となります。
この基準を定めるために他施設合同phase 3のSTC CTC試験が行われました。
CTCの数は進行再発乳がんの予後不良因子であることはすでに確立しています。
ただPFS, OSに影響するかどうかはまだわかっていません。
Primary endpointであるCTC群のPFSにおける非劣勢については証明されてしまいました。
CTC群では優越性は出せませんでしたが、
臨床的な判断とCTCが一致しない患者のサブグループにおける解析から、
内分泌療法と化学療法の選択にCTC数を用いることの妥当性が示唆されました。
今回、STIC CTC試験のPFSおよび最終OS(副次評価項目)の最新解析結果を報告しています。
試験の方法ですが、ホルモン陽性HER2陰性の進行再発乳がんが対象です。
ランダム化する前に、試験担当医師は化学療法をするか(clinical risk high)、
もしくは内分泌療法をするのか(clinical risk low)を選択し記録します。
CTCの数が 5CTC/7.5ml以上はCTC high, それ以下はCTC lowとしています。
標準群に割り付けられた患者は、clinical risk highなら化学療法を、
clinical risk lowなら内分泌療法をうけ、
CTC群に割り付けられた患者は、CTC highなら化学療法を、
CTC lowなら内分泌療法を受けています。
Primary endpointは2年のPFSで、これは非劣勢でした。
意見が食い違ったときというサブグループが事前に規定されており、
そこも含めての解析となります。
2012年1月から2016年6月で778例がエントリー。
表は項目が多くて見にくいですが、バランスは取れているようです。
755例のうち、463例(61.3%)はclinical riskとCTCの結果が同じで、同じ治療を受けています。
結果が一致しなかったclinical risk low, CTC high群では、
プロトコール通り医師選択群の99人で内分泌療法。CTC群の90人で化学療法を受けています。
逆パターンのclinical risk high, CTC low群では、
医師選択群の51人が化学療法、CTC群の52人が内分泌療法を受けています。
最終解析では664例でPFSのイベントがおき、
382例でOSイベントが起きています。
結果として、CTC群のPFS中央値は15.7ヶ月。OSは51.3ヶ月でした。
一方で医師選択群はPFS中央値13.8ヶ月。OSは45.5ヶ月でした。
OSについてHRは0.85, 95% CI 0.69-1.03, p=0.11です。
Clinical risk low, CTC high群では化学療法を受けていた群が内分泌療法を受けていた群より、
有意差を持って良い結果でした。
PFS中央値は15.7ヶ月 vs 10ヶ月。(HR 0.65, 95%CI 0.48-0.87, p=0.005)
OSについても 51.8ヶ月 vs 35.4ヶ月でHR 0.53; 95%CI, 0.36 - 0.78; P=0.001です。
一方で、clinical risk high, CTC low群では有意な差は出ませんでした。
PFS中央値は化学療法で14.6ヶ月、内分泌療法で9.3ヶ月。
HR 1.14; 95% CI, 0.75 - 1.74; P=0.54でした。
OSについても45.9ヶ月 vs 49.4ヶ月で差はなし。
HR 0.88; 95%CI, 0.51 - 1.51; P=0.64。
Disucssionです。
clinical riskとCTCの意見が合致した一般的な集団では有意差は見られませんでした。
約1/4を締める不一致症例ではOSで16.4ヶ月の差がでるという興味深い結果でした。
clinical risk high, CTC lowでは化学療法をしても有意差が出せないというコトから考えると,
CTCが低ければ内分泌療法を中心とした治療をしてもよいのかもしれません。
あとctDNAはCTCとの臨床的な意味合いは違うんですよってコトが書いてありました。
一番のlimitationとしては、今回この試験の時期的にCDKがあんまり使えていないんですよね。
CDKのパワーはかなりのものなので、CDKを使っていない症例は結果を外挿できない可能性があります。
まあでも治療選択の参考にはなるでしょうね。
結論としては、この試験ではCTCの数をバイオマーカーとして使用することの全体的な安全性があって、
CTC数が多く、clinical riskが低い患者は、化学療法で有意なOS延長が得られる可能性があることを示しました。
臨床医の感覚ももちろん大事でしょうけど、今後こういった治療選択について補助的なものが色々出てくるんでしょう。
Oncotype DXもそうですが、時代は変わっていくんですねー。
でもいつの時代になっても、こういった結果のみで治療選択をするのではなく、
結果を踏まえた上で患者さんと相談して治療を決めていく。
Shared decision makingが大事だと、私は思います。(キリッ)