癒着とは?
「癒着」という言葉は耳にしたことがある方も多いと思います。
癒着とは、手術や炎症のあとに組織同士がくっついてしまう現象のことを指します。
本来は体を修復するための自然な反応ですが、過剰になると周囲の組織の動きを妨げてしまうことがあります。
なぜ癒着が股関節に影響するのか
股関節は骨盤のすぐそばに位置しています。
開腹手術を行うと、お腹の中や骨盤周囲で癒着が生じることがあり、これが筋膜や神経を介して股関節に影響を及ぼすのです。
具体的には、
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腸や腹膜の癒着 → 腸腰筋(股関節を動かす重要な筋肉)が硬くなる
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瘢痕組織の硬さ → 骨盤の動きを制限 → 股関節に余計な負担がかかる
といった仕組みで痛みや違和感を引き起こします。
レントゲンでは映らない痛み
整形外科でのレントゲン検査は骨や関節の形を確認するには有効です。
しかし、癒着や瘢痕組織、筋膜の緊張はレントゲンに映りません。
そのため、骨に異常が見つからなくても痛みが続くケースでは、こうした「映らない要素」を考える必要があります。
癒着による症状の特徴
臨床の現場では、手術から数年〜十数年経ってから股関節痛を訴える方もいます。
特徴としては、
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股関節を動かすと突っ張るような感覚
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腰痛や下腹部の張り感を伴うことがある
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骨の変形が軽度でも痛みが強い場合がある
といった点が見られます。
癒着は「悪」ではない
ここで大切なのは、癒着そのものが必ずしも「悪いもの」ではないということです。
体は傷ついた部分を修復するために癒着を起こします。
問題は、その癒着が過剰になって動きを妨げ、痛みを引き起こすときです。
まとめ
股関節痛の原因は必ずしも骨の変形だけではありません。
手術後の癒着や筋膜・神経の緊張といった「レントゲンに映らない要素」が大きく関わっていることがあります。
つまり、股関節痛=股関節だけの問題ではない ということです。
体全体を視野に入れ、広い観点から原因を探っていくことが、改善への近道になります。