夏休みやらで更新が滞っておりました。
飲酒と乳癌の関連
今度は罹患した人についてのデータです。
もともと罹患後の飲酒についてはガイドライン上でも再発や乳癌死亡のリスク上昇になる可能性は低いという見解です。
とはいえ1日30g以上の摂取ではリスク増加という報告もあり、
やはりお酒はほどほどに。という感じです。
さて、日本人ではどうでしょうか。
PLoS ONE 14(11): e0224797
日本人のデータです。
残念ながら診断後にどの程度飲酒量が変化していたかということは書いてありません。
あくまで、「診断時までにどの程度飲んでいたか」というデータです。
Introductionでは日本人女性の飲酒量は西洋人に比べ少ないということがやはり書いてありました。
方法ですが、乳癌と診断され宮城がんセンターに入院した人すべてにアンケートを実施。
まず飲んだことがない、前は飲んでいたが今は飲まない、今も飲んでいるにわけられ、
後者2つはいつから飲み始めたや週に何回飲んでいるか、アルコールの種類(ビール、日本酒、焼酎、ウイスキー、ワインなど)
このあたりを質問しています。
アルコール摂取量は1週間で飲んだ量÷7で1日量を計算しています。
飲む頻度は、飲まない、機会飲酒もしくは週に1-2回、週に3-7回に分けられています。
飲み始めた年齢は20歳以下か20歳以上か(ええんか)。
1日摂取量をなし、5g以下、5g以上の3グループにわけています。
結果ですが、
最も予後が悪かったはなんと全く飲まないグループです。
時点で1日5g以上飲むグループ、一番良いのが5g以下飲むグループでした。
ただし、ホルモン陽性のグループについては、傾向は一緒で全く飲まないグループより、
飲んでいるグループの方が若干いいのですが、有意な差はありません。
ホルモン陰性のグループでは明らかに少量飲んでいるグループが予後良好です。
これは飲酒による抗炎症作用が代謝や免疫脳に関連しているのではと推測されていました。
うーんお酒すごい。
飲酒している人たちで血管系疾患で亡くなった人がいないということも言っており、
ほどほどの飲酒はいい作用もあるようです。
逆にホルモン陽性乳癌については、飲酒が女性ホルモンレベルを上げたり、
内分泌療法の効果を下げる作用があるようです。
いい作用とバランスがトントンとなり差が出ないようになってしまったんでしょうか。
ただし、飲むことで予後を悪化はさせてはいません。
…こんなところにしておきます。
いつもより短めなのは、実はこの論文は罹患後に飲酒をしても大丈夫かということが書いてあると思い、
嬉々として読んだのですが、罹患後飲んだらどうかということは何も書いていなくて、
途中で読む気を失ってしまいました…。
この論文は悪くないです…私がabstractちゃんと読んでなかったからです…
罹患後の飲酒について論文を探しましたが新しいものはあまりなさそうです。
なので、乳癌学会のデータが最新ですので簡単にまとめましょう。
再発リスクは3つとも飲まない人に比べて飲む人の方が若干再発が少ないです。
ざっくり3つの論文を読んでみましたが、1つは量が多い(1日12g以上)と明らかに再発が増えるというデータでしたが、
他2つは量との関連性はないとの報告でした。
1つに至っては1か月で900g、1日当たり30gでも再発増えないというデータ。
30gといえば缶ビール350mlx2本毎日いけます。
やったぜ。
結論としては乳癌罹患時、もしくは罹患後に関しては飲酒は再発や予後に影響を与えない。
むしろ心血管や代謝、免疫関連にはよい影響を与える可能性があり死亡リスクは減らす可能性すらあると言えます。
とはいえ、飲む量については限度があるとは思います。
機会飲酒にしたり、毎日飲む場合は350mlを1本程度に控えておく方が「無難」と言えそうです。