Adjuvant Abemaciclib Plus Endocrine Therapy for Hormone Receptor–Positive, Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Negative, High-Risk Early Breast Cancer: Results From a Preplanned monarchE Overall Survival Interim Analysis, Including 5-Year Efficacy Outcomes
J Clin Oncol. 2024 Jan 9:JCO2301994. doi: 10.1200/JCO.23.01994.
ショートサマリ
臨床試験は多くの場合いくつかのエンドポイントを含み、異なるタイミングで結果が出ます。
最初の報告では主にprimary endpointを報告しますが、co-primary endpointや二次解析が行われる前に報告されます。
この論文ではアップデートをして報告します。
ホルモン陽性HER2陰性の再発高リスク乳がんに対して、
ホルモン剤に2年のベージニオを追加するとIDFSと遠隔転移を有意に改善することがわかっています。
今回5年の全生存率の結果を追加報告します。
ITT解析において、追跡期間中央値54ヶ月。ベージニオの有効性は維持され、
IDFSはHR 0.680(95% CI, 0.599 to 0.772)、遠隔転移はHR 0.675 (95% CI, 0.588 to 0.774)でした。
この効果は5年のIDFS、遠隔転移それぞれ絶対値で7.6%、6.7%の改善で、
4年では6%と5.3%、3年では4.8%と4.1%と徐々に開いています。
死亡数については併用群で208例、単独群で234例と絶対値では併用群の方が少なかったですが、
全生存率は有意な改善は認めませんでした。
安全性についての追加報告はなく、結語として2年の治療完了後もベージニオの効果は持続し、
高リスクではベージニオがやはり有効という結果でした。
イントロダクションです
ホルモン陽性HER2陰性乳癌は基本的に再発少ないですが、
高リスクの場合5年で30%再発するという報告もあるようです。
今までも再発については良好な成績が報告されていますが、OSの報告はまだです。
今回その報告になります。
Monarch Eは5637人が登録され、
コホート1はリンパ節転移4つ以上もしくは1-3個でグレードが3、腫瘍径が5cm以上の場合。こちらが5120例。
残りはコホート2で転移が1-3個でki67 20%以上。こちらは517例になります。
OSはsecondary endpointですがもともと解析予定に入っていました。
結果ですが、80%の患者さんが最低4年のフォローアップを終えています。
最初に書きましたが、IDFSはHR 0.68、遠隔転移はHR 0.675で有意な改善です。
ただOSについてはHR 0.903(95% CI, 0.749 - 1.088, p=0.284)で有意差を認めませんでした。
サブグループで見てみると、基本的には一貫してベージニオ上乗せが良好でした。
コホート1の中でki67が20%以上のグループで見ても、再発自体は増えますがベージニオの治療効果はしっかりとでています。
サブグループの解析ではありますが、OSもHR 0.717, p=0.16で差が出ていそうな雰囲気。
IDFSについてサブグループのforest plotはこんな感じです。
一貫してますねー
コホート2の結果はまだ未成熟とのことでした。
安全性について追加情報はありません。
Discussionです。
個人的にベージニオ内服終了後に再発や全生存は差が詰まってくるのではないかと思っていましたが、
それはなさそうで、ベージニオの効果はcarryoverしていそうです。
差が詰まってくると思っていた理由は、CDK4/6阻害剤はそもそも細胞周期を止めているだけで、
ただただ再発を遅らせているだけなのではと危惧してました。
どうやらベージニオは微小転移を抑える力がありそうです。
基本的に高リスクホルモン陽性HER2陰性乳癌の再発予防については「5年」が1つの指標となっています。
メタ解析では6人に1人が5年以内に再発し、そのピークは1-3年とされています。
実臨床では1-3年の再発はそこまで多くはないような気がしているのですが…
他のGEICAMというグループの報告では、
monarch Eの基準に当てはまるグループは25%の確率で5年以内に再発していると報告しています。
さらに10年に伸ばすと43%が再発していると…
2人に1人は若干多すぎる気が…日本だとそこまでの印象は…
体型とか内服ちゃんとしているかの違いですかね?
今回OSでは有意差が出ていませんでしたが、ホルモン陽性HER2陰性乳癌では晩期再発の問題もあり、
過去の報告では10年以降でもOSイベントが散見しています。
今後追跡を続けていけば、ITT集団でも差が出てくるかもしれません。
術後のベージニオについてはもう疑いようがなさそうですね。
基本的にホルモン陽性HER2陰性乳癌の術後ホルモンのデータでOSまで改善させるデータはほとんどありません。
記憶の限りでは「無治療 vs ホルモン療法」と、
BRCA陽性時で術前化学療法が奏効しない、もしくはリンパ節4つ以上の時のリムパーザくらいです。
OSのベネフィットは現時点で高リスクの中でも高リスク(ki6720%以上)のみにはなっていますが、
リムパーザと同じくらいのインパクトがあるかなと思います。
2年の治療期間は正直長いですが、適格になる場合はやはり積極的に使っていくべきかな。