The impact of margin status in breast-conserving therapy for lobular carcinoma is age related

Eur J Surg Oncol. 2010 Feb;36(2):176-81.

 

やや古い論文です。

「浸潤性小葉癌に対して温存術を行い、非浸潤性小葉癌で断端陽性となった時に追加切除をすべきかどうか。」

ということを検討する必要がある状況になったため読みます。

 

対象は1983年から2005年までに行われた2923人の部分切除術が施行された症例。

11%の330例が浸潤性小葉癌で、こちらが今回の対象となります。

同時性両側乳癌の定義は両側発生または3ヶ月以内に反対側の乳癌がみつかること。

局所再発について、真の再発か新しい腫瘍かについては判断困難ですが、

同側に見つかったものは全て局所再発としています。潔い。

 

断端陽性の定義は浸潤癌、非浸潤癌の露出があること。

びまん性の断端陽性や、複数箇所の断端陽性は再切除としていたようです。

顕微鏡レベルの断端陽性は放射線で治療していたようです。

 

放射線は基本的に50Gy。基本的に全例14Gy boost照射をしていたようです。

4個以上リンパ節転移があれば領域リンパ節にも照射を加えると、

10年以上前ですが今のガイドラインと大きくは変わっていないようです。

 

80年代はリンパ節転移陽性であれば全例が化学療法でしたが、

92年以降は閉経前なら化学療法、閉経後ならホルモン療法のみだったようです。

すごい、時代を先取っている。

1999年以降はbiologyが重視されるようになり、biologyが悪ければ化学療法を適時追加したようです。

 

さて結果です。

年齢は34-83歳。中央値60歳です。

注目したい非浸潤性小葉癌の断端陽性は7.6%の25例でした。

3例で両側発生、33例で対側乳癌発生を認めました。

これらの再発までの期間中央値は約6年です。

330例中局所再発を来したのは21例。

5年の無局所再発率は97%、10年で92.2%、12年で89%でした。

局所再発までの期間は中央値で83ヶ月。

 

単変量解析では年齢、対側乳癌発生、浸潤性小葉癌の断端陽性、非浸潤性小葉癌の断端陽性、術後補助療法をしているかどうかが、

局所再発のリスク因子でした。

多変量解析では、断端陽性(HR 3.5, p = 0.009)、年齢50歳以上(HR 0.25, p = 0.003)、対側乳癌発生(HR 4.9, p = 0.002)、術後治療をしている(HR 0.13, p = 0.049)が独立した因子でした。

 

断端陽性を浸潤癌、非浸潤癌、浸潤癌+非浸潤癌の3つで分けた場合、

浸潤癌はHR 3.5、浸潤癌+非浸潤癌はHR 4.9で有意差あり。

非浸潤癌のみはHR 2.6でしたが有意差はなかったようです。

50歳以上でみても差はないですが、割と傾向はありそうです。

 

遠隔転移再発については13%似認めており、5,10,12年の無遠隔転移再発は91,84.5, 83%でした。

単変量解析ではグレード、腫瘍径、リンパ節転移、術後治療をしているかどうか。

多変量解析ではグレード3(HR 6.9, p <0.001)、腫瘍径がT2(HR 3.2, p<0.001), リンパ節転移陽性(HR 7.7, p = 0.001)が独立した因子でした。

 

乳癌特異的生存率については5,10,12年で97,93,85%

独立した因子はグレード3、腫瘍径T2が独立した因子で、リンパ節転移は傾向ありとのことでした。

 

浸潤癌の断端陽性/陰性と年齢50以上/51未満で分けると

51歳未満で断端陽性が明らかに局所再発が多いという結果でした。

 

Discussionで非浸潤性小葉癌断端陽性について語られていたのは、

50歳以上では局所再発率が上昇するということくらいでした。

 

結果を見ていると非浸潤癌であれ浸潤癌であれ追加切除の方がよさそうだなーという印象・・・

遠隔転移や予後には関わらないようですが・・・

 

浸潤性小葉癌が広範囲に広がることが多いので、

今後も出会うことはあるでしょう。

個人的にはいい勉強になりました。