村上作品

 

またしても読みやすいが難解だ。

 

顔のない人間は多くの作品で登場してくる。

意志のない人、記号化、感情の欠落、自分を見失った人。

外から見ればどんなに成功した人も、そこにやりがいもなく毎日を過ごす人はもしかすると顔がないのかもしれない。周りの人間に合わせて行動したり、同調する人間も顔はないと思う。

 

自分が自分で居続けられる信念があるだけで、上出来なのかもしれない。

 

今回で言えば、人は被害者にも加害者にもなりうる。幸せに見えても本人は引きずり込まれている。などが主なメッセージのように感じた。

村上作品で多くみられる「壁」の存在。繰り返し作者が伝えるのは決まってここなのだ。

生死、男女、親子、上司、友達、地域、他人、こうやってみるとまさに日常は「壁」の連続。また壁はないところから生まれたり、形を変えたりして前に出てくる。そんな気がする。

 

問題は壁でなくて、壁の見方であり捉え方なんだと思う。壊すのか、離れるのか、また登るのか。。

 

抽象的なのにどこか身近に感じる「壁」を扱うのはさすがだと思う。

 

でも壁を題材にしてじゃあ読者に何を伝え、どう行動してほしいのか。ここまで読み取れたことは少ない。いつもゆだねて終わる。自分なりに壁を認めたうえでそれに対するアクションを見つけ出してみたい。