Contralateral Axillary Lymph Node Metastases from Breast Carcinoma: Is it Time to Review TNM Cancer Staging?

Ann Surg Oncol (2020) 27:4488–4499

 

なかなか論文読む時間がなーい

でも今回ちょっとまとめなきゃならんと思った案件があったので読みます

 

例えば右乳癌があって、

左の腋窩リンパ節に癌があったら、

それはstageⅣになります。

 

なんですが、実際は症例数が少なすぎて(1.9~6%)なかなかデータがありません。

3つの病態から成り立つと想定されています。

①乳癌以外の臓器からの転移(頭頸部が多いかと思います)

これは今回関係ないのでほっときましょう。

 

②オカルト乳癌(潜在性乳癌:乳房に画像で写る癌がないけど、微少な癌が存在していてそれが腋窩に転移をしている)の可能性

③対側乳房からの転移

さらに③は2つに分かれます

③-1同時に見つかるか(例:右乳癌と左腋窩リンパ節転移)

③-2異時性に見つかる(例:右乳癌術後、しばらくしてから左腋窩リンパ節転移±右乳癌の局所再発)

 

②は見逃しちゃだめですね。

単独でリンパ節転移を見つけたときは常にオカルト乳癌を念頭に置いてます。

 

③については、乳房や腋窩の手術、また放射線を当てた後にできた乳癌については、

正常なリンパの流れが変わってしまい、

反対側の腋窩リンパ節へリンパの流れができていることがあり、

その場合は全身病というよりは局所疾患と考えてもいいんじゃないでしょうかと書いてありました。

 

そうなると局所再発に伴う対側腋窩リンパ節転移は局所かもしれない。

てなことで、局所再発あり/なしにわけて対側腋窩リンパ節転移を起こした症例を解析しています。

 

47症例(やっぱり少ねえ)が抽出され、うち14例は局所再発+対側腋窩リンパ節転移でした。

ホルモン陽性乳癌が多く、ki67は高い症例が多かったとのこと。

温存術と切除術はだいたい半数ずつで、70%に放射線が当たり、ケモは49%に行われていたと。

47例中14例は内分泌療法単独だったようです。

 

 

対側リンパ節に対しての治療は全症例で腋窩リンパ節郭清が行われており、

リンパ節転移は中央値で3つ。

19例は放射線を行い、14例は乳房にも当てています。

 

リンパ節郭清後は抗がん剤が64%に。そのうち28%は内分泌療法を行っています。

34%は内分泌療法単独のようです。

ERは陽性が6割でHER2は陰性が7割でした。

 

 

さて予後についてですが、

5年生存率が72%、8年生存率が61%という結果。

無再発については5年で61%、8年で42%でした。

この無再発は局所再発も含まれてます。

 

局所再発に伴うものと伴わないものを比較してみると、

若干ではありますが局所再発に伴う対側腋窩リンパ節転移のほうが予後が悪いです。有意差はないですけどね。

 

図は載せませんが、手術後の放射線は当てても当てなくても結果は変わらなかったようです。

ホルモン治療を受けた人たちは、受けてない人より予後がよかったようですが、

これは受けてない人=ホルモン陰性=もともと予後不良だからでしょう。

 

対側腋窩リンパ節転移が出てくるまでの期間が5年以内と5年以降でわけてみたら

明らかに5年以内で出てきた方が予後不良でした。

これもまあもともとの乳癌のタチが悪かった=すぐに出てきた=予後不良という考え方でいいでしょう。

 

多変量解析ではホルモン療法単剤で行っている人よりホルモン療法+抗がん剤やっている人が明らかに予後不良でした。

 

 

うーん全体的に後ろ向き解析でバイアスかかりまくってて理解が難しい。

 

Discussionを見てみましたが、discussionで言っていることのほうが大事でした。

現在胸骨傍リンパ節転移や鎖骨上リンパ節転移は遠隔転移に含まれていません。

その背景にヨーロッパで行われた解析で、これらの転移に対して集学的治療を行うことで、

過去の研究結果に比べてOSが向上したことがきっかけとなり、

胸骨傍リンパ節や鎖骨上リンパ節は遠隔転移に含まれなくなりました。

(それでも鎖骨上リンパ節転移は割と予後悪いですが…だからこそ鎖骨上リンパ節転移があるだけでstageⅢCになるんでしょうね)

 

その鎖骨上リンパ節転移のOSは、今回の研究結果(5年72%、8年61%)と大きくは変わりません。

つまりはちゃんと治療をすれば対側リンパ節転移は、遠隔転移に含めなくていいんじゃないでしょうか。

というのが今回の主張です。

 

ただしこの論文でも症例数はかなり少ないし、結論づけることはできない。としています。

 

ちなみに2015年の論文でも同様の主張をしていて、

この論文の成績は局所再発なしでおこった対側腋窩リンパ節転移は約7年のフォローアップで、

OS76.9%、DFS46.1%。

局所再発に伴うものは2年のフォローアップでOS100%、DFS100%でした。

ともに症例数は13例、4例とほとんどないので信憑性にはかけますが…

結語として少数ではあるけど遠隔転移に比べて予後いいから、遠隔転移として扱うべきじゃない。とまで書いています。

 

このあたりから、頑張れば治癒可能かもしれないという考え方は、

患者さんにとっても主治医にとっても勇気をもてる考えですし、

対側リンパ節転移はstageⅣとは考えずstageⅢC(N3)くらいで考えてもいいかもしれませんね。